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そのうち蘆根さんは全国からでもお客さんを呼べるようになるわ
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特に自分にはこだわりというものがなく。
「仕事で人に会うので、きれい目に」
ぐらいのオーダーならば、あなたにとって浜薔薇は最適な店である。
ささっと、シンプルな清潔感を作ってくれて。
「この値段でいいのかなって思っちゃう」
「大丈夫です」
おしゃれ番頭はそう自信をもって答える。
数字は裏切らないものだから…
「後さ、この間買ったものもさ」
浜薔薇は物販の売り上げもいい。
「俺ってさ、結構適当な人間なの、だから買ったはいいが使わないこととかもよくあってさ、浜薔薇のって、さっと塗るだけで綺麗に決まるとか、そういうのが多いじゃん、こんな俺でも最後まで使いきったっていうことに対してびっくりしたから」
そのお客さんはそれでちょいドヤ顔。
「買って良かったっていうのはああいうものをいうんだろうね」
「…」
「ほい、うれしかったんだろ」
蘆根が会話に入ってくる。
「あ、ありがとうございます」
泣いちゃった。
ザワザワザワザワ
誰だ、おしゃれ番頭を泣かせるやつは!
ナマハゲのような気配が近づくが。
「嬉し涙ってやつだ」
ス~
あれ?なんか近づいて来ていたものが遠ざかったぞ。
おしゃれ番頭は尊い…
守らねば…守らねば…
これでいきなりやめます!とかなったら、その原因になったやつは許さぬ!決して許さぬぞ!
それを出張所から見ていた波里は、だんだん浜薔薇のお客さんも感化されてきたなと思ったという。
守るためには人だってやめちゃうぞ!ぐらいの過激な方々がお客さんにはいるようです。
『ここは浜薔薇の耳掃除です』
トントン…
足の裏を蘆根は叩いている。
「念入りにやらせてもらうぞ、時間はある?」
「えっ?そんなに悪いですか?」
「出来ればちゃんとやっておきたい」
疲れがたまって、不具合が出る前らしい。
「あ~それならお願いします、今倒れるわけにはいかない」
「それでも休みは入れてくれよ」
「わかりましたよ、セーブする方向にしますよ」
マッサージをする前に、たまにおや?と思ったりする時は叩いて見るという。
「冷え性なら問答無用で、時間ある?って聞くし」
体がポカポカする、私どっか悪いのかな。
「これは疲れすぎだな、使いすぎている部分をかばうようになってくると危ないんだ」
ストレッチから始めますが。
ぐっ
「痛い…」
「あっ、これは念入りで正解だな、この付け根が痛いときは、怖いぞ」
腰や肩などが悪くなる一歩手前。
「腰痛ってなったことないんですけども」
そう言い出した。
「あれはなるもんじゃない」
「はぁ」
「下手なところに行った場合、人生が悪い方に変わるぞ」
目付きが真剣である。
「予防のストレッチとかでならないのが一番いいから、お風呂はゆっくり浸かってる?」
「シャワーだけです」
「水道代気にするなら、公衆浴場とか使ってください、湯船に使った方が疲労は回復しやすいし、うちだと、お風呂上がりの自分でできるマッサージもかもパンフレット配っているので、よろしければ帰りにどうぞ」
「丁寧ですね」
「?」
「普通、こういうのって全部有料じゃないですか」
「そうですね」
何かをお客さんが言い出そうとする前に。
「一昔前に、人の健康な生活のためにその道を志した人たちがいました、安価でなければ、お手軽じゃなければ一般的には広まることはないだろう、そういうのを当たり前にしたいという人たちから、俺は習っているので、浜薔薇もそれを一部取り入れているわけです、きちんと金勘定できる人がいなければ、好きなことだってできませんよ」
「…失礼しました、先程の発言をお許しください」
「大丈夫です、最初の頃は言われましたから」
あの男は変人に違いない。
跡継ぎがいない店に押し掛けてきた弟子がいる。
裏があるだろう調べろ。
そんなのを蹴ってくれたのも近所の人である。
「だからお前は嫁に逃げられるんだよ」
「逃げてはない、あれは嫁のわがままで」
「じゃあ、出ていかれたあと、なんで家が傾いているんだよ」
「それは…」
「きちんと店を支えてくれた嫁さんが、夜遅くまで働いてるのに、なんでテメーは酒は飲むわ、酒で体壊して、きちんとそこで生活治すかってっていったら、嫁さんに当たり散らして」
「とにかく裏があるに違いないからな」
そういって逃げていった。
「悪いわね、蘆根さん、あんなので不快な気分にさせてしまって」
「いえ」
「ならちょっと銀行と交渉しましょう」
「は?」
「だって悔しいでしょ、このままあなたが店をタタミでもしたら、あの野郎その話を酒の肴にするから、ちょっと銀行、いえ、金融機関回りましょ、タモツさん、よろしくて?」
「ああ、挨拶回りは大事だからな」
「先生が言うなら」
そこで近所の人、それこそ、その地域の要所に挨拶回りに回った回った。
「しかし、よろしいんですか?俺の地元のお菓子屋さんにまで注文して、しかも払いももってもらって」
「その投資分の価値があるのよ」
少なくともこれからを担う若者がやってきたというだけで、とても大きく。
「蘆根さんは全国からでもお客さんを呼べるようになるわ」
なんて嘘でも嬉しかったし、そうならなきゃ、いや、なったら、タモツ先生は喜んでくれるだろうか…などと思ったのだ。
「仕事で人に会うので、きれい目に」
ぐらいのオーダーならば、あなたにとって浜薔薇は最適な店である。
ささっと、シンプルな清潔感を作ってくれて。
「この値段でいいのかなって思っちゃう」
「大丈夫です」
おしゃれ番頭はそう自信をもって答える。
数字は裏切らないものだから…
「後さ、この間買ったものもさ」
浜薔薇は物販の売り上げもいい。
「俺ってさ、結構適当な人間なの、だから買ったはいいが使わないこととかもよくあってさ、浜薔薇のって、さっと塗るだけで綺麗に決まるとか、そういうのが多いじゃん、こんな俺でも最後まで使いきったっていうことに対してびっくりしたから」
そのお客さんはそれでちょいドヤ顔。
「買って良かったっていうのはああいうものをいうんだろうね」
「…」
「ほい、うれしかったんだろ」
蘆根が会話に入ってくる。
「あ、ありがとうございます」
泣いちゃった。
ザワザワザワザワ
誰だ、おしゃれ番頭を泣かせるやつは!
