ラビリンス~悪意の迷宮~

緑ノ革

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目覚め

目覚め2

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 シトリーのような人間でもない存在が喋る事が非現実的に感じた空良は、ゆっくりとシトリーのいる台座に近付く。

(これは……ホログラムなのか? 誰かが別室で声をあててるのかも……だとすると、これはテレビの番組? でも、俺がテレビに出るなんてあり得ない……だとすると、これは、夢? 夢だからコイツは俺の名前を知っているのか?)

 空良が沈黙したまま、シトリーを見ていると、シトリーはぽわぽわと淡い光を放つ。

「空良くん、これはテレビではないし夢でもないよ」

 シトリーに言われ、心を読んだのかと思い、空良は身構えた。
 その行動を確認したシトリーがきゃはは、と笑い声を上げる。

「じゃあ、ここは一体?」

 身構えたまま、そう問い掛けた空良の声が震えていた。
 何故自分がこんな場所にいるのかと、軽く混乱する。

「……俺は自分の部屋にいたんだ、いつも通りベッドで寝ていたはずなのに」

 そう言った空良の手に力が入り、手が震えた。
 いつも通りに寝て、いつも通りに目を覚ますハズだというのに、こんな場所で目を覚ました事に、不安を感じる。

「ここは月の迷宮だよ、君は神様に選ばれたんだ」

 明るい声でシトリーが言うと、空良はシトリーの事を震える瞳で見た。

「神様? 何を言ってるんだ? 迷宮って?」

 わけがわからない。

 そう言いたげに空良がシトリーに聞くと、シトリーはまたくるんと回る。

「君は生きてこの迷宮から出るんだよ、そうしたら君は元の世界に戻れるんだ」

 シトリーに言われた空良の頭はますます混乱した。

"生きてこの迷宮から出る"という事は"生きて出られない"可能性もあるということではないかと、空良は思い、唇を震わせる。

「なんだよ、それ」

 空良が呟くと、シトリーはまた笑い声を上げた。

「頑張って、空良くん、さぁ、ゲームの始まりだ」

 シトリーはそう言うと、その姿を消してしまう。

「え? シトリー?!」

 空良は消えてしまったシトリーを呼ぶが、返事は無い。
 代わりに台座の中心から赤い液体が溢れ出て、液体が床に落ちる。
 そして床に溜まった液体がパシャっと音を立てて揺れた。
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