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家
家6
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静かな室内に、スクールバッグを撫でる微かな音が鳴る。
子供であったであろうその存在は、だんだんと落ち着いてきたように空良は感じた。
「おにぃ、ちゃん」
子供の声がして、空良はゆっくりと抱き締めていた腕をほどく。
すると中から白い小さな手が出てくる。
一本、二本、三本、四本と、出てきた手の数に、一瞬空良は息を詰まらせた。
どの手も小さく、手のひらには緑色の塗料らしきものが着いている。
腕の数に驚く空良の前で、スクールバッグの中から、真っ黒な存在が出てきた。
大きさはバスケットボール程度だろう。
真っ黒な長い髪の毛が、その存在を包むように伸びていた。
その異様な塊から、四本の腕が生えていて、その中の一本が、ゆっくりと空良の方に伸びてくる。
一瞬、空良は逃げ出しそうになったが、逃げ腰になる自分をすぐに抑え込む。
手は、空良の頬に触れる。
「怒らないの?」
子供の声がして、空良は自分の頬に触れている手に、そっと手をかさねた。
「怒らないよ」
空良が返すと、黒い髪に包まれた物は、空良に近付いて来る。
「みか、おなか、すいた」
そう言った瞬間、髪に包まれた塊は縦に割れた。
割れたその部分には無数の尖った歯が生えていて、空良が『口だ』と認識した時には、既に空良の鼻先まで口が迫っていた。
「あ……!」
叫ぶ声も上手く出ず、空良はただ目を見開くことしかできない。
(俺……ここで、死ぬ?)
そう思った空良の視界は真っ暗になり、空良の意識は暗闇の中に沈んで消えた。
子供であったであろうその存在は、だんだんと落ち着いてきたように空良は感じた。
「おにぃ、ちゃん」
子供の声がして、空良はゆっくりと抱き締めていた腕をほどく。
すると中から白い小さな手が出てくる。
一本、二本、三本、四本と、出てきた手の数に、一瞬空良は息を詰まらせた。
どの手も小さく、手のひらには緑色の塗料らしきものが着いている。
腕の数に驚く空良の前で、スクールバッグの中から、真っ黒な存在が出てきた。
大きさはバスケットボール程度だろう。
真っ黒な長い髪の毛が、その存在を包むように伸びていた。
その異様な塊から、四本の腕が生えていて、その中の一本が、ゆっくりと空良の方に伸びてくる。
一瞬、空良は逃げ出しそうになったが、逃げ腰になる自分をすぐに抑え込む。
手は、空良の頬に触れる。
「怒らないの?」
子供の声がして、空良は自分の頬に触れている手に、そっと手をかさねた。
「怒らないよ」
空良が返すと、黒い髪に包まれた物は、空良に近付いて来る。
「みか、おなか、すいた」
そう言った瞬間、髪に包まれた塊は縦に割れた。
割れたその部分には無数の尖った歯が生えていて、空良が『口だ』と認識した時には、既に空良の鼻先まで口が迫っていた。
「あ……!」
叫ぶ声も上手く出ず、空良はただ目を見開くことしかできない。
(俺……ここで、死ぬ?)
そう思った空良の視界は真っ暗になり、空良の意識は暗闇の中に沈んで消えた。
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