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擬宝屋 水出汁つけ麺
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「店任されるようになって、いや、よ~店にいるのはいいが、外食にはあんまり縁がなくなったって思っていたんだが…」
最近世の中、テイクアウトや通販を頼めるようになりまして。
「あっ、先輩、注文の品来ましたよ!」
傑が蘆根の待ち望んでいた品物を持ってきた。
「店が監修しているのはわかるけども…」
「大丈夫ですよ、いつも並んで食べている人たちが味の再現完璧っていっているぐらいのクオリティですよ」
「あああああああ!」
本日の夕食は行列が出来すぎて、整理券がまず取れない人気店『擬宝屋』の『水出汁つけ麺』です。
「あっ、イツモも来た」
器に盛り付けると、その香りからか、イツモが近寄ってきた。
「猫はつけ麺の塩分は…」
「あっ、ケットシーは大丈夫というか、トレミー状の障壁の材料が塩分なんだし、たまに眠そうにしているときにもふると、パチパチするじゃん?あれ静電気なんだけも、静電気を起こしやすくするためにも塩分がいるという、まあ、そこまで気になったからって食べさせるわけにはいかないけどもな」
そこでイツモの好きなフードメーカーの期間限定のものをおやつとして食べさせる。
「何味ですか?」
「ピー!(お食事中の方もおられるかと思います、規制します)」
「えっ?」
「だからピー!(お食事の方もおられるかもしれませんので、規制します)」
「なんなんですか、そのメーカー」
「美味しいダンジョンシリーズってのが、今回の期間限定で」
「もういいですって」
「やっぱり猫に見えるが猫じゃないんだなって思うぞ、イツモは」
その昔、かの迷宮都市ではケットシーは探索者と共にあったという。
「あっ、期間限定といえば、擬宝屋の定番の水出汁ともう一つありましたけども」
「あれだろ?クリーミー、まず食べながら話さないか?」
「はい」
タモツも誘ったが、年寄りは早く寝ると断られました。
「うま!」
「これすごいですね、香りも確かにすごいんだけども、食べたとき…全然違う」
「これは並ぶわ」
その後食べ終わるまで無言。
「あ~これそのままご飯足しちゃう!」
「その誘惑には僕も逆らえない」
出汁が美味いので、通販したのならば雑炊にしてもいいよ!
「んで、期間限定のクリーミーって何?」
「じゃがいもスープらしいですよ」
「全然想像つかない」
それが擬宝屋のメニューパフォーマンスである。
実際に注文した人たちは、「そう来たかさすがは
擬宝屋」や「今回も予想を裏切る、もっと俺を裏切ってくれ」と翻弄されることを楽しんでいるレビューしかありませんでした。
「そういえばうちの駐車場で、夜にラーメン屋やりたいって言ってる人って定期的に出るよな」
「ああそうですね」
本気かどうかは知らない。
昔は商人の町だったので、屋台から店をもって繁盛店にしたところも結構ある地域であった。
「店が終わった後に、駐車場に屋台やキッチンカーでラーメン屋が来たら、俺は毎日食べてしまうかもしれない」
「毎日はダメですよ」
結構蘆根は毎日同じものでもいいというか、美味いものは好きだが、厳密に組み立てる方ではなかった。
今は体を壊したらダメですよがブレーキになっており、栄養士管理も受けている。
「先輩に選ばせると、一食でダメじゃないですか!」
一食で一日にとるカロリーや塩分越えていたために。
「蘆根さん、それは冗談ですよね?」
「あの時の磐座(いわくら)さんは怖かった」
栄養を管理している磐座を怒らせました。
「でも、あの時はデミグラスソースのかかったオムライスがどうしても食べたかった」
「そういう積み重ねで体が手遅れになっても知りませんからね」
「わかってる」
ほぼ店、仕事のために節制状態にもなっているため、こうして好物を食べる日を作っていたりします。
「立ち仕事だと水を遠慮して、便秘になるとかありますからね」