ナマハゲのような気配が近づくが。
「嬉し涙ってやつだ」
ス~
あれ?なんか近づいて来ていたものが遠ざかったぞ。
おしゃれ番頭は尊い…
守らねば…守らねば…
これでいきなりやめます!とかなったら、その原因になったやつは許さぬ!決して許さぬぞ!
それを出張所から見ていた波里は、だんだん浜薔薇のお客さんも感化されてきたなと思ったという。
守るためには人だってやめちゃうぞ!ぐらいの過激な方々がお客さんにはいるようです。
『ここは浜薔薇の耳掃除です』
トントン…
足の裏を蘆根は叩いている。
「念入りにやらせてもらうぞ、時間はある?」
「えっ?そんなに悪いですか?」
「出来ればちゃんとやっておきたい」
疲れがたまって、不具合が出る前らしい。
「あ~それならお願いします、今倒れるわけにはいかない」
「それでも休みは入れてくれよ」
「わかりましたよ、セーブする方向にしますよ」
マッサージをする前に、たまにおや?と思ったりする時は叩いて見るという。
「冷え性なら問答無用で、時間ある?って聞くし」
体がポカポカする、私どっか悪いのかな。
「これは疲れすぎだな、使いすぎている部分をかばうようになってくると危ないんだ」
ストレッチから始めますが。
ぐっ
「痛い…」
「あっ、これは念入りで正解だな、この付け根が痛いときは、怖いぞ」
腰や肩などが悪くなる一歩手前。
「腰痛ってなったことないんですけども」
そう言い出した。
「あれはなるもんじゃない」
「はぁ」
「下手なところに行った場合、人生が悪い方に変わるぞ」
目付きが真剣である。
「予防のストレッチとかでならないのが一番いいから、お風呂はゆっくり浸かってる?」
「シャワーだけです」
「水道代気にするなら、公衆浴場とか使ってください、湯船に使った方が疲労は回復しやすいし、うちだと、お風呂上がりの自分でできるマッサージもかもパンフレット配っているので、よろしければ帰りにどうぞ」
「丁寧ですね」
「?」
「普通、こういうのって全部有料じゃないですか」
「そうですね」
何かをお客さんが言い出そうとする前に。
「一昔前に、人の健康な生活のためにその道を志した人たちがいました、安価でなければ、お手軽じゃなければ一般的には広まることはないだろう、そういうのを当たり前にしたいという人たちから、俺は習っているので、浜薔薇もそれを一部取り入れているわけです、きちんと金勘定できる人がいなければ、好きなことだってできませんよ」
「…失礼しました、先程の発言をお許しください」
「大丈夫です、最初の頃は言われましたから」
あの男は変人に違いない。
跡継ぎがいない店に押し掛けてきた弟子がいる。
裏があるだろう調べろ。
そんなのを蹴ってくれたのも近所の人である。
「だからお前は嫁に逃げられるんだよ」
「逃げてはない、あれは嫁のわがままで」
「じゃあ、出ていかれたあと、なんで家が傾いているんだよ」
「それは…」
「きちんと店を支えてくれた嫁さんが、夜遅くまで働いてるのに、なんでテメーは酒は飲むわ、酒で体壊して、きちんとそこで生活治すかってっていったら、嫁さんに当たり散らして」
「とにかく裏があるに違いないからな」
そういって逃げていった。
「悪いわね、蘆根さん、あんなので不快な気分にさせてしまって」
「いえ」
「ならちょっと銀行と交渉しましょう」
「は?」
「だって悔しいでしょ、このままあなたが店をタタミでもしたら、あの野郎その話を酒の肴にするから、ちょっと銀行、いえ、金融機関回りましょ、タモツさん、よろしくて?」
「ああ、挨拶回りは大事だからな」
「先生が言うなら」
そこで近所の人、それこそ、その地域の要所に挨拶回りに回った回った。
「しかし、よろしいんですか?俺の地元のお菓子屋さんにまで注文して、しかも払いももってもらって」
「その投資分の価値があるのよ」
少なくともこれからを担う若者がやってきたというだけで、とても大きく。
「蘆根さんは全国からでもお客さんを呼べるようになるわ」
なんて嘘でも嬉しかったし、そうならなきゃ、いや、なったら、タモツ先生は喜んでくれるだろうか…などと思ったのだ。
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