浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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戻れなくなるよ!

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もう夏に負けているなんて言わせないぜ!なんて、半ば冗談で言っていた俺なのだが、本当にいろんなことが変わった。
シェービングクリームを塗って、髭を剃る。
前まで肌がでこぼこしていたために、一回でこんなに簡単に剃ることはできなかった。
鏡を見ながら、ここは迂回しよう、でもなんでこんなところに生えているんじゃ!あれか、そうやってカミソリから逃げようとしている、アスファルトのタンポポみたいなもんなのか!
プチ!
しょうがないから、髭を抜く、やっぱり痛い。
顔が酸っぱい顔になっている!という、いい方の時でさえこれが。
す~す~
触って剃り残しないなで拭き取り、カミソリもきれいにする。
毛穴の炎症も起きていない。
しかしだ。
(調子は狂うんだよな)
この方、浜薔薇初心者ですね。
通いつめていると、ああ、自分にもそういうことはあったよねなんて、自分がそうであることを忘れてしまうものです。
「でもさ、これ自分で全部塗って、ケアしようだとここまで上手くいかないんだよな」
この時期の頭皮は毎日洗っても、気になる人は気になるものですが。
浜薔薇には今、夢見るシャンパーこと、夢シャンのみなさんがお金を持ち寄って、サロン用のシャンプーなどを確保している。
「シャンプー安っ!」
と言われる値段で驚かれますが、これも夢シャンが全国一位の売り上げを浜薔薇に出させたからであります。
「良いものは入れたいんだけども、回転率が悪かったりするんだよ」
それこそ、浜薔薇のシャンプーはノーマルシャンプー、決して悪いものではないのだが、無難のものにおさまっていた。
そこを…とまあ、この辺は今まで読んできた人ならばわかるだろう。
改めていうこともあるまい。
「毎年さ、この時期、頭皮は脂っぽいなって感じになっていたんだけどもさ、朝にシャンプーしてもらって、仕事終わりにしてもらうとさ、全然違うんだよね」
夏を感じさせない仕上がりになるという。
「付き合いもあったんだけども、まあ、ね、浜薔薇だから期待もあるよ」
浜薔薇がなんかやるときは、とんでもないことをやる。
「むしろそれを楽しみにしちゃっているしさ、ほら、夏に負けない男くんは、浜薔薇のファンのインタビューとかも受けたから」
上記のがその一部と思ってください。
「浜薔薇ってさ、これぐらいならいいかなっていう値段でメニュー出すのね、それで、あ~ちょっと試してみようかなになるわけ」
そしたら、もう戻れなくなるわけですよ。
シャンプーのサービスも今は夢シャン以外にも広がっていた。
頭皮のツボを探られて。
「確実に電流が走ったあとに、肩が軽くなるんだよ、もっと仕事しろっていうのか!」
この人、それで表彰されるレベルの成果出しました。
「これは浜薔薇無くして取ることはできませんでした、他のやつらはあいつはこんなん押し付けられて可哀想とか、これからダメになるのだから手を切ろうとか、嫌な感じになりましたけども、それでも最後に浜薔薇だけが残った、浜薔薇はパンドラの箱の中にあったんだ!」
希望かよ!
むしろパンドラの箱に入ってたらダメだよ!
つっこみが追い付かねえから、ボケにボケを重ねないでほしいよ!
こういう浜薔薇で起きたいい話なんかも、ファンの間ではまとめており。
「読んでいる人めちゃくちゃ多い」
浜薔薇のいい話が読めるのはアルファポリスだけ!
「あとこういう浜薔薇方面で再生回数上がっているのはあれですか」
あっ、カルボンね。
「カルボン、最近はヒーリングBGMの名手みたいな感じになってきてるんです」
彼の動画を見ると、癒しの音楽リストが結構多い。
「浜薔薇でもかかっているんだけども、浜薔薇にはいけない、予約とれなかった人が最初は家でも浜薔薇を味わうために聞いているのかなっては思っていたのですが」
どうも違うらしい。
「この曲を聞くと、良いことが起きるんだよな」
コメント欄を見ると、邪気を祓うとか書いている。
本当かどうかは知らないが、そこから一気に再生回数が伸び、カルボン、サンキュー!カルボンさん、ありがとうございます!が並んでいた。

『ここは浜薔薇の耳掃除です、本日特別ゲストが来ちゃうよ』

「来ちゃった!」
そういってきたのは、シャンプーブラシ覇王樹、メーカーさんがそのブラシの使い手として最上位とする12使徒、そのうちの一人、ついでにいうと、蘆根の先生の一人でもある。
「繁盛しているな」
「先生こそ、ご無沙汰しております」
「うんうん、元気なのはいいことだ」
「ええっといきなり来られましたが?」
「あれ?連絡してこなかったか?」
ここで先生の娘さんから、うちのお父さん行ってるみたいですが、申し訳ありません。と連絡がある。
「まあ、いいか、それでしばらくぶりだから、お前の腕を見たくてな」
「わかりました」
「いいのか?自信があるのか?お客さんがうちに流れちゃうかもしれないんだぞ」
「いい勝負ができると思います」
「そうか、うれしいぞ」
だからノマシャンの野田が店に来たのは不幸というか、事故というか。
「それじゃあ、シャンプーしようか」
「えっ?誰ですか、この人」
「俺の先生の一人、シャンプー界ではタモツ先生みたいな位置付けな」
「アアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
「きちんと食べているな、やはり髪に栄養が違う、ただちょっと頭皮ケアだな」 
その姿を見て、夢シャンは唇をガリっと噛みながらも、己の職務を全うし、本日時間がある夢シャンは集合することと連絡が回ったという。
(戻れなくなるよ、戻れなくなるよ!)
贅沢は敵、家の再建を考えている野田にとっては気持ちはいいが、耐えなければならない。
「アアアアアアアアアア!!!!!!」
その場にいた夢シャン巳波は、なんで自分じゃないんだ、苦しくて悲しかったが、最初に自分が連絡しなければ、夢シャンのみんなには時間の都合をつけるどころか、後日報告になっていただろう。
「あなたが報告してくれたお陰で、間に合いましたよ」
そうリーダーに言われた時、涙が出てきた。
自分の我慢は苦しみは無駄ではなかったということなのだから。
「次は誰がシャンプーをするんだ?君かな?」
「いえ、こちらの方に、渾身のシャンプーをお願い致します」
「面白い!」
「先生、まだ上があるというんですか!」
「髪と頭皮は同じケアでは両立しにくい、それを合わせるのが私の目標、よーし来い、お前のシャンプー感を根底から覆す時間が来た」
「すいません、そうなるとお勘定が」
傑がいいだすと、リーダーが財布を出した。
「ここは私が払いますよ」
「アアアアアアアアアア!!!!!!アンアンアンアン、アアアアアアアアアア!!!!!」
さっそく始まったようだ。
これが先生の本気、蘆根はその技を習得しようとじっくりと手元を見続けるのである。

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