浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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今日からしばらくよろしくお願いします。

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「今日からしばらくの間、よろしくお願いします」
傑(たける)は浜薔薇の主人であるタモツと、学校の先輩に当たる蘆根(ろこん)に挨拶をした。
この傑、先程も言った通り、蘆根の後輩に辺り、この間まで他の店で働いていたが…
「心が折れました」
お客に絡まれて、廃業しようかまで追い詰められた。
「蘆根くん、時間とれるかな?」
その頃傑の父から蘆根に相談の連絡が来た。
「うちの息子は腕はどんなものなんだろうか?率直な意見を聞きたい」
父親は一代で会社を大きくした男であり、別の道を歩んではいる息子を快く送り出した。
「才能はありますよ、あのお店にも傑だと安心してお願いするお客さんがいたぐらいですし」
「なるほどな…」
息子が店をやめる話を妻から聞かされて、原因がどこか、そして今後の事を考えるために、学生時代から付き合いがある蘆根にもアドバイスを求めたのだ。
「あのままだと店を開業するのも辛いだろうし、うちの息子、こちらの会社の後を継ぐ才能もあるんで、廃業を選べちゃうんだよね」
一方蘆根は腕っぷしが強そうなので、あまり絡まれることはない。
そして浜薔薇はブログに紹介されるまでは常連客しか来なかった。
それでも一度変なのが来たことがあるのだが…
「どうした?」
庭で草刈りをしていたタモツが鎌を持って店内に来たら黙った。
傑が父親から、仕事としては好きなのか?など聞かれ、答えとしては仕事にやりがいは感じてはいるが、ああいうお客さんの対応は自分では出来ないので、向いていないのではないかだった。
「タモツさんともお話しできるかな?」
そういうことで傑の父とタモツで話し合ったところ、傑の父親の会社から出向という形で浜薔薇で仕事をすることになった。
「すいません、髪を切ってもらいたいんですけど」
近所にお住まいのお母さんがお子さんを連れてきた。
シャキン
少年はポーズをつけている。
「おっ、格好いいな」
「だろ?」
「こら、カケル!」
「カケルくんは、今日はどうなりたい?」
そこで傑が話しかけると。
「う?うん?」
困っている。
「こんな感じかな?」
そういってヒーロー番組の写真を見せたりすると。
「おお、そんな感じ!」
「じゃあ、頑張ってやってみよう!」
「おー!」
「傑、じゃあ、頼んだぞ」
「わかりました」
そういって好きな番組を見せながら、カットしていく。
グッ
変身すると、少年は拳に力をいれた。
勝つとよっしゃ!とポーズをし、満足してリラックスしたので。
その間に、顔剃りをして、耳かきまで終えた。
「すごい、うちの子がおとなしくしてる」
ありがとうございましたとお母さんは感謝した。
「こりゃあ、俺も頑張らないとな」
そんなわけで精神的リハビリを兼ねて、週に何回か傑が浜薔薇にやってくることになった。

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