浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

文字の大きさ
上 下
142 / 996

愛は気楽

しおりを挟む
「ただいま、イツモ」
声をかけて帰ってくるが、もうイツモはスタンバイしている。
手を洗って、うがいして、着替えして。
「イツモ、今日はお土産があるんだぞ」
そういって小袋を出した、大きさとしてはティーパックのあのぐらい。
「これなんだ!」
ガブガブゼリーと書いてある。
「これはな、水と混ぜるだけで美味しいゼリーになるんだぞ」
ケットシー用のゼリーです。
ピィ
どこからでも切れますという切り口が、うまく切れずに伸びた。
パチン
ハサミで切ると。
「あっ」
中もちょっと切りすぎた。
マグカップぐらいの水に、こいつを混ぜると、どんどんぷるぷるになっている。
「完全に固まる前に移して」
ドロドロになったものがイツモの前に、さて食べるかというと。
ガブガブ
名前の通りガブガブ食べ始めた。
ペロッ
完食
「おお、気に入ったか」
膝の上に乗ってきた。
「まだあるけども、明日な」
そういって撫でると、満足したようにミュウと鳴いた。


『ここは浜薔薇の耳掃除です』


「いらっしゃいませ」
「蘆根さん、おひさ!」
そういってしばらくぶりにやってきたお客さんがいた。
「髪は短く、シェービングもして、できればマッサージも!」
「はいはい、今、用意いたしますよ」
このお客さんが浜薔薇に来るのは、すごく嫌なことがあったときとか、気分転換したいときなのだ。
(こういうタイプのお客さんはやはり燃えるな)
やる気になるのはしょうがない、それこそ腕が良くなければ次からは来ない、またはこんな時にうちを選ばないだろうからだ。
「体も心も大分ありましたね」
「そうね」
深くは事情は言わないが、びっくりするほど猫背になっていたり、浮腫がわかる。
「最悪な気分を他に八つ当たりする前に何とかしたいのよ」
彼女はそれを浜薔薇に行くということで解決したいを選んだのだ。
「無理な姿勢で長時間いましたね」
「うん、あまりよくない場所でキーボード叩いたわ、椅子のいいのが欲しいって、本当さ、環境が悪いと体もダメになるのは早いね」
「そりゃあそうでしょ、先にシャンプーしますよ」
「はいはい」
髪もきちんと洗えているようならばまだ大丈夫。
(生活がおかしくなると、身なりから維持できなくなるもんだからな)
それ故に浜薔薇はカットの支援サービスも行っている。
これはKCJがシャワーを貸さなければ出来ないことだし、またこの二つがあるということで、裏に住むカルボンもコインランドリーを始めた。
カルボンがオーナーのコインランドリーは行ってみただろうか?値段設定は他のコインランドリーよりもかなり安い、これは中古のものを整備してるのもあるが、安い金額でいろんな人に使ってもらいたいということであった。
おかけで繁盛しているし、待っている間に浜薔薇の駐車場に来ているキッチンカーで何かを注文するというパターンまで確立していた。
「この辺はやはり穏やかなのさ、それこそ、いつも通りに生活している分には過ごせるって感じだからね」
そのためキッチンカーは食事時以外も売れるということで、軽食、おやつや飲み物まで今では販売していた。
キッ
車が駐車場の手前で泊まって、降りてきたドライバーが。
「今日は何あるの?」
「キャラメルのパンと、コーヒーと紅茶ですね」
「じゃあ、パンとコーヒー、ブラックで」
「わかりました」
こんな感じで立ち寄って買って帰る人もいるぐらいだ。
「コンビニの珈琲って美味しいので、ドリンクのメニューをどうやって作るのか迷うんですけどもね」
同じメニューで真っ向勝負するか、それともは悩む。
「ただ何となく出しても、勝負にすらおそらくなりませんから」
元々はランチを中心に出そうとしていたので、いざドリンクとなるとこの壁があった、どうやってこの壁を壊したかというと。
「茶といえば、東司さんなんで、自信がある何点か持っていって、反応を見ました」
役得でした。
「というか、茶菓子で合わせてくるとは思わなかった」
シンプルなティーに香りの強いお菓子にするとか。
「単品であっ、これはいいななんですけども、お菓子と合わせた時に、これしか考えられないを目指しましたね、お茶に関しては茶の香りがありますから、そこをベースに、香りが花を咲くといいますか」
「えっ?そんな感覚的に組み合わせていたの」
「いましたよ、先にお茶の香り、その上にポンと咲くような感じでしたね」
「今日も満開だったよ」
「ありがとうございます、いや、私、花のない生活していたんで、大人になってから花というものはいいものだなと思ったんですよね」
それこそショーウィンドウのアレンジメントで魅了された。
「あの存在感を出せないかなって、私からお客さんにプレゼントをするみたいなもんで、まあ、この規模だからできているんですがね」
副業としてキッチンカーだが、こんなセンス故に、女性客が多い。
「もうちょっと慣れたら、大量注文、それこそお茶会の仕切りやらないか?って言われているんで、それが今後の課題ですかね」
「その時には是非に」
むしろなんなら、KCJのギャラリーカフェ借りませんか?である。
あっ、そうそう、東司さんがそのギャラリーの期間限定のお茶のメニューね。
・使徒トマス
・ヴァイオレット
・エクィテス
・愛は気楽
の四種類あるんだけども、期間限定のお知らせのチラシを見てから、どれを頼んでいいかまだ決まらないんだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...