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つい本音が
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雪のない地域に大雪が降るということは…
「はい、待機、待機」
浄水センターの職員は集合となり。
「おっちゃんは別な」
わかっとるで!
災害対応の本部行きとなる。
氷点下の雪の中でも泳ぐように突き進めるというのは、おっちゃんの特性ではあるが…
(ただこれでは手が足りなくなるやろな)
出来ることなら降るな!というその気持ち、祈りを捧げても、自然は容赦がなく、人間は無力。
(こら、あかんな)
頭の中に最悪はよぎる、出来ることなら逃げ出したいと思うような、そんなプレッシャーが襲ってくる。
チラッ
おっちゃんを見る。
(一人か、二人ならおっちゃんでもええ、けどな…)
この雪だ。
「みんなキラキラ輝いてる!」
『イエス!イエス!』
この日ちょうどおっちゃんが住んでいる町ではアイドルのライブが開催されていた。
「今日はとっても楽しかったよ」
「またみなさんと会う日まで」
「待ったね!」
会場の熱気は最高であった。
客席にはサメの姿、むしろその列みんなサメではあったが、ファンのようでうちわをガンガン振り回していた。
興奮も冷めない中で、ゾロゾロとサメ達はツアーバスに向かっていくのだが。
「なんか電車止まってるみたいだぞ」
「どうすんだよ」
などとお客さん達が話しているのを、サメの一匹は気にしていた。
「みなさんはそのままホテルに向かいます」
ツアコンは旅行会社の社長が勤めていた。
「じゃあ、運転手さんよろしくお願いします」
バスに乗ったサメ達は、不安が伝染していたらしくそわそわして、ライブに来る前の綺麗に整列、正面を向いているとは対照的だった。
無事にホテルには到着。
雪はますます強くなる。
部屋に戻ったサメ達は天気予報やニュースを知りたがり、速報がすぐに聞けるようにした。
そこから窓の外を見るのだが、窓からみた街は綺麗というより、だんだんと白く埋めていくような怖さを持っていた。
彼らは慰安旅行として、正月までゆっくりするつもりだった、毎年大仕事を終えた後はいつもそうだったのだが、今年は人間の経済を回した方がいいということで、アイドルのライブやいい感じの温泉、旨いものを食べたらいいのではないかという話になり、それに決めた。
「速報です」
ニュースが切り替わった、この雪で停電が起きたと伝えられたことから始まり、各地の被害情報が途切れることなく続いていった。
「おっちゃんを対策本部へ」
「わかりました」
浄水センターの方も忙しくなってきた。
おっちゃんに乗って、本部に連れていく職員が防寒具を重ね始めた。
「ちょっと待て」
「どうしました?」
「いや、今なんかな」
そこで通信が終わるまで待つことになる。
「あんな、今な、おっちゃんの他にもサメがこっちにおるんやと、30匹」
「多!」
「こんなのが30匹ですか」
こんなとは何よ、こんなのとは。
「つい本音が」
「バカ!」
「慰安旅行でこっちに来てたんだけどもな、除雪などに協力したいっていってるんだわ、ただそのままサメが30匹来ても、困るわけ」
「そうですね」
「そしたらKCJさんが中に入ってくれることになって、歩道などの除雪と緊急車両の先導を務めることになったんよ」
「そりゃあすごい」
「けどそれでも足りますか?」
「足らん、はっきりいって足らん」
「でしょうね、で」
「そこは本当、何度も行ったり来たりしてもらうことにはなりそうなんやが、それが出来るサメちゅう話や」
「訓練されたサメ」
「どっかの軍に務めているとか」
「その話は出てなかったが、なんでも二匹で1トン以上は引っ張れるゆうてた」
「なんですか、そのパワフルさ」
「ダムを発生した流木を引き上げて、そのまま駐車場まで引っ張ってこれるから、緊急車両が雪にタイヤとられて、人が押してあげることしなくてもいいそうや」
「サンタのトナカイでもできそうなサメやな」
この職員は冗談で言ったのだが、正解である。確かにダムで発生した流木を引き上げることはできるのだが、それはクリスマスのために体を仕上げるためであった。
30匹のサメ達に通信装備とレスキュー用の認識タグが渡された。
「まずは国道までの歩道を、そこから消防署へ向かう組と別れてもらいます、出来るだけ負担が少ないオペレーションをしたいと思いますが、この状態です、よろしくお願いします」
そしておっちゃんは停電や凍結による被害を発見することになった。
「今日でこれやぞ、これが明日、明後日まで続くって…ほんま神さん、残酷やわ」
街はだんだんと響くような寒さへ変わっていた。
「はい、待機、待機」
浄水センターの職員は集合となり。
「おっちゃんは別な」
わかっとるで!
