浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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「ツギ」「イツ」「クル?」

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「完成しました」
「えっ?何がです?」
整備部門が浜薔薇出張所にやってきたが。
「前にパワステないととかって言ってたじゃないですか」
「まさか」
持ってきたのは立体駐車場で苦労させられたパワステ無しのシープドックという車で。
「あのシエルティがまさかこうとは」
本家、犬種であるシープドックの愛称がシエルティなので、車自体もシエルティと呼ばれる、カラーリングもブルーマール、こちらも犬種に由来する。
「オリジナルはシープドックというより、おとなしいから羊なんじゃない?と言われましたが、しかしこれは中身は別物なんで、シープドックっていうより狼ですがね」
見た目だけ旧車デザインで、中身は現行販売されたも…
「ミリスペです」
「はっ?」
「むしろ、異世界にいきなり召喚されても隣接している、連続転移しないならば追いかけれますし」
なんで東司がシープドックにしたかというと、車に載っている際に異世界につれてかれた場合、頼りになるのがシープドックだった。
「まあ、そうですね、かなりの悪路でも乗れる、それこそ牧羊犬になれるならその名前がついていますもんね」
断熱性も優れているのと、シートがきちんとしたベットにもなる。
「はずして洗えるからな、カラーもセーブルホワイトもいいなって思ったんだがな」
「お二人の意見を採用したら、こんな感じになりました」
これだから整備は、二人の意見合わせてもどこか捨てるじゃなくて、みんな拾ってみました。

「ここは浜薔薇の耳掃除です」

事の起こりはKCJの管理職員が釣りに行った際に、自宅から電子レンジで暖めたポテトを持ってきたことからだ。
その匂いで、サメが集まってきてしまった。
(これはこの川のサメか)
どこでこの川のサメかと見分けるかというと、まずはこの川にいることと、みんな似たようなモブ顔をしているからである。
野生下に生きる河川ザメというのは、みんな同じような顔をしているのは、狙われても狙いをつけさせないためとされている。
もちろん仲間同士は見分けがつくが。
「あれ?今のサメ、さっきもポテトを欲しがらなかったか」
こういうときにも便利であるが。
「口に食べかすついている、ダメ、みんな仲良く、はい、これでポテトおしまい、もうないよ」
空の弁当箱を見せる。
これはあれか、休止になっていることが原因なんだろうか?
そう、その通り、そのためにこんな集まりが先日あった。

『サメにも人にも優しい2言語翻訳入りまーす』

集まったサメたちは、みんな蓮を頭に身に付けていた、本物の蓮もあるが、模したデザイン性の高い帽子のサメもいる。
「人界ではポテトが不足し、その影響か、若いサメ達には不満が出ているようです」
「まだまだ若いものには胃袋は負けませんが、芋不足とは、無視していい問題ではありますまい」
だが、芋が足りないのは人も同じなので。
「釣り人と好意にいつまでもすがるものではありませんよ…」


