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第一章
Episode 33
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「皆今まで通り!援護!」
「ッ!了解だ!おらお前ら!足動かせ!!」
とりあえず、というよりは出来る限り。
現状攻撃行動をとっていないものの、直前の台詞を考えるにスーちゃん……赤頭巾を【憑依】させている私へと向かってくることは想像に難くない。
それに加え、先程のサーちゃんの攻撃に対する反応を見るに……真正面から戦ったとしても勝ち目はないだろう。
不意打ちであれなのだ。数で圧せたとしても、それが何秒続くか分からない。
それならば結局やることは1つ。
第一形態と言うべき、1本目のHPゲージを削った時と同じように、私達が逃げながら周りに援護してもらう形の方がいいだろう。
しかしながら、懸念も存在する。
今までのスキル……ヘイトが向いている相手からのダメージしか受け付けない、又はそれ以外の相手からのダメージ軽減という、1対1に特化しているスキルが今の形態でも発動しているのか否かという点だ。
第一、第二に変化した際、そのスキルの効果は薄れていったものの、姿以外に名前も変わった現状でそれが働いていないという考えは希望的観測に過ぎない。
それがあると考えて行動した方がまだマシだ。
そして問題も当然ながら存在する。
それが、
((ふふ……ふふふ……あの時のッ!私の無念をッ!!))
そう、周囲に浮いた【その脅威は這い寄るように】の刃を次々と撃ち出すように、古ノ狼へと攻撃をしている私に【憑依】した少女の事だ。
話の流れ、そして聞こえてくる声を含めて考えるに……古ノ狼は彼女が死ぬこととなった原因ではあるのだろう。
何の偶然か、とは思うものの。
これを放ったまま戦うのは、主に私の思考が邪魔されてしまうために好ましくない。
私は他メンバーが古ノ狼へと攻撃を加え、それを軽くあしらわれている姿を見ながら少しずつ身体の制御を彼女から取り戻し。
古ノ狼から距離を少しずつ少しずつとっていく。
「おーい、スーちゃん?」
((あはッ!あははッ!!死ね!死ね!死ね!!死ね!!!))
私の声が聞こえていないのか、それとも敢えて無視しているのか。
私の声に反応を示さず、そのまま彼女はスキルを使い攻撃を仕掛け続けている。
ゲーム的に言うならば、『スーちゃん は 錯乱している!』というのが正しいのだろうか。
「……スーちゃーん?おーい?聞いてるかーい?」
((チッ、見えてもない癖に……これならッ!!))
「聞こえてないねぇコレ。……仕方ないか」
私は危険なことを承知で、一度【憑依】を解除した。
厳しい話をすれば、話の出来ない駒など不利益をもたらすだけで切り捨てた方が得になることの方が多いからだ。
それ以外にも理由はもちろんあるのだが。
兎にも角にも、この場で勝つためには身体の制御を奪われる可能性があるスーちゃんのままでは共倒れしてしまう可能性の方が高い。
情などの話をしている場合ではなく、勝つための動きをするための行動だ。
というか、こちらは己の尊厳を保つ事を諦めて戦っているのだ。これで勝てなければやってられない。
『おぉ!オォ!その姿、確かに!あの時の少女よ!』
『ハハハハ、ハ……は?マスターさん?』
突然【憑依】を解除した私の事を、凄まじい顔をしてみてくるスキニットの姿に少し笑いつつ。
私はスーちゃんから離れるように後方へと飛び退いた。
次の瞬間、スーちゃんのいる場所へと古ノ狼がスキニット達を振り払って接近し始める。
予想通り。
そう少しだけ笑いつつ、うちのパーティの武闘派……アーちゃんへと走って近づきその手を握った。
瞬間、アーちゃん自身もやることは分かっていたのか光の粒子と変わり私の中へと吸い込まれていく。
全体的に軽装に、とにかく動きやすさを重視した姿に。
年齢的にホットパンツはどうかと思ったものの、上がワイシャツという思った以上にラフな格好であるため、まぁ気にしても仕方ないだろう。
所々、何かの植物の蔦のような物がその上から巻き付き、私の身体の動きの補助をしてくれている。
そして彼女と言ったら銃。
私の手に、こちらも蔦のような意匠が施されたマスケット銃が出現した。
最後に頭の上から赤色の頭巾が被せられ、【憑依】が完了した旨を伝えるログが流れた。
<【憑依】が完了しました>
<【憑依】中、『赤ずきん』の所持スキルが使用可能となります>
<【森の中の歩き方】、【女子供を嘗めるな】、【乱冒狼責】が一時スキルに追加されました>
何やら気になるスキルもあるものの。
私が使いたかったのは、以前の探索で効果を発揮していた【女子供を嘗めるな】である。
一応、人の形をしているとは言え古ノ狼はその名の通り狼だ。
つまりは、狼に対し効果を発揮するパッシブ系のこのスキルを万全に使う事が出来る。
攻撃行動も、回避行動も、囮も何もかも。
他の者より一瞬ではあるものの、早く行動することが出来る。
戦闘中の一瞬は、平常時の一瞬以上の価値がある。
それが分かっているからこそ、今になってアーちゃんと【憑依】したのだ。
……本当は、戦闘開始時からやっておきたかったのだが。
「ッ!了解だ!おらお前ら!足動かせ!!」
とりあえず、というよりは出来る限り。
現状攻撃行動をとっていないものの、直前の台詞を考えるにスーちゃん……赤頭巾を【憑依】させている私へと向かってくることは想像に難くない。
それに加え、先程のサーちゃんの攻撃に対する反応を見るに……真正面から戦ったとしても勝ち目はないだろう。
不意打ちであれなのだ。数で圧せたとしても、それが何秒続くか分からない。
それならば結局やることは1つ。
第一形態と言うべき、1本目のHPゲージを削った時と同じように、私達が逃げながら周りに援護してもらう形の方がいいだろう。
しかしながら、懸念も存在する。
今までのスキル……ヘイトが向いている相手からのダメージしか受け付けない、又はそれ以外の相手からのダメージ軽減という、1対1に特化しているスキルが今の形態でも発動しているのか否かという点だ。
第一、第二に変化した際、そのスキルの効果は薄れていったものの、姿以外に名前も変わった現状でそれが働いていないという考えは希望的観測に過ぎない。
それがあると考えて行動した方がまだマシだ。
そして問題も当然ながら存在する。
それが、
((ふふ……ふふふ……あの時のッ!私の無念をッ!!))
