浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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ネコの親分

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バッ!
ケットシーのイツモはいきなり飛び起きた。
KCJの職員があっ、イツモ様が起きたと思ったら、そのまま外に出ていった。
「えっ?」
見事な早業だったので、急いで捕まえようとするとそこには、屋根の上に人がいたのだが。
(あれ?ここの家の人じゃないよな)
その一瞬、イツモは塀の上に飛び上がったあと、屋根の上にいる人に向かって、突撃をした。
「あああああ!」
そういって屋根から落ちた。
「えっ?えっ?」
「なんだどうした」
その叫び声で店の方から蘆根が傘をもって現れた、先ほど修理で骨を直しているという話をしていたから、それなのだろう。
「イツモ様が知らない方に突撃して、屋根から落ちて」
「えっ?」
蘆根を先頭に落ちた相手を確認すると。
「空巣」
「へっ?」
「あっ、警察に連絡するから」
「これ使ってください」
職員の持っている電話で連絡。
「うううう」
「これ縛る必要ないな、どっか折れてる」
キリ!
イツモはネズミを捕ったネコみたいな顔をした。
「あっ、すいません、そちら警察でしょうか…」
連絡をして、警官が来るまでここにいなければならない。
「イツモは、ここに俺が引っ越してきてから、この町内を自分のテリトリーに思っているみたいで」
「ああ、ケットシーって、テリトリー広いんですよね」
KCJでも発刊している童話「ネコの親分」を参考にすると、ケットシーは村に住んでいたりすると、その村を全部自分のテリトリーにするので、そこで狼や猪などが来ても守られていたそうだ。
「イツモ、怪我はないか?」
そういって蘆根はイツモが怪我をしてないか、確認をする。
「大丈夫だと思いますよ、思いっきりトレミー状の障壁だして突撃していったので」
「今日はちょっと旨いもの出しておくか」
ケットシーはネコとは違い、人間と同じぐらい塩分をとったとしても大丈夫、その理由は自分の身を守るためにトレミー状の障壁を作り、衝撃を吸収しているから。
パチ!
イツモを撫でると、静電気がはねた。
これも障壁のせいである、ネコとは違い、不用意にケットシーを撫でると、下手すると感電するので、ケットシーが嫌がることはしないことが大事なのだ。
次の日ネコが空き巣を退治したといことで、全国ニュースデビューもしました。
「取材のセッティングもお任せください、全部我々が中に入りますから!」
KCJのスタッフ達がまるっとやってくれたおかけで、蘆根達は自分達の仕事ができた。
「フェカリスくんのご自宅にあった防犯カメラが、決定的な瞬間を捕らえていましたので、そちらを使わせていただいて、動画も編集してお渡ししました」
朝六時台のニュースで全国デビュー、ニュースで使われてない部分は、浜薔薇の公式チャンネルでフル公開。
「二日でチャンネル登録1000人いきました」
「なんかサクサク行きすぎじゃないか?」
「お任せください、後、浜薔薇の耳掃除動画も撮影したいんですけども」
「耳掃除動画か…」
「はい、需要があると思うんですよ」
そういって職員が資料を見せてくれた。
「耳かき、耳掃除のコンテンツというのはニッチでありながら、再生回数がとんでもなく多いので」
「浜薔薇の方向性としては、そのままでいいんですけども、見せ方を工夫したいですね」
KCJの職員達はこの辺にいるケットシーはイツモしかいないので、全力で支援するらしい。
「写真と文章では見せているじゃないですか」
近隣の温泉施設に、綿棒配布してレジェンドたもつの読み物をドライヤーコーナーに置いたら、温泉施設と浜薔薇へやってくるお客さんが増えたのである。
「見せ方ね…」
「じゃあ、私がお客さんだと思って、蘆根さんはどう耳かきします?なんか左耳がくちゃって音しちゃって」
「えっ?それは本当に?」
「してます」
「それなら耳かきするから、あっ、よかったら、二人とも店の方にどうぞ」
店に移動。
「なんかレトロな店内ですよね」
「それこそ、タモツ先生が開店させた時代のものそのまま使っているからな、やっぱり惜しかったわけですよ、この鏡とか、ただこの前シャンプーの台なんかはちょっと負担があったから、そこは変えましたけどもね」
「へぇ~」
「その時代のデザインって知ってますか?」
傑も店内にいたので、傑は職員の一人に当時のデザイン資料を見せた。
「あっ、すごい興味深いですね」
「うちの親の会社でもこういうのはないか、問い合わせが来るから、その資料なんですけども」
「日本のこの時代のデザインとか知らなかったですね」
KCJの職員達は、帰国子女が多い。
(小学校の帰り道に異世界に生け贄としてさらわれて、勇者に助けられなかったらどうなっていたからわからないから。こういうの知らないんだよな)
(世界を渡り歩く賢者の弟子卒業してから、こっちで就職したから、おもしろいな)
なんかよくある帰国子女ではなさそうだ。
「ああ、それで耳が音する理由ね」
「あっ、はい」
綿棒で左の耳から髪の毛が出てくる。
「それで音してたの、これ普通の耳かきだととれないだろうね、ついでにお二人とも耳かきするんでよろしく」
耳の中を竹の耳かきで掃除される。
「あまり耳かきされないんですね」
殻のようなものが耳から取り出されていく。
ポロリ、ポロリと紙の上。
汚い茶色や黄色が増えていった。
「さて」
「あれ、終わりじゃないですか?」
「大きいのはとったんで、ここからですよ」
それこそ薄皮をめくり取られる快楽の始まり。
ピリリリリ
なんだろ、この音は聞こえちゃいけないような音のような気もするんだが。
コロン
この固まっていた垢が落ちたとき、ものすごい気持ちよさが押し寄せてくる。
「動かないでくださいね」
もう動けないよ、力がうまく入らないよ。
カリカリカリ
そこを掘り進められる。
「はぁはぁ」
(大丈夫か?)
(蘆根さんは魔法使いだ、あんな癒しの魔法の使い手、他の国にもいねえ)
短距離間とは言え、テレパスは嘘偽りに向かない通信手段である、あちこちを渡り歩いた、流浪の賢者の弟子がそこまでいうのならば、蘆根の腕は間違いないであろう。
     
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