浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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MPダメージ

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浜薔薇も隣の蘆根の家も、気温はセンサーで管理されている。
これは、タモツの奥さんが、いわゆるヒートショックによって倒れたことで、蘆根が導入した。
ふぁ~と飼い猫のイツモが棚の上であくびをしたのだが、たぶん彼はわかってはいないだろう。
リフォームとしては、断熱性能を高め、夏でも冬でも人間が住みやすいようにするというやつだ。
その時はまだ蘆根はアパートを借りて、そこから浜薔薇に来ていたのだが。
隣の家が空き家となるそうなので、工事の間はタモツが借りて、その後は蘆根が借りようと思ったら。
「取り壊し費用は出すから」
なんか物件を押し付けられた。
この地域は人口が減り、それこそ蘆根みたいな人間は珍しいのである。
(逃した魚は鯨になる)
鯨は魚ですか?なんてつっこみは野暮であった。
「タモっぁん、若いのに厳しくしたらいなくなっちゃうから」
周囲の一部は危機感を持ってた。
「出せる札、ある程度以上は出すから(震え)」
と一部のそんな人たちが、もしもそれでダメならばしょうがないが、今はそういう世の中だからといって、蘆根を気にかけてくれるようになった。


ふらふらと浜薔薇目指して歩いてくるものあり。
「いらっしゃいませ」
この近所にお住まいのお客さんがやってきた。
「製品チェック終わったから、お願い」
HPで例えると赤ゲージの、一桁なのではないか?と思えるぐらいお疲れである。
このお客さんは仕事を切りがいいところまで終わらせると、浜薔薇に来るのだが、神経が昂っていたり、並みの状態ではない。
「浜薔薇を見つける前は、この状態でお風呂入ったら、危なかったので」
蘆根に有料管理してもらうことになった。
顔を触ると、見た目以上に無精髭が生えている。
これは髭剃りの後は毛穴パックだろう。
ペリペリと乾いたパックを剥がしたとき、粒の角栓がたっぷりと現れると思うと、ぞくぞくっとする。
トントントン
優しく鎖骨を叩いていく。
精神が昂っていると、休んだ方がいいが、上手く休めないので、今回の目的は上手く休むための手伝いといったところか。
これは大仕事である。
このタイプにこれは!という解決のゴールデンルールがあるわけではない。

ツボを押して確かめる。
ぎゅ
押しても、目の反応が薄い。
「今回は忙しかったんですか?」
「忙しかった、仕様が、仕様とは言えない仕様で、たぶんこんなものなんだろうなって、あれはもうほとんど私のオリジナルじゃないかなと」
ただ名前は向こうの名前になり、自分の名前は決して出ることはない。
「ああ、そうか、それもあったから、上手いこと休めないのか」
いつもより疲れるのが早いなと、そのために早く切り上げて、浜薔薇に駆け込み、こうしてリクライニングシートにごろんと寝転んでいる。
「満足行く仕上がりでしたか?」
「そりゃあね」
そこでニカっと笑った。
「そりゃあ、良かった」
「結構私は、仕事早いって思われているらしくて、色々渡されるんだけどもね、ほとんどがやってくれてラッキーな顔をするけども、それって高くつくんだよ」
「結局実力じゃないですもんね」
「そうそう、メンテナンスとかできるだろうと思ったら、それなくてね、びっくりしたことたくさんあるよ!」
そのまま壊れたとか、悪くなったで投げ出される。
「ああいうのじゃ、上手く行くはずなんてないよ」
「そういうことって多いですよね」
「多いよ、ビックリしちゃう、あ~浜薔薇が近所にあるって最高だな」
「なんです、いきなり」
「行き付けとか探していたんだよね、でもなかなか見つからなくて、いいところあっても遠いとかね」
そんな時にブログのコニーのおすすめ見たそうだ。
「新しくできた蕎麦屋が旨いのかな?って、まいたいブログの人たちって、新店舗なオープンすると行くから」
しかし、そこはないなだったらしい。
「そっから適当に見ていたら、ここの店があって、知っているお店より評価上だったんだよね」
だから、まあ、行ってみようかなと。
「そしたら他に行かなくていいじゃんって」
「それはありがとうございます」
肌を触ると体温が高くなったので、マッサージをまず始める。
鎖骨から首の後ろをクリームを塗って、手を滑らす。
「でもさ、マッサージ、無駄だとか言われたんだよね」
「なんですか?それは」
「前の彼女、でもさ、寝起き全然違うので、この仕事やるなら、必要経費かなって私は思っているんだ」
連休は浜薔薇行くと告げたら、別れ話になりました。
「それは大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ、だって使命感だけじゃ働けないし」
何か申し訳ないなという気分に蘆根はなってしまう。
マッサージで血行が良くなったので、そこからシェービングをする。
(肌の調子はよし)
ただここで休息とらないと、三日もすれば肌荒れが起きるのではないかといったところ。
しっとり泡を乗せた後に、ショリショリショリとカミソリをかけていった。
それが終わると、パック。
剥がすタイプのパックを塗って、乾くまでお待ちください。
すると乾くまでもう少しの頃には、寝息が聞こえてきた。
パリパリパリ
顔の形に剥がされたパックは、産毛や角栓、皮脂の跡がついている。
このままだと皮脂が出すぎてしまうので、化粧水で肌を補う。
そして耳掃除。
ショリ
耳たぶ、縁を一度カミソリかけてから。
かちゃん
耳かきで掃除をして行く。
ピリ!
小石のように固まった垢が目についたので、まず剥がす。
そこから奥に向かうが、詰まり気味であった。
(そういえば製品チェックでイヤホンとかイヤーモニターとかも使ったりするって言ってたな)
普段しゃべることもないというのもプラスになり、奥に入り込んでいたらしい。
これは行けない。
そう、それは行けないことなのだ。
かちゃ
ピンセットを取り出す、ちゃんと動きが良いか、奥に入れる前に二度、三度噛み合わせをチェックする。
自分の指先のように動いてくれなければ困る、故にこれは大事なこと。
ガシッ
そして、バリバリバリ…と剥がしていく。
耳かきが入らないときは、これに限る。
何個か、欠片を拾い上げ、竹の耳かきに持ち変えた。
ザリザリ
砂利を踏んだような音がする。
垢と気が複雑に絡み合った音だ。
ボロン
まだ出るか!といいたくなるぐらい、今回はたっぷりと取れた。
それならば左耳もと思うが、同じぐらいというのは、意外と少ない。
耳は同じ形ではないので、やはり溜まりかたは違うんだなと思うのだ。
「やっぱり浜薔薇はすごいわ」
精神的な昂りは、本人いわく何日かかかる疲れ、MPにダメージ食らっているから、魔法が使えない状態になるそうだ。
「なんかやること増えそうなんで、そろそろ自己管理考え直しなんだよね」
「それでもダメなら、うちへどうぞ」
私としては全部任せたいんだけどもねと苦笑いをして、お客さんは帰っていった。
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