浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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中島温泉郷 四方木の湯

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「いらっしゃいませ!」
浜薔薇の人はいつも元気がいい。
(板前さんみたいだな)
そう思ってしまったせいで。
「本日は何しましょう?」
「そうだな、オススメってある?」
つい…言ってしまいました。
「そうですね、中島の温泉郷で100年湯屋を経営している、四方木の湯、そちらの温泉水を使いました、フットバスなんていかがでしょうか?寒い日でも湯上がりはホッカホカ、ご機嫌になれますよ」
「……」
お客さんは目が点になっている。
ああ、やばいやっちゃったかな?と思っていると。
「じゃあ、それで」
「毎度!」
昨日から始めた温泉フットバスに新しいお客さんができた。
(ああ、温泉の臭いがする、温泉行きたいな)
フットバスに足を入れると、そんな気分になった。
浴衣卓球したいななんて思っていると。

「俺とダブルス組んでください」
昔好きな子にこんな告白をして。
「私はそういう風に見れなくて…」
フラれたことを思い出して、足湯は気持ちいいが、黒歴史で葛藤してしまった。

足湯の後は、耳掃除である。
(俺を癒してください)
それは体の疲れではなく、失恋の辛さではないか?というのは、蘆根にはわからい。
耳の中を見ると、思わずうずうずしたくなるような、垢のつまり方をしていた。
どうやって崩そうか、取りたいものを取ろうとすれば奥に転がってしまうもの、しかしだ。
出来るのならば大きなままで確保したくなるのが、耳掃除の業である。
思わず生唾を飲むような大物、自然と目が険しくもなり。
(先輩が苦戦しそうな耳だと、まだ僕はできないな)
隣でお客さんのカットをする傑はそう思った。
(見えた)
それは一瞬の隙である、ここから狙えば一気に行ける、そういう直感という奴も含めたものが花咲いた。
(おっ、ちっとは見えてきたか、でもまだまだだな)
タモツはそんな弟子の成長を見てすぐに店の奥に入った、でもとても嬉しいそうな顔をしている。
ゴソ
おそらく、今の自分ではこれ以上の大物は綺麗に狙えないだろう、垢をかき出してから、少し手が震える。
誰にも見えないように息をはぁ~と長く吐き出してから、何事もなかったように耳かきを続ける。
(不思議だ)
前にはわからなかった、竹の耳かきのさじの部分、その減りが気になる。
丸さを失い角が出てくる前に、タモツがこれはダメだと廃棄するのだが、その意味がわかるかもしれない。
ほど良い苦難は人を成長するらしい。
「耳掃除はやっぱり浜薔薇に限るね」
「そういっていただけるとありがたいです」
今、俺は耳かきが猛烈にしたい、そんな気持ちになった蘆根は、その日来たお客さんの耳かきを全部引き受けたが、興奮はそれでは覚めなかったという。






「いらっしゃいませ!」
浜薔薇の人はいつも元気がいい。
(板前さんみたいだな)
そう思ってしまったせいで。
「本日は何しましょう?」
「そうだな、オススメってある?」
つい…言ってしまいました。
「そうですね、中島の温泉郷で100年湯屋を経営している、四方木の湯、そちらの温泉水を使いました、フットバスなんていかがでしょうか?寒い日でも湯上がりはホッカホカ、ご機嫌になれますよ」
「……」
お客さんは目が点になっている。
ああ、やばいやっちゃったかな?と思っていると。
「じゃあ、それで」
「毎度!」
昨日から始めた温泉フットバスに新しいお客さんができた。
(ああ、温泉の臭いがする、温泉行きたいな)
フットバスに足を入れると、そんな気分になった。
浴衣卓球したいななんて思っていると。

「俺とダブルス組んでください」
昔好きな子にこんな告白をして。
「私はそういう風に見れなくて…」
フラれたことを思い出して、足湯は気持ちいいが、黒歴史で葛藤してしまった。

足湯の後は、耳掃除である。
(俺を癒してください)
それは体の疲れではなく、失恋の辛さではないか?というのは、蘆根にはわからい。
耳の中を見ると、思わずうずうずしたくなるような、垢のつまり方をしていた。
どうやって崩そうか、取りたいものを取ろうとすれば奥に転がってしまうもの、しかしだ。
出来るのならば大きなままで確保したくなるのが、耳掃除の業である。
思わず生唾を飲むような大物、自然と目が険しくもなり。
(先輩が苦戦しそうな耳だと、まだ僕はできないな)
隣でお客さんのカットをする傑はそう思った。
(見えた)
それは一瞬の隙である、ここから狙えば一気に行ける、そういう直感という奴も含めたものが花咲いた。
(おっ、ちっとは見えてきたか、でもまだまだだな)
タモツはそんな弟子の成長を見てすぐに店の奥に入った、でもとても嬉しいそうな顔をしている。
ゴソ
おそらく、今の自分ではこれ以上の大物は綺麗に狙えないだろう、垢をかき出してから、少し手が震える。
誰にも見えないように息をはぁ~と長く吐き出してから、何事もなかったように耳かきを続ける。
(不思議だ)
前にはわからなかった、竹の耳かきのさじの部分、その減りが気になる。
丸さを失い角が出てくる前に、タモツがこれはダメだと廃棄するのだが、その意味がわかるかもしれない。
ほど良い苦難は人を成長するらしい。
「耳掃除はやっぱり浜薔薇に限るね」
「そういっていただけるとありがたいです」
今、俺は耳かきが猛烈にしたい、そんな気持ちになった蘆根は、その日来たお客さんの耳かきを全部引き受けたが、興奮はそれでは覚めなかったという。




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