そう、周囲に浮いた【その脅威は這い寄るように】の刃を次々と撃ち出すように、古ノ狼へと攻撃をしている私に【憑依】した少女の事だ。
話の流れ、そして聞こえてくる声を含めて考えるに……古ノ狼は彼女が死ぬこととなった原因ではあるのだろう。
何の偶然か、とは思うものの。
これを放ったまま戦うのは、主に私の思考が邪魔されてしまうために好ましくない。
私は他メンバーが古ノ狼へと攻撃を加え、それを軽くあしらわれている姿を見ながら少しずつ身体の制御を彼女から取り戻し。
古ノ狼から距離を少しずつ少しずつとっていく。
「おーい、スーちゃん?」
((あはッ!あははッ!!死ね!死ね!死ね!!死ね!!!))
私の声が聞こえていないのか、それとも敢えて無視しているのか。
私の声に反応を示さず、そのまま彼女はスキルを使い攻撃を仕掛け続けている。
ゲーム的に言うならば、『スーちゃん は 錯乱している!』というのが正しいのだろうか。
「……スーちゃーん?おーい?聞いてるかーい?」
((チッ、見えてもない癖に……これならッ!!))
「聞こえてないねぇコレ。……仕方ないか」
私は危険なことを承知で、一度【憑依】を解除した。
厳しい話をすれば、話の出来ない駒など不利益をもたらすだけで切り捨てた方が得になることの方が多いからだ。
それ以外にも理由はもちろんあるのだが。
兎にも角にも、この場で勝つためには身体の制御を奪われる可能性があるスーちゃんのままでは共倒れしてしまう可能性の方が高い。
情などの話をしている場合ではなく、勝つための動きをするための行動だ。
というか、こちらは己の尊厳を保つ事を諦めて戦っているのだ。これで勝てなければやってられない。
『おぉ!オォ!その姿、確かに!あの時の少女よ!』
『ハハハハ、ハ……は?マスターさん?』
突然【憑依】を解除した私の事を、凄まじい顔をしてみてくるスキニットの姿に少し笑いつつ。
私はスーちゃんから離れるように後方へと飛び退いた。
次の瞬間、スーちゃんのいる場所へと古ノ狼がスキニット達を振り払って接近し始める。
予想通り。
そう少しだけ笑いつつ、うちのパーティの武闘派……アーちゃんへと走って近づきその手を握った。
瞬間、アーちゃん自身もやることは分かっていたのか光の粒子と変わり私の中へと吸い込まれていく。
全体的に軽装に、とにかく動きやすさを重視した姿に。
年齢的にホットパンツはどうかと思ったものの、上がワイシャツという思った以上にラフな格好であるため、まぁ気にしても仕方ないだろう。
所々、何かの植物の蔦のような物がその上から巻き付き、私の身体の動きの補助をしてくれている。
そして彼女と言ったら銃。
私の手に、こちらも蔦のような意匠が施されたマスケット銃が出現した。
最後に頭の上から赤色の頭巾が被せられ、【憑依】が完了した旨を伝えるログが流れた。
<【憑依】が完了しました>
<【憑依】中、『赤ずきん』の所持スキルが使用可能となります>
<【森の中の歩き方】、【女子供を嘗めるな】、【乱冒狼責】が一時スキルに追加されました>
何やら気になるスキルもあるものの。
私が使いたかったのは、以前の探索で効果を発揮していた【女子供を嘗めるな】である。
一応、人の形をしているとは言え古ノ狼はその名の通り狼だ。
つまりは、狼に対し効果を発揮するパッシブ系のこのスキルを万全に使う事が出来る。
攻撃行動も、回避行動も、囮も何もかも。
他の者より一瞬ではあるものの、早く行動することが出来る。
戦闘中の一瞬は、平常時の一瞬以上の価値がある。
それが分かっているからこそ、今になってアーちゃんと【憑依】したのだ。
……本当は、戦闘開始時からやっておきたかったのだが。
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