浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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友よ、安からに…

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映画が上映される前に、次回予告などが流れるのだが。
ノイズである。
画面が半分ずれたところで、アナウンスが始まる。
「映画を楽しみにしていた諸君、ごきげんよう」
なんだこの声は?と思うお客さんもいれば、あっ、この声はと察したお客さんもいた。
スッ
スクリーンにサメが二匹、ワザワザ自己紹介なのかそれぞれ名前らしきものがあるが、ヒエロサメグリフのためにすぐには読めない。
「我々は映画愛好家のサメである」
「映画館にご足労ありがとうございます」
「サメ達による映画館支援プログラムの一貫として、あなたたちにはこれから予定を変更してサメ映画を見てもらう」
「ふざけるなよ」
お客さんの一人は立ち上がる。
「俺は帰る」
「見ずに帰る?それは許さない」
サメ達はどこからかこちらの反応を監視しているようだった。シアターから出ようとする客、扉に手をかけると。
「ヤレ」
ポチ!
そうして赤いボタンを押すと。
「ギャァァァァァァァ」
先程のお客なのだろう、悲鳴である。
「賢明な観客ならば後ろは見ない方がいい」
「ほら、血の匂いがするだろう?しかしすぐに片付ける」
そう、何か不快な匂いが漂ったが、映画館の換気によってすぐに消えた。
「我々の要求は諸君らにサメ映画を見てもらうことだ」
「そして何これクソ映画だった!!!!という感想を楽しみにしているよ、では上映後また会おう」
プツン


『This is  a Shark ~これはサメです~』
ただいま上映中

「あのサメ達は兄弟で、近所に前あった呉服屋さんのサメなんだよ」
今はサメ映画の舞台になった地名からマーチャーズと名乗っているそうだ

この兄弟のせいで、いやおかげか、『サメ映画を見るならこの映画館』ランキングでも毎年上位に入ってる。

お客さんの声としては。
「一度あの理不尽に遭遇されて、解放されたあと、人生が素晴らしく見える、ただ映画はクソだった(吐き捨てるように)」


『ここは浜薔薇の耳掃除です』
いきなり気温が上がる…
この世界は春を忘れたようである。
(暑い)
不快を感じる人類の頭の中というのは蒸れ蒸れであり。
(浜薔薇行こう、そしてお客さん少なかったらそのまま髪を切ってもらおう)
予定ではなかったが、もうしょうがないそんな気にさせる。
するとお客さんは少なかった。
「いらっしゃいませ」
というか、ちょうどさっぱりしたお客さん達が帰る最中だったらしく、待たずにお願いすることができた。
「髪は短く、ええっと」
スマホを取り出して、前に髪を切ったときの自分の写真を出す。
「わかりました」
「これとシャンプーで」
この店に来ておいてシャンプーしないなんてあり得ないと思う。
セットになると安いですよね、申し訳なくなるほど安いが。
なんでもシャンプーのファンとか、シャンプー友の会みたいなものができてから、お求め易い料金になったといってた。

ピンポン
こちらのお客さんはファンクラブの方ではないので、シャンプー好きをシャンパーまたはその掟などを知りません。

カットしてもらい、やっぱりさっぱりするのはいいものだと鏡を見ていると。
「シャンプー台の方へどうぞ」
「は~い」
そしてシャンプーとなるのだが、さあ、問題です、これから行われるシャンプー、その商品名をお答えください。
「お湯は熱くないですか?」
「ちょうどいいです」
はい、時間切れ。
ボトルを見てみましょう…って傑さん思いっきり名前の部分握ってますね。おおっとようやく話離してくれた。
これから行われるシャンプーの商品名の発表です。
ドラムロール!
『友よ、安らかに』です。
タイトルにもなっちゃっているから、わかりやすかったかな。
ごめんね。
疲れと不安によって一息つくことも難しくなっている今、せめてシャンプーの時だけでも穏やかでいていただきたいと思う祈りが詰まってます。
また同時発売の『私はレモンちゃんを信じる』もあるのですが、こちらは浜薔薇では入荷予定はありません。
「私はレモンちゃんを信じる!買った!」
「昨日使ってみたよ、良かった」
ご自宅で利用してみても、整髪料のとれ方がエグいと言われるぐらい落ちます。
「あれ持ち込みで蘆根さんに洗ってもらったんだけども、やっぱり凄かった」
「えっ?そんなの出来るんだ、それなら僕も頼もうかな」
浜薔薇では『私はレモンちゃんを信じる』の入荷はありませんが、こちらのメーカーでしたらお客様の持ち込みということでシャンプーはさせてもらっています。
この近隣で『私はレモンちゃんを信じる』を置いているお店はありません、離れていますがKCJの支部にある理容ルームにならございますので、こちらがお近くのかたはどうぞご利用ください。
「春ちゃん、予約取れる?」
ブンブン
職員が問い合わせると今は無理と言われた。
「何でこんなに混んでるの?」
戦闘資格の受験のために支部に近隣のアクの強い人たちが集まり。
「俺の髭とか剃ってくれよ」
「サッサッサッ」
「何時間か待つって?大丈夫、そこら辺で待ってるからよ」
その人たちに気に入られたためである。
「これが同じ人が何回もならばご遠慮くださいとかになるんだろうけども」
物騒な世の中で資格持っておくかと、余裕をもって期限を延長しておこうとする人、またはKCJの資格を持っておくと、優先して物資が手に入るのが知られたので、先月からものすごく受験者が増えている。
「特に先月の四週目、うちの支部は誰も合格者出さなかったということで、この支部で合格すると箔がつくって思われちゃっててさ」
「だから難易度はそこそこにしろって言ったじゃないですか!」
「ごめんね」
当事者がいたので聞こえるように文句をいうが。
「じゃあ、ちょっと本気のレッドノーズ出すから」
「ダメですよ、無理です」
「えっ?なんで?」
「春の予防接種のために逃げてますから」
そうレッドノーズや河川ザメも苦手なものはある。
それは季節の予防接種。
いつも共に仕事をするサンタは、医療従事者の資格を持っているものも多く。
この日ばかりは…
「逃げても無駄だぞ」
血相を変えて逃げるレッドノーズを、追いかけ、追い詰め、しかし彼らは最後まで諦めないため本気で抵抗をするが、散り散りに逃げた。
ガシ!
だが一体だけ捕まれた。
プスリ
「まずは一匹と」
接種が終わる、クタッとなるレッドノーズ。
「どこかな~どこかな?可愛いサメちゃんどこかな」
歌うようにそんなことをいいながら、サンタは隠れているであろうレッドノーズを探し始めるのである。


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