浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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珈琲代

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自分はシャンプーにこだわっている。
こだわるようになったのは、ある時たまたま使ったシャンプーが長年の髪の悩みであった、広がりやすいものを洗っただけで改善に繋がったことである。
「それで俺は廃盤と戦いながら、今に至るわけよ」
そのお客さんは元々蘆根のホテル時代からのお客さんで、遠方だが浜薔薇の近所に用事がある場合はこうして立ち寄ってくれていた。
「でもさ、業務用のシャンプーが合うとは思わなかった」
「そうですね、髪の状態見ながら、選んでいますけども、こういうのもいろんな商品がありますからね」
営業さんとかも結構くるよ。
「やっぱりプロってすごい」
「そりゃあ、専門家ですし」
「私、蘆根さんの前の職場に行くまでそういう専門家に会ったことなくて、相談したら販売してますと営業の話されるんで」
そういうことを言われると前の職場を思い出して、傑はコメントに困る。
「あ~そういうところもありますから」
蘆根がフォローに入ると。
「この間サキちゃんに会ったんだけどもさ」
元彼女の名前を出されて、楽しい思い出が甦り、そこでコメントに困ってしまった。
「あっごめん」
この人は悪気はない、鋭いだけである。
『いえ、大丈夫です』
「あ~え~そのさ」
ほら、気を使ってきた。
「シャンプーの話でさ、自分のにこだわった後に、もう一つ考えるきっかけがあってさ、私、職場の関係でボランティアに参加したりしたんだけども、その時に知り合った子がいきなりシャンプー合わなくなった、頭皮にトラブルが起きてきたっていったことから始まってさ」
「とりあえずそうなったら、今使っているものは使わないですね」
「それがさ…」
理由は栄養失調であった。
「頭皮に炎症起きてて」
「ああ、それは」
「よくではありませんが、あります」
「そういえば浜薔薇って今は生活支援活動もしているんだよね」
「してますね、大変なときに助け合うのが人間だと思っているので」
蘆根はこういうことをさらりと言える男である。
「特に今は傑いますからね、俺だけがやると努力で解決しようとしますけども、傑がいると、それよりもこうすればいい、もっと助けれる人とかいますって言われると」
駆け出してしまうような蘆根の気質をよくわかった止め方をする。
「栄養失調は…最近多いかな」
一方傑はそう口にして悩む。
「本当に多いんですよ」
「現在支援している側の肌感覚っていうのはあるだろうから、どこに悩んでいるんだい?」
「何もかも足りないのかなっては思いますね、全部自分達で解決しようとするから、そう悩むのかもしれませんけども」
「ここはこの辺じゃ珍しくKCJも後援になってるからな」
平日は駐車場にKCJのキャンピングカーが、浜薔薇出張所となっているが、最近は土日祝日もいたりするよ。
「KCJ、海外なら話聞くけども、国内は本当に話聞かないからな」
(KCJをよく知らないのは僕だけなのかな)
王立ケットシー協会国内支部、それがKCJですよ!
「炊き出しの回数もそうなんだけども、それ以外でも問合せすると食糧支援でいただけたりしますからね」
「土日祝日もいるようになったのはそのためだっていってたな」
行政は土日祝日休みなので、そこを埋めるように活動しようと最近方針を変えました。
「尾花くんもですが、永島くんも手伝ってくれるので」
そのため土日祝日のキャンピングカーの中は、ケットシーのイツモもいるが、浜薔薇の裏に住んでいるフェカリスもいたりする。
この二人が何を手伝ってくれているかというと。
「一人辺り三日分の食糧の小分けをやってます」
「自炊できる人、できない人用にわけてます」
そしてそのできない人が来た場合は、電話越しに遠方のKCJのスタッフから聞き取りが行われる。
「最近の食事の話とかですね、メインは」
支援の申し込みする人というのはだいたい食べてなかったりするのだが。
「全部は解決しないかもしれないけども、ちょっとでもよくしたいって思ってますからね」
この際に一番とってほしいものは何か。
「それは水ですね」
そう水である。
「エコノミークラスなど、血管に負担がかかるとかあるあるなんですよ」
そのため水の配布も行っています。

「KCJはやっぱりプロなんで、俺らじゃ食べ物しか思いつかなかった」
「本当に水だとは」
蘆根も傑も思い出して落ち込んだ。
「なんか水って、身近すぎるけども、言われないとわからない気がする」
「そうなんですよね、水道がなかったら、シャンプーはできませんし、はい、お疲れ様でした」
ここからタオルドライ。
「でもなんか水も、この近所の人が協力してくれることになって」
「湧き水もっている方がいまして」
「湧き水?」
「そうです、昔はそこの水をこの辺の人は飲んでいたとかで、今は趣味で蕎麦とコーヒーとかに使っているだけっていってから」
KCJの浜薔薇出張所ではそこの水を差し上げております。
「経文さん(お客さんの名字)、今もキャンピングカー来てますから、そこ水で珈琲試しに飲んでくださいよ」
「えっ?いいの?」
「KCJの人からも浜薔薇のお客さんならって言われているのでどうぞ」
「へぇ、でもさっきの話は聞いたら興味はあった」
「ここら辺が昔は街道で、店がたくさんあったのは、湧き水があったからなんですよ、共同管理された水源っていうのかな」
歴史を感じる話である。
浜薔薇で頭をスッキリさせてもらった後に。
「すいません、蘆根さん達から聞いたのですが、珈琲っていただけますか?」
出張所を訪ねると、職員は快く迎えてくれた。
今いる職員の二人は、珈琲派と紅茶派らしく。
「それでは今ご用意します、しかし!本当は私のゴールデンルールも試してほしい」
だが場所的に茶器を持ち込めない葛藤があるらしい。
「この湧き水、珈琲と相性いいのもあるので、おもしろいですよ」
こういう面白いですよ何て言うのは、こだわりがある人間だからだろう。
「この辺は水道の水も悪くはないんですけども、湧き水を使うと、同じ豆でもこんなに違うのかっていうぐらい変わるのが魅力ですね」
「へぇ~」
「特にチェーン店でも違いますよ」
そういったこの地域の同じ珈琲店でも水の違いでだいぶ味が違うことを教えてくれた。
「同じ値段でも、段違いなのはやっぱりここですかね」
近所に有名な蕎麦店がある地域の支店である。
「ここは面白いですよ」
熱く語られて、それではごちそうさまでしたと経文が帰るときに、KCJの支援活動の募金箱が目に入った。
「珈琲代としていれておきますよ」
万札を入れて、そのまま出張所から去っていった。


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