浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

文字の大きさ
上 下
157 / 976

自分が教えると甘えが出る

しおりを挟む
廃盤‥
それはどれだけの名品でさえ、もう二度と手に入らなくなるということ。
「人生でこれだけでいいやって思っていたのも無くなってたことがあってな、知ってたら‥と思ったが、その時学生だったから」
「そういうのはありますよね」
「あるある、後な、歯ブラシな」
話が変わったときに、傑が何か引っ掛かったらしい。
「先輩がすごいと思うほどの歯ブラシって、なんですか?」
「なんですか?なんですかってな‥とりあえずすごい」
「もっと伝えて」
「その時飲食店のバイトしてて、悩みの一つが、歯磨きってさ、してすぐだと、口の中、味がわからなくねえ?」
「そうですね」
「それさ、歯ブラシだけで歯垢が落ちるやつで」
「あ~ありますね」
「お前が想像しているのより、もっとだぞ」
「もっと?」
「科学の力で反応させて落としているから、洗い終えた歯ブラシ見るとビックリするやつ」
歯の汚れがそのまま歯ブラシに移ったような落ち方をします。
「なんですか、それ」
「すごいんだよ、そっか‥お前には話したことなかったか」
「聞いたことありませんよ」
「でもすごいんだよ、初めてその歯ブラシを使ったときの汚さといったらな、こんなに汚れてた?毎日洗っても?みたいな、それから修行時代までぐらいか、その歯ブラシが廃盤になるまで、歯科に行かなかったな」
それまで毎年どこか悪くしてた。
「手で磨く、電動とかそんなもんじゃないぞ、歯垢を科学的にだからさ、これ知っちゃったら、もうこれでよくない?と、今はリンスとかでやってるけども、確かにリンスだと予防にはなる、予防にはなるが、歯を磨いた時の爽快感も含めて、そっちだな」
「はっはっはっはっ」
(廃盤になっているなら、うちでオリジナル作りたい)
傑はそろばんをはじいた。
正直、正直である。
基本的に蘆根がいう、すごいというものは本当にすごい。人によっては人生変わりました、ありがとうございます蘆根さんレベルのものも転がっていた。
もしも金儲けだけ考えるならばそれだけを押さえていけば、十分利益は出るだろう。
だがその帳場を預かるヶ崎 傑という男はそれだけでは終わらない。
「自前の歯を残した方が人生いいですからね」
「入れ歯とか大変なんだろう?それなら簡単ケアで自前の歯を何とかした方がよくないか?」
「そうですね、移植もできますし」
親不知などが生えてきた場合、抜歯するか、しないかを選んだ時に。
「その歯を他の歯がダメになった際に移植する方法もある」
と説明を受けた話なんかも、二人はしていた。
「早くブスッと注射でにょき!と生えてこないかな」
「それでも悪い歯が自分から抜けないんだから、痛いですよね」
「そうか」
なお、蘆根は麻酔は期間限定のフレーバーにしている。
「ないならイチゴ」
「アイスみたいですね」
「あの先生さ、絶対狙っていると思うんだよな」
フルーツ系はだいだい出揃ってきたから、そろそろ魔球が欲しいなと思っています、例えば柴漬け味とか、ネギトロ巻味とか。
「というか、それどういう需要が」
「歯科治療を楽しくするためじゃないか、俺は別に怖くはないけども、塗布すれば麻酔完了したときすごいなって思ったがな」
注射は液が辛かったりします。
「先輩、歯科好きですよね」
「好きだな、安心する」
「安心する!?」
「するよ、こう任せられる先生だからかな」
(ブルーハワイとか、柴漬け味の麻酔とかをチョイスをするけども、腕はいいんだよな)
「先生に任せておいたら、安心じゃないかな」
でもね、蘆根くんは歯科にそう縁がある人じゃないから、はい、虫歯無しね、クリーニングして終わりね。
「今の先生、こっちに引っ越してからだけども、あそこは最近学校の検診も引き受けているから、場合によっては何週間待ちになるからさ、健康でいいんじゃない」
春先の検診ともなりますと、ほぼ三週間は埋まってしまうぐらいです。
そこに来客。
「あっ、来たみたいですね」
「今度はどういうものが来るんだろうな」
ワクワクしている。
来客というのは、浜薔薇のスタイリストで使う雑貨などを頼んでいる人です。
「お疲れ様です、蘆根さん、傑の兄貴!」
どっちかっていうと、蘆根の後輩みたいな、腕っぷしが強そうに見えるタイプです。
「煽てても、負けないからね」
「わかってます」
この辺になると蘆根の出番はあまりない。
今回もいいもの選んでいるなというものから、さらに傑が絞る。
「うちはあまり流行は必要としてない」
「わかっているんですが、それでも見てください、このランクはなかなか入ってこないですから」
「タオルは良いものですね」
「ええ、毛足が違うでしょ」
「これよく手にはいったね」
「そうなんですよ、びっくりしました」
この兄さんは、家業を現在手伝っており、父親である社長が、常連で目利きであり、将来性を感じる傑の担当につけた。
「傑さんについて勉強させてもらえ」
自分が教えると甘えが出るからこそ、厳しい客である傑に鍛えてもらえという親心であったが、そこで拗ねずに。
「なるほど、これが出ると」
「もうこの時期だと日焼け防止のアイテムは出揃うけども」
「売れるものはもうないっす」
「そうなんだよね、傘は」
「良いものはもうシーズンオフを待つしか」
この話しが白熱する中を、イツモが入っていかないように蘆根は抱っこして、くすぐった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

平凡に暮らす社畜のSTORY とりあえず無題

沼津平成
大衆娯楽
平凡に暮らす社畜の日記帳です。だんだん洗脳されていく系のホラーじゃなくてほのぼのとしております

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

処理中です...