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スーパーマーケット
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翌日、仕事を休んだマイケルは、ジェシカが消えたスーパーマーケットに来ていた。
ジェシカが消えてすぐの頃は、何度もここに来ていた。
警察も連日捜査に来ていたが、今はもう、警察の影すら無い。
当時、監視カメラの映像を警察が確認したが、警察からは映像には手掛かりになる部分は無かったとだけ伝えられ、マイケルは映像を見せてもらえなかった。
その事がずっと引っ掛かっていたが、結局映像を見ることができないまま、五年が経っている。
マイケルは車を降り、スーパーマーケットの中へと入った。
昔に比べると、客の数は減ったように感じ、マイケルは苦笑する。
(この客の数じゃ、潰れるのも仕方ないか)
そんな事を思いながら、マイケルはカートを取り、押して歩きだす。
ここにジェシカの痕跡を求めているものの、いざ来たら何処を探せばいいのかがわからない。
何度も来て、何度も探して、従業員の休憩室まで見せてもらった。
(もう、探す場所も無いよな)
最後に来たのは三年前だ。
その頃とは少し配置が変わった店内を、マイケルは歩く。
何か買うべきだろう。
そう考えて、マイケルは飲み物の並ぶエリアに来た。
(ジュースでも買うか)
決めたマイケルの手は、自然とオレンジジュースに伸びる。
ジェシカが大好きだったジュースだ。
ジュースを手に取った時。
「ぱぱ」
声がした。
その声は、忘れもしない、ジェシカの声だとマイケルは気付く。
マイケルは目を見開き、ジェシカの姿を求めて辺りを見回す。
しかし、ジェシカの姿も、子どもの姿も無い。
(幻聴? でも、確かにあの声は……)
マイケルが戸惑っていると、銀色の柱が目に入った。
ポスターが貼られたその柱は、鏡ほど鮮明ではないが、マイケルの姿を映している。
そのマイケルのすぐ隣に、子どもらしき影が映りこんでいた。
驚いたマイケルは、すぐに自分の隣を見たが、そこには誰もいない。
しかし、柱を見ると、そこには確実に子どもがいた。
子どもの姿を鮮明に見ようと目を凝らすと、子どもの服装に気付く。
その服は、ジェシカが消えたあの日、ジェシカが着ていた服とよく似ている。
「あ……あぁ、まさか」
マイケルはふらふらと、柱に近づき、柱に触れると、ゆっくり映りこんでいる子どもの影を撫でた。
「ジェシカ?」
マイケルが名前を呼ぶと、ジェシカらしき子どもがマイケルに近付いて来る。
そして、小さな両手を伸ばした。
それを見たマイケルは、膝を着いて子どもの手に自分の手を重ねる。
「ジェシカなんだな? ああ、ジェシカ」
マイケルの目に涙が浮かぶ。
五年前のあの日、突然姿を消した娘の姿がそこにある。
あの時から全く変わっていない、幼いジェシカの姿に、マイケルは涙を流した。
直接触れたくて、本来ならば居るであろう場所に手を伸ばす。
しかしそこには何もいない。
マイケルは悔しさから険しい顔になった。
「ぱぱ」
また、ジェシカの声がする。
「なんだい? ジェシカ?」
マイケルが問い掛けると、ジェシカはマイケルの手に自分の手を重ねた。
すると不思議なことに、マイケルの手に小さな手の温もりが伝わる。
マイケルが驚きに目を白黒させていると、柱から黒く長い、影のような立体感の無い手が伸びてきて、マイケルを掴んだ。
「……っ?!」
声も出せないまま、マイケルの体が無数の手に包み込まれ、マイケルの体は柱の中へと飲み込まれた。
ジェシカが消えてすぐの頃は、何度もここに来ていた。
警察も連日捜査に来ていたが、今はもう、警察の影すら無い。
当時、監視カメラの映像を警察が確認したが、警察からは映像には手掛かりになる部分は無かったとだけ伝えられ、マイケルは映像を見せてもらえなかった。
その事がずっと引っ掛かっていたが、結局映像を見ることができないまま、五年が経っている。
マイケルは車を降り、スーパーマーケットの中へと入った。
昔に比べると、客の数は減ったように感じ、マイケルは苦笑する。
(この客の数じゃ、潰れるのも仕方ないか)
そんな事を思いながら、マイケルはカートを取り、押して歩きだす。
ここにジェシカの痕跡を求めているものの、いざ来たら何処を探せばいいのかがわからない。
何度も来て、何度も探して、従業員の休憩室まで見せてもらった。
(もう、探す場所も無いよな)
最後に来たのは三年前だ。
その頃とは少し配置が変わった店内を、マイケルは歩く。
何か買うべきだろう。
そう考えて、マイケルは飲み物の並ぶエリアに来た。
(ジュースでも買うか)
決めたマイケルの手は、自然とオレンジジュースに伸びる。
ジェシカが大好きだったジュースだ。
ジュースを手に取った時。
「ぱぱ」
声がした。
その声は、忘れもしない、ジェシカの声だとマイケルは気付く。
マイケルは目を見開き、ジェシカの姿を求めて辺りを見回す。
しかし、ジェシカの姿も、子どもの姿も無い。
(幻聴? でも、確かにあの声は……)
マイケルが戸惑っていると、銀色の柱が目に入った。
ポスターが貼られたその柱は、鏡ほど鮮明ではないが、マイケルの姿を映している。
そのマイケルのすぐ隣に、子どもらしき影が映りこんでいた。
驚いたマイケルは、すぐに自分の隣を見たが、そこには誰もいない。
しかし、柱を見ると、そこには確実に子どもがいた。
子どもの姿を鮮明に見ようと目を凝らすと、子どもの服装に気付く。
その服は、ジェシカが消えたあの日、ジェシカが着ていた服とよく似ている。
「あ……あぁ、まさか」
マイケルはふらふらと、柱に近づき、柱に触れると、ゆっくり映りこんでいる子どもの影を撫でた。
「ジェシカ?」
マイケルが名前を呼ぶと、ジェシカらしき子どもがマイケルに近付いて来る。
そして、小さな両手を伸ばした。
それを見たマイケルは、膝を着いて子どもの手に自分の手を重ねる。
「ジェシカなんだな? ああ、ジェシカ」
マイケルの目に涙が浮かぶ。
五年前のあの日、突然姿を消した娘の姿がそこにある。
あの時から全く変わっていない、幼いジェシカの姿に、マイケルは涙を流した。
直接触れたくて、本来ならば居るであろう場所に手を伸ばす。
しかしそこには何もいない。
マイケルは悔しさから険しい顔になった。
「ぱぱ」
また、ジェシカの声がする。
「なんだい? ジェシカ?」
マイケルが問い掛けると、ジェシカはマイケルの手に自分の手を重ねた。
すると不思議なことに、マイケルの手に小さな手の温もりが伝わる。
マイケルが驚きに目を白黒させていると、柱から黒く長い、影のような立体感の無い手が伸びてきて、マイケルを掴んだ。
「……っ?!」
声も出せないまま、マイケルの体が無数の手に包み込まれ、マイケルの体は柱の中へと飲み込まれた。
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