浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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痛し痒し

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「おはようございます…あれ?山宮さんは」
今日は山宮が来るということで、手伝うつもりでいたのだが。
「病気で…」
「まさか!」
「手作りコロッケ揚げたい病にかかってしまいました」
じゃがいもがいけないんだ。
ジャーマンポテトの缶詰を作る際に、ジャーマンポテトに合うじゃがいもを探した、そんなときに、ジャーマンポテトよりはコロッケにしたいじゃがいもと目があったとき。
「肉じゃがコロッケとカレーコロッケにするそうです」
「ああああ!!」
「ううううう!!」
聞いた人たちはうめき、中には膝をついたものがいる。
「手作りコロッケ食べたい病に!」
「俺もだ、もうこれは手作りコロッケを食べなければ収まることはないだろう」
その後コロッケの配布は始まり、病は根絶されました。

『ここは浜薔薇の耳掃除だぜ』

「あれ?今日休み?」
「俺以外みんな熱中症で休み」
「マジかよ、さすがサラマンダー」
なんて言われるから、浜薔薇までやってきた。
シャクシャク
フルーツ氷が美味しい。

気分は晴れないのは当たり前だ、自分は熱中症対策を人よりもしていただけなのに、勝手にサラマンダーと呼ばれるようになった。
他のみんなが熱中症になったので、君も大丈夫かい?と健康チェックを受けた。
一人だけファンのついてない服で作業している俺は、奇異なものにうつったらしい。
「ええっと黙視ではわかりませんでしたから、検査してみました、熱中症ではありませんでした」
と解放された。
「やっぱりおかしいよ」
というか、もうあんまりサラマンダーとかおかしいとか言われるから、浜薔薇の廃熱ジェルの話は口にはしなくなったし、周囲もなんで大丈夫なの?とも聞かなくなってきた。
「おっす」
「あっ、ケンタさん」
ケンタさんという人とはここで知り合いになった、今こうして仕事の待機ができてしまうと、時間を潰すにも潰せなくて、浜薔薇に来たのだが、ケンタさんとはよく時間があう。
こっちはケンタさんの仕事はよく知らないが俺と似たようなもんじゃないだろうか。
「そういえば昨日、来ました?」
「昨日は来てませんね、何かありました?」
「山宮さんが急に手作りコロッケ作りたくなって」
「山宮さんだわ~」
「でしょ」
「KCJの人が呆れてました」
「でもそういう時のメニューって美味しくありません?」
「わかる!レギュラーメニューも美味しい、それは確かに美味しいんだけども、あの発作的に産み出されるメニューは意地悪な美味しさがある」
前にこんなことがあった。
「本日はカレーです、キーマカレーと欧風カレーです」
「じゃあ、両方」
「どっちかです、おかわり不可、シェアもしないでください」
アンケート取りたいかららしい。
「&ではなく、or…」
「ほら、後ろのかたもいますから、早く決めてください」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
そういう選択を迫ってくるのである。
「ではカレーの説明をしますね本日のキーマは野菜の水分だけで作りました、そのために濃縮した旨味、そしてキーマのために西の横綱と呼ばれるたまねぎを使ったフライドオニオンもパラリ」
「ああああ」
「欧風カレーの玉葱は最近作られ始めたキャンディという品種ですね、これをバターでソテーして、カレーのスパイスもね、もちろん両方違うんですよ」
さぁ、どっち、にっこり。
「注文しないならキャンセルということで」
「ああああああああ!」
みな一人で究極の選択をすることになる。
「どっち行きました?」
「欧風、前にキーマ食べたから、山宮さんの欧風は食べてみたくて、店によるけども、だいたいどっちかによるじゃん、うちのカレーはこっちですみたいな、でも山宮さんってなんでどっちも美味しいの?」
「俺は暑かったのでキーマでした、ちょうど飲み物持っていたんですけども、コンビニで新発売の棚にラッシーがあったからそれ買ってて、たぶんあのカレーの選択も、他に何か決める基準があれば悩まなかったんじゃないかな」
「でもさ、浜薔薇に来ているあの炊きだしとキッチンカーのファンの人たちって美味しいものが好きそうだから、たぶんどっちも食べたいんだうなって」
「ちょっと前までは安いから、炊き出しだからってことで下に見ている人いませんでした?」
「いたね、でも不思議と今はいないというか、意見としてはじゃあ、お前が炊き出しとかやるか?とかも言われていたんだけどもね」
「KCJって、人のために、社会のために何かをすふのは別に今、こんな世の中だからっていうわけでもありませんからね」
「そうなんだよな、ずっとこの形で関わってきてるから」
ファンファン
そこに救急車が通りすぎていった。
「そういえば浜薔薇にもありますよね」
「なんで車体黄色にしたんだろうな」
黄色い救急車というのは都市伝説のあれである。KCJの人たちは、こっち出身だが異世界育ちなどが多く、その俗説を知らなかったらしい。
「そういう意味があるんですか」
むしろ、指摘されてから知りました。
「でも熱狂的なところがないとこの活動はできませんし」
ニコっと笑って返した。
「ヤバいやつって、そういうとき笑えるんだなって」
「でもじゃあ、ここで活動やめますっていう感じでも困るんですよね」
痛し痒しである。
ただKCJの活動は概ね好評。
「俺はあんたらのスピリットに共感した、こんなロックな奴ら見たことねえ」
心酔者は今日も増えているという。
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