災害対応の本部行きとなる。
氷点下の雪の中でも泳ぐように突き進めるというのは、おっちゃんの特性ではあるが…
(ただこれでは手が足りなくなるやろな)
出来ることなら降るな!というその気持ち、祈りを捧げても、自然は容赦がなく、人間は無力。
(こら、あかんな)
頭の中に最悪はよぎる、出来ることなら逃げ出したいと思うような、そんなプレッシャーが襲ってくる。
チラッ
おっちゃんを見る。
(一人か、二人ならおっちゃんでもええ、けどな…)
この雪だ。
「みんなキラキラ輝いてる!」
『イエス!イエス!』
この日ちょうどおっちゃんが住んでいる町ではアイドルのライブが開催されていた。
「今日はとっても楽しかったよ」
「またみなさんと会う日まで」
「待ったね!」
会場の熱気は最高であった。
客席にはサメの姿、むしろその列みんなサメではあったが、ファンのようでうちわをガンガン振り回していた。
興奮も冷めない中で、ゾロゾロとサメ達はツアーバスに向かっていくのだが。
「なんか電車止まってるみたいだぞ」
「どうすんだよ」
などとお客さん達が話しているのを、サメの一匹は気にしていた。
「みなさんはそのままホテルに向かいます」
ツアコンは旅行会社の社長が勤めていた。
「じゃあ、運転手さんよろしくお願いします」
バスに乗ったサメ達は、不安が伝染していたらしくそわそわして、ライブに来る前の綺麗に整列、正面を向いているとは対照的だった。
無事にホテルには到着。
雪はますます強くなる。
部屋に戻ったサメ達は天気予報やニュースを知りたがり、速報がすぐに聞けるようにした。
そこから窓の外を見るのだが、窓からみた街は綺麗というより、だんだんと白く埋めていくような怖さを持っていた。
彼らは慰安旅行として、正月までゆっくりするつもりだった、毎年大仕事を終えた後はいつもそうだったのだが、今年は人間の経済を回した方がいいということで、アイドルのライブやいい感じの温泉、旨いものを食べたらいいのではないかという話になり、それに決めた。
「速報です」
ニュースが切り替わった、この雪で停電が起きたと伝えられたことから始まり、各地の被害情報が途切れることなく続いていった。
「おっちゃんを対策本部へ」
「わかりました」
浄水センターの方も忙しくなってきた。
おっちゃんに乗って、本部に連れていく職員が防寒具を重ね始めた。
「ちょっと待て」
「どうしました?」
「いや、今なんかな」
そこで通信が終わるまで待つことになる。
「あんな、今な、おっちゃんの他にもサメがこっちにおるんやと、30匹」
「多!」
「こんなのが30匹ですか」
こんなとは何よ、こんなのとは。
「つい本音が」
「バカ!」
「慰安旅行でこっちに来てたんだけどもな、除雪などに協力したいっていってるんだわ、ただそのままサメが30匹来ても、困るわけ」
「そうですね」
「そしたらKCJさんが中に入ってくれることになって、歩道などの除雪と緊急車両の先導を務めることになったんよ」
「そりゃあすごい」
「けどそれでも足りますか?」
「足らん、はっきりいって足らん」
「でしょうね、で」
「そこは本当、何度も行ったり来たりしてもらうことにはなりそうなんやが、それが出来るサメちゅう話や」
「訓練されたサメ」
「どっかの軍に務めているとか」
「その話は出てなかったが、なんでも二匹で1トン以上は引っ張れるゆうてた」
「なんですか、そのパワフルさ」
「ダムを発生した流木を引き上げて、そのまま駐車場まで引っ張ってこれるから、緊急車両が雪にタイヤとられて、人が押してあげることしなくてもいいそうや」
「サンタのトナカイでもできそうなサメやな」
この職員は冗談で言ったのだが、正解である。確かにダムで発生した流木を引き上げることはできるのだが、それはクリスマスのために体を仕上げるためであった。
30匹のサメ達に通信装備とレスキュー用の認識タグが渡された。
「まずは国道までの歩道を、そこから消防署へ向かう組と別れてもらいます、出来るだけ負担が少ないオペレーションをしたいと思いますが、この状態です、よろしくお願いします」
そしておっちゃんは停電や凍結による被害を発見することになった。
「今日でこれやぞ、これが明日、明後日まで続くって…ほんま神さん、残酷やわ」
街はだんだんと響くような寒さへ変わっていた。
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