浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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夕暮れサイダーデート

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「すいません~」
やってきたのはお客さんではなく、営業の方である。
ちょうど傑がいなかったので。
「傑!営業さん来たよ」
在庫の確認をしていたのを呼ばれた。
「初めまして、私~」
「ほら、シャンプーの、キャラメルのやつ」
「ああ」
名刺よりもそれを言われるとよくわかる。
「あっ、いえ、まぶしい日差しのキャラメルメモリーの方ではなくて、うちはワクワクバケーションキャラメルスタートの方です」
別会社でした。
「これは失礼しました」
「いえ、今回かぶったんですよね、名前、だから間違われることが多くて」
営業さんは苦労しているようだ。
「それで今回はどのような」
「うちの物も試しに置いていただけないかと」
ここで蘆根ならいいよ!っていうので、発言権はありません。
「正直、浜薔薇さんに来るのは迷いました、こっちのエリア、うちのアイテムを扱っているお店少ないんで」
営業があまり注目してないエリアでした。
「でも他社のものではありますが、レモンのミラクルくるんくるんパワーやときめきイチゴの素敵なファンタジーの売上などを見ると、あやかりたいと思ったのが正直なところであります」
正直者で蘆根からの好感度は上がった。
傑は直球過ぎると好感度の増減はなかった。
「それでですね、うちから出来ることはすくないんですけども…」
「あれ、でもどちらも本来の対象って十代後半ぐらいがターゲットなんじゃないんでしたっけ」
さすがは番頭、きちんと新発売の一覧は目を通している、しかも彼は独自に新製品のターゲット層向けの一覧を作っているので、ここですぐ確認して、ああやっぱりそうだったと見ながら聞いた。
「まさか、浜薔薇さん、うちの製品チェックされてたんだすか?」
「してますよ、ほら先輩、ここの会社って先輩が気に入っていてた、スカッと炭酸これ一本とか、カブトムシが好きなアレ!の会社ですし」
注 どちらもヘアアイテムです。
「おお、あそこか、スカッとは、本当にスカッとする」
「あれは売れなかったんですよね」
「物はいいんだぜ、炭酸系のシャンプーは高めなんだが、あれだけかなりお手頃なので、毎日使うなら、悪くないと思う」
「ええ、ちゃんとお客さんだ、それでネーミングとデザインを変えたらいいんじゃないかと思いまして、そのスカッと炭酸これ一本がですね、こうなりました」
パッケージも可愛く。
『夕暮れサイダーデート』
「あっ、これいいですね」
「ただこれで売れるかどうか、本当キャラメルがかぶったのが大きくて、正直厳しい戦いを強いられています」
そこに漂うラーメンの匂い。
「ここって、屋台もあるんですよね」
「そうですよ、今準備してて、もうちょっとで開店ですかね」
「それも期待していたんですよね」
わかるけども、まず仕事の話をしようの顔に傑はなっていた。
「この夕暮れサイダーデート、実はこのエリアでは一件も使われてないので、それを逆手にとらせていただきまして、売り出していただけたらなと」
浜薔薇限定ではないが、浜薔薇でしか楽しめないはいいアイディアだと思う。
「先輩はスカッと好きでしたよね」
「さっぱり系だから、冷夏じゃない限りは売れるんじゃないか」
カラン
するとそこにお客さんが。
「ラーメンまだだから、その間に髪を洗ってもらおうかって思ったんだけども、ありゃ、先客かな?」
「…」
「…」
「お客さんでしたらどうぞ」
営業さんが私のことは気にせずと勧めるのだが。
蘆根と傑はアイコンタクト。
「あっ、ではシャンプーします、新しく入荷したばかりのシャンプーがあるんですけども、この辺ではお客さんが一番目なんですけども、いつものにします?これにします」
「いいね、一番、そういうのいいじゃない」
傑は営業と少し離れて。
(在庫ってどのぐらいあります?)
(えっ、結構あるかな)
結構どころではない。
(大量購入だと、サンプルなどはつけてくれるの?)
