浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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片付けもしないで帰るなんて

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イツモはたまにバイトする。
「えっ?どこに?」
「KCJだな」
身近なケットシーとして広報ができる稀有な存在。
ポン
イツモの右手を置かれた取材の人なんかが。
「可愛い」
(落ちましたね)
(落ちたな)
「何しろうちは客商売だからな、その力はKCJにいっても遺憾無く発揮されているっていうところだな」
最寄りの支部で取材があったりすると、イツモに依頼がくるのである。
「ケットシーって何なの?っていう状態の人はまだまだ多いわけですよ、そういうときにグレートエスケープやデストロイヤー、スプラッシュでは無理です」
グレートエスケープ=大脱走
いつの間にかいない。
デストロイヤー=破壊
診察の際に医療機器を壊す
スプラッシュ=ボディプレス
人を見かけるとかましてくる、重い。
「そいつは大変だな」
(その三匹は蘆根さんが来ると結構おとなしいのは黙っておきましょう)
マッサージされたいから、おとなしい。が、イツモと喧嘩になる。
「本当にイツモ様がいてくれて良かった、なかなかできる子いないので」
写真が嫌いなので、カメラ向けた瞬間視界から消えたりもします。
「イツモの場合はなんかカメラ好きというか、俺が撮らなければ撮影しやすいかもな」
蘆根の場合はイツモが遊んでくれるものと思うのか、カメラを構えている時にはもう近すぎて、なんだこりゃ?あっ、背中の一部かみたいな写真しか撮影できないので。
「先輩と遊んで、もう満足した辺りに写真を撮影します」
その時は傑だけではなく、出張所にも連絡して、一気に撮影します。
「そうすると、まあ、何枚かはサイトに使えるようなものが撮影できたりしますね」
「浜薔薇のサイトは浜薔薇っていうより猫のサイトのような」
「ああ、あれは…」
今いる猫たちが何匹なのかチェックできたりもします。
「現在の猫は浜薔薇で、ここ数ヵ月の猫チェックができるのは出張所のサイトですね」
まずは浜薔薇のサイトを見てみよう、駐車場という項目があって、駐車場の背景があり、イツモの声、にゃー~と鳴くと、ゾロゾロっと猫たちが現れ、どういう猫がいるのかわかるぞ。
「その歴代のバージョンは出張所のサイトで見れるので、猫好きには好評です」
「簡単なプログラミングで出来るし」
勉強のために使っている最中に、あれ?これなら猫の管理とかもできない?と思ってやってみました。
「この辺りが安全だからなんですよ」
猫にイタズラする人たちがいないので。
「なんかあったらイツモ様が、留守の時でもちゃんとわかるみたいだからな」
その日は何かありそうなのでキャンセル。
「ケットシーの勘は千里を走るともいいますからね」
「家族に何かあってもわかるともいうし」
イツモは自分の両親も亡くなったときはわかったようで。
「なんか今日はおかしいな」
蘆根が抱き上げたその時に、連絡が入った。
「たまに動画は再生させて見せているぞ」
生家の家族が撮影したイツモが生まれてすぐの動画、両親と同じときに生れた姉妹もいる。
「今の時代ありがたいんですよ、こういう動画が撮影しやすくて」
何しろケットシーは長生きだから。
「たまにそういうのを忘れた方がいいっていう考えのところもありますけども、KCJでは良い思い出は出来るだけ残してもらう方向ですね」
人間もだが、家族をロストすると喪失感を覚える場合がある。ケットシーもそうなのだという。
「私がKCJに入った頃いた子では、毎日そういう動画を流し続けて、部屋から出ない子もいましたから」
五分の映像を繰り返し見ている。
「その子はどうなったかって?あっ、見学に来た職員を気に入りまして」
追いかけ回していたら、他のケットシーと友人になる。
「そこからお見合いをして、今は子孫と共に暮らしています」
「お見合いなんてあるの?」
「ありますよ、希望すればですけども」
「じゃあ、イツモも」
まだいける、まだいけるから、ちょっと待って。


「あっ、その件ですか?書類を書いてください」
ずいぶん乱暴に話を終わらせた。
「どうしたんだ?」
「うちが支援しているのを知ってるところが、じゃあ、こちらもお願いしますって頼んできました」
「それか…」
「大変なのはわかりますけどもね…」
ため息をついてから。
「基本的にこういうのって審査されるものじゃないですか」
「そうだな」
見えないでしょうが、出張所の二人は炊き出しやキッチンカーの審査や報告書などもきちんとやっています。
「数の間違いがないかは、チェックは俺らだけではないからな」
カメラなどの機械と猫たちが警備に入っています。
「顔認証が作動しない場合もありますから」
人じゃない時があるよ。
「自分が死んだことに気づかないで、美味しい匂いにつれられてってやつだな」
「まあ、これも対処は様々ですかね」
病気などで長い間食事の制限をしていた人がお亡くなりになっている場合などは、食べるとそのまま満足して消える。
「炊き出しになんでここら辺の人たちは理解があるのか、わかりましたし」
長らく食料事情が悪かったところなので、それこそ饑饉が頻発していた。
そういう場合は世話役の人たちがお金を出して炊き出しなどをしていたが、それでも犠牲者は出たので、近所のお寺にはそういった人たちの供養が今でも行われていたりする。
「知らないで祓うところだったな」
「混ざっているだけですからね」
誰だよ、片付けもしないで帰るなんてと思った方、もしかしてそういうことなのかもしれませんよ。
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