ラビリンス~悪意の迷宮~

緑ノ革

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目覚め

目覚め4

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 部屋を出た空良は、周囲を見回す。
 空良がいた部屋は角部屋だったらしく、空良から見て右側には突き当たりの壁があり、左側には長い通路が伸びている。

 通路は真っ直ぐではないらしく、緩やかに道が曲がっていた。
 先ほどの部屋と同様に、白い壁に淡い緑色のかかった天井になっている。
 しっかりとした直線で作られていない、長い通路を見て、空良は少し気持ちの悪さを感じていた。

 空良は何が起きるのか、少しの不安を抱きながら歩き出す。
 恐怖心はそれほど大きくはなくなっていて、前へと進む足はすらすらと動く。

(何だか変な作りだな……)

 そう思いながら歩いていると、通路の途中で壁にぽっかりと穴が空いているのが見えた。
 その穴は空良がいた部屋の入り口と同じような造りになっていたので、そこが部屋の入り口なのだとすぐに理解する。

 空良は入り口に近付き、そっと部屋を覗いた。

 その部屋は空良が目覚めた部屋と似たような造りになっていたが、台座は無く、天井の色は淡い青色になっている。
 そして、台座が無い代わりに、部屋の真ん中には四角い何かが置かれていた。

(あれは、何だろう?)

 興味を抱いた空良は部屋に入り、その四角い何かに近付いてみる。

「……これ、何だ?」

 近付いて見てみると、それは何かの機械である事に気付く。
 そしてぐるりと周りを回ってみた。

 ひとつの面には軽く曲線を描くガラスのような物がはまっていて、その裏側にあたる面には何やら色んな線を繋げそうな穴が空いている。
 各々の穴の近くに文字が書かれていたようだが、殆んど消えていて読めなかった。

「何の機械なんだろう? テレビに似てるけど、こんな箱みたいなテレビは見たことが無いな……」

 静かに呟き、空良が左右の確認をしようとした時だった。

 突然ガラスのような物がはまった面に砂嵐の映像が映り、ザァーっと音を立て始める。
 驚いた空良は、飛び退いて機械から離れた。

 そして距離を置きながら、恐る恐る砂嵐の映像が映し出された画面を確認する。

(やっぱり、これはテレビなのか?)

 空良の知っているテレビとは違うスマートさの無い四角いテレビを見ながら、空良はゆっくりとテレビに近付く。

「……に……て」

 砂嵐の耳障りな音の中に、人の声が混じったように聞こえた空良は、テレビの画面を覗き込む。

(人の声? 何を言ってるんだ?)

 そう思いながら、耳をすます。

「いき……げて……きけん」

 砂嵐のノイズに阻まれ、上手く聞き取ることは出来なかったが、確実に"きけん"という言葉は聞き取れた。
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