管理職員の家には大型のフリーザーがあり、凍らせてもいいペットボトルの水の保管と、空いている隙間にはポテトや冷凍食品が入っている。
水の生産ラベルがちらっと見えるが、そう、これは西のサメことおっちゃんの浄水センターと提携したものであった。
(凍らせてもいいペットボトルのノウハウがこっちにはないから、向こうの企業、ひいてはイサリさんたちの自治体から水を買った方が後々便利という結論なんだよな)
詳しい解説もありがとう。
さて、それでは話に戻そう。
「次に来たとき、また持ってくるからさ」
「ツギ」
「イツ」
「クル?」
河川ザメは発声はあまり得意ではないが、集団でいる場合このように続けての会話が可能であるを
個体でもあり、群体でもある河川ザメ、本当に謎が多い。
逆にはぐれてしまったり、春隣の場合なんかまだ寒い冬の日に、コンビニに支払いに行こうとしたら、歩道になんかいた、春隣では体育座りでじっとしていたのだが、カラスに狙われたのか、羽毛があちこちに飛び散り、またサメも白く糞で汚れていた。
「あ~もう…」
急いでこの理容師は帰宅、毛布を持って、サメを保護、支払いは後回し、環境課に連絡したら、獣医を教えてもらい、診てもらったら怪我は無し、ただこの後どうするかという話になったら。
「うちに来い」
酒とジャズを愛した理容師の家族になった。
今日も理容室に音楽をかかる。
カルボンが春隣のお店のお祝いに作ってくれたBGMのアルバム集『春深し』であるが、スプリングジャズというテーマで作ったそうだ。
それを聞くと春隣さんはジャンプした、たぶんスプリングをバネの方だと思ってるようだが、この音楽を流すとき、忘れないことがある、必ず私物のロッカーから家族の写真を出して飾るのだ。
「あっ、お久しぶりです、ツルちゃんも元気でしょうか、少々お聞きしたいことがありまして…」
管理職はメヅルたちとは元同僚であって、そこで河川ザメの好物を聞いた。
そして次は結構早く、それこそ次の日の朝に川に顔を出してからにした。
ポテトの匂いをかぎつけて、呼ばなくてもやってくるので。
「物々交換は受けるけども、偉い人に伝えてほしい、高く値をつける気はないから」
そういってバックドロップボムというジャガイモの品種のチップスと手紙を届けてもらうことにした。
この世界、貯蔵しても品質が変わらない特性があるじゃがいもには、プロレスに関する名前がつけられていることが多く。
職員が交渉のためにもたせたバックドロップボムもそれ、そしてそのポテトチップスはそれを食べてしまいたい気持ちを圧し殺しながら、川のまとめ役達の会議に出され。
「もう無理をせず、この人に頼んでいいんじゃないかと思う」
ポテトチップスを前にみな食欲を我慢しながら会議を進めるかと思ったら、そこでみな賛成した。
「まずこのポテトチップスを数分用意してもらおうか」
下手に分けようとしても、そこで血生臭い戦いになるのが見えていた。
「なんか私の人生こういうこと多いんだよな」
いきなり利益に通じる話が向こうからやってくるそうだ。
その連絡をもらった職員はため息をついた、何しろ良いことも悪いことも起きるから、それを心配してのこと。
「まずポテトチップスの方か…」
食品にもある程度通じているからこそ数は揃えられ、まずポテトチップスを届けると。
「この」
「かず」
「だと」
「もめ」
「ない」
と言われた。
なんでもあればあるほどいい状況にまで陥っていたという、川の危機をポテトチップス『バックドロップボム』が救った。
そこから自宅のフリーザーにあった芋の他に、メヅルの好みを聞き、それを参考にした上で、河川サメに受けそうなもので、予算が間に合うものを同僚に問い合わせて用意してもらうことになった。
(普通のポテトより、ブランドポテトだと満足度が高いし、量が少なくてもいいらしい)
美味しいし、数が少ないからしょうがないと納得してくれるようだ。
これはそれこそ収穫である。
そして向こうから人間が欲しがりそうなものをいくつも並べられた。
川のまとめ役である、蓮をかぶったハピの神官たちは、どうしてもまとめたい話だったため。
「今ここになくても、払い続けるといっております」
「そこまでしなくても…」
「満足に食べれないときこそ、美味しいものにしてほしいだそうです」
そこで職員は手回し、ポテト再開のお知らせが来る頃には。
「これとか、普通に買えないんじゃないかな」
それこそ、サメ達の来賓に贈られるもの、もてなしに使われてきたものが、職員に物々交換として手元に残った。
「ポテト富豪ですね」
「本当だね」
その時は笑いながらいった。
これからやっと整理に入れる…
同僚とやっとゆっくりできると思ったときに、疲れと共に出てきてあろうこの言葉が、この職員の新しい呼称になるとは…もちろん思っていない。
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