(サンプルですか、う~ん)
この手の交渉は付き物だという感じなので、営業は悩みながらも決めているが、おそらくご覧のみなさんの方が、「あっ」って思っているのではないだろうか。
お湯が流れる音がする。
「やっぱりこの時期になると、一日に何回もシャワー入りたくなるんだよね」
「そういうときは一回で根こそぎきれいにしちゃうといいですよ、さっぱり感続くので」
「そうだったらいいよね」
さあ、それを体験する時は来た。
(これがスカッと炭酸これ一本の系譜なのだとしたら) 
そして前身であるシャンプーをある程度以上使いこんだ蘆根がいるのならば。
「さっぱりした!!!!!いや、相変わらずだね、ん?いや、なんか髪が蒸れてない」
「これがこのシャンプーの実力ですよ」
「へぇ、じゃあ、今日はこれももらっていこうかな」
ちょっと離れたところから。
(これも?)
(あのお客さんは、ラーメンのファン、そこにお酒も入ってから、浜薔薇に来るように、その時にケースに入っている品物全部買ってくれたんです)
(全部!)
(それで会社の人たちに配ったりしているようなんですが、定期的に買い物に来てくれるんで、評判なんでしょ)
その説明を省いたのは、買うお客さんが見えている場合、サービスが粗末になるかもしれないと、説明しないで交渉していったのだ。
「これいいよ、蘆根さん、売れるんじゃないか」
「でしょ」
「高いシャンプーとかさ、ハンドクリームとか配るとさ、うちの会社の人たち喜ぶんだよね」
「あれ、パートさんたちにも配っているっていってましたよね」
「うん、頑張ってくれているし、言われたんだよ、時給ぐらいの値段するハンドクリームは自分で買うの迷うって、儲けさせてもらっているのはみんなのおかげだし、返せるときに返さないとさ、よくさ、大金入ったはいいが、酒のんでぱぁ!と使うやついるでしょ、ああいうのは早くに消えるし、人間関係最悪になるからさ、お金はこういう感じで使った方がいいんだけどもね」
一呼吸してから。
「たまにATM扱いされる!」
大きな声でいった。
「あ~すっきりした、まあ、そういうことをするやつにはやらないことにしているから、いいけどもさ、本当、お金稼ぐのはいいの、それに目をつけて、変なのよってくるのだけが嫌だよね」
それで会社から離れた浜薔薇の駐車場のラーメン屋台を愛好し。
「ここのラーメン屋台好きなのは、独立しようと今の店にいながらも、自分のラーメンをお客さんに試してくるところなのよ、なんていうの、安定してくるとさ、自分の中にギラギラがなくなってくるから、ラーメンとそのギラギラを味わいに、あっ、浜薔薇ももちろん楽しんでますよ」
注 酒は飲んでません 
「このシャンプーの営業さんがこの人です」
「始めまして、あの~」
「そういう名刺とかは後で秘書にでも渡してよ」
(ほら、さっき話したでしょ)
傑に営業さんは肘で合図された。
「実は浜薔薇に来るのは、ラーメンついでなところがありまして」
「何、ラーメン好きなの!」
「営業さん、ラーメン手帳つけているんです」
「え~それ見せてよ、あっ、ラーメン売り切れちゃうと困るから、そっちで話そうよ、時間あるでしょ」
後は本人の努力次第ということで。
「はっはっはっ、大きな魚逃がしたよ」
営業さん、話しきられラーメンの話ばかりになる。
「でも浜薔薇のケース分は売れたと思いますが」
「ありがとうございます」
土下座した。
(俺には販売の才能はない、傑さんにやってもらった方がいい気がする)
後からいつものように秘書さんがやってきて。
いつもより若干買い物が多いので伝票と説明を用意しているのだけども。
「大丈夫、信頼してますし、イツモちゃんのご飯のためですから」
そこで通そうとしたら。
「ダメ、見てください」
傑は引き留めた。
「本当、社長に買わせようとする人たちは多いのに、ここはしっかりしてますよね、えっ?サンプルこんなについていいんですか」
「こっちのサンプルは別口ですし、うちで捌ける量ではありませんから、それならば人数が多いそちらさんに持っていった方が」
「本当にありがとうございます、いつも値段以上の仕事してもらってますよ」
秘書は帰っていくとき、サインポールからイツモに見下ろされた。
(いい!)
王子はいつもこうでなければ、幸せな気分でエンジンをかけるのだった。
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