「よく効く便秘治療薬とか知っていると、今度私も試して見ようとか、そんな話になるよな」
「というか、普通そういう節制も長続きしないんですがね」
「そうか?」
同じ動きばかりしているとその部分に負担がかかり、ハサミやカミソリを握れなくなるので、蘆根は負担の箇所が違うハサミやカミソリをそれぞれ三種類ほど用意して、使い分けて対応している。
「やっぱり一度腱鞘炎になったんで」
「あんなに練習していたらなりますからね」
でそれなら、重心が違うものを用意して、それを使い分ければいいのではないか?となりました。
「それに気づいた時、ああ!ってなった」
「まずそこに気づかないし、よく重心が違うものを探しましたよね」
「そうなんだよ、意外とみんな同じところなんでな、当時は今のハサミをサブのハサミにしてたんだけども、他のハサミと重心の位置が違う、ぶれない、まあ、その分高いけども、あれから一回も腱鞘炎ないか。作戦は成功ってやつだ」
高密度な練習をただ漠然とやると体というものは悲鳴をあげるので。
「まあ、そんなことするなとは言われた、でもさ、その時他のやつも腱鞘炎で苦しんでてさ、それこそ、バネ指にまでなってるやつとかいたからな」
それでも蘆根は何とかしたかった、そこが勝った。
「今だとこのハサミがあれば腱鞘炎にならないみたいに言われているけども、負担にならないように交互に使うってことも考えないと、ここまで来れなかったんじゃないかなって思ってるよ」
だいたい蘆根のようにとんでもない努力をしない。
例えしてもその努力で体を壊す。
「俺はそこまで努力家じゃないさ」
ある程度やっていくと、こっちの方がいいんじゃないか?そんな腑に落ちる、そんな感覚になっていく時があった。
(そこでなんだかんだ言われても、その感覚大事にして選択しちゃうのが先輩なんだよな)
蘆根宇迦(ろこん うか)、彼の道はいつも荒野から始まり、はるか昔に歩んだものの足跡を見つけ追いかける人生である。
最近世の中、テイクアウトや通販を頼めるようになりまして。
「あっ、先輩、注文の品来ましたよ!」
傑が蘆根の待ち望んでいた品物を持ってきた。
「店が監修しているのはわかるけども…」
「大丈夫ですよ、いつも並んで食べている人たちが味の再現完璧っていっているぐらいのクオリティですよ」
「あああああああ!」
本日の夕食は行列が出来すぎて、整理券がまず取れない人気店『擬宝屋』の『水出汁つけ麺』です。
「あっ、イツモも来た」
器に盛り付けると、その香りからか、イツモが近寄ってきた。
「猫はつけ麺の塩分は…」
「あっ、ケットシーは大丈夫というか、トレミー状の障壁の材料が塩分なんだし、たまに眠そうにしているときにもふると、パチパチするじゃん?あれ静電気なんだけも、静電気を起こしやすくするためにも塩分がいるという、まあ、そこまで気になったからって食べさせるわけにはいかないけどもな」
そこでイツモの好きなフードメーカーの期間限定のものをおやつとして食べさせる。
「何味ですか?」
「ピー!(お食事中の方もおられるかと思います、規制します)」
「えっ?」
「だからピー!(お食事の方もおられるかもしれませんので、規制します)」
「なんなんですか、そのメーカー」
「美味しいダンジョンシリーズってのが、今回の期間限定で」
「もういいですって」
「やっぱり猫に見えるが猫じゃないんだなって思うぞ、イツモは」
その昔、かの迷宮都市ではケットシーは探索者と共にあったという。
「あっ、期間限定といえば、擬宝屋の定番の水出汁ともう一つありましたけども」
「あれだろ?クリーミー、まず食べながら話さないか?」
「はい」
タモツも誘ったが、年寄りは早く寝ると断られました。
「うま!」
「これすごいですね、香りも確かにすごいんだけども、食べたとき…全然違う」
「これは並ぶわ」
その後食べ終わるまで無言。
「あ~これそのままご飯足しちゃう!」
「その誘惑には僕も逆らえない」
出汁が美味いので、通販したのならば雑炊にしてもいいよ!
「んで、期間限定のクリーミーって何?」
「じゃがいもスープらしいですよ」
「全然想像つかない」
それが擬宝屋のメニューパフォーマンスである。
実際に注文した人たちは、「そう来たかさすがは
擬宝屋」や「今回も予想を裏切る、もっと俺を裏切ってくれ」と翻弄されることを楽しんでいるレビューしかありませんでした。
「そういえばうちの駐車場で、夜にラーメン屋やりたいって言ってる人って定期的に出るよな」
「ああそうですね」
本気かどうかは知らない。
昔は商人の町だったので、屋台から店をもって繁盛店にしたところも結構ある地域であった。
「店が終わった後に、駐車場に屋台やキッチンカーでラーメン屋が来たら、俺は毎日食べてしまうかもしれない」
「毎日はダメですよ」
結構蘆根は毎日同じものでもいいというか、美味いものは好きだが、厳密に組み立てる方ではなかった。
今は体を壊したらダメですよがブレーキになっており、栄養士管理も受けている。
「先輩に選ばせると、一食でダメじゃないですか!」
一食で一日にとるカロリーや塩分越えていたために。
「蘆根さん、それは冗談ですよね?」
「あの時の磐座(いわくら)さんは怖かった」
栄養を管理している磐座を怒らせました。
「でも、あの時はデミグラスソースのかかったオムライスがどうしても食べたかった」
「そういう積み重ねで体が手遅れになっても知りませんからね」
「わかってる」
ほぼ店、仕事のために節制状態にもなっているため、こうして好物を食べる日を作っていたりします。
「立ち仕事だと水を遠慮して、便秘になるとかありますからね」
「よく効く便秘治療薬とか知っていると、今度私も試して見ようとか、そんな話になるよな」
「というか、普通そういう節制も長続きしないんですがね」
「そうか?」
同じ動きばかりしているとその部分に負担がかかり、ハサミやカミソリを握れなくなるので、蘆根は負担の箇所が違うハサミやカミソリをそれぞれ三種類ほど用意して、使い分けて対応している。
「やっぱり一度腱鞘炎になったんで」
「あんなに練習していたらなりますからね」
でそれなら、重心が違うものを用意して、それを使い分ければいいのではないか?となりました。
「それに気づいた時、ああ!ってなった」
「まずそこに気づかないし、よく重心が違うものを探しましたよね」
「そうなんだよ、意外とみんな同じところなんでな、当時は今のハサミをサブのハサミにしてたんだけども、他のハサミと重心の位置が違う、ぶれない、まあ、その分高いけども、あれから一回も腱鞘炎ないか。作戦は成功ってやつだ」
高密度な練習をただ漠然とやると体というものは悲鳴をあげるので。
「まあ、そんなことするなとは言われた、でもさ、その時他のやつも腱鞘炎で苦しんでてさ、それこそ、バネ指にまでなってるやつとかいたからな」
それでも蘆根は何とかしたかった、そこが勝った。
「今だとこのハサミがあれば腱鞘炎にならないみたいに言われているけども、負担にならないように交互に使うってことも考えないと、ここまで来れなかったんじゃないかなって思ってるよ」
だいたい蘆根のようにとんでもない努力をしない。
例えしてもその努力で体を壊す。
「俺はそこまで努力家じゃないさ」
ある程度やっていくと、こっちの方がいいんじゃないか?そんな腑に落ちる、そんな感覚になっていく時があった。
(そこでなんだかんだ言われても、その感覚大事にして選択しちゃうのが先輩なんだよな)
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