上 下
12 / 45
第一章

Episode 11

しおりを挟む

「まぁ今は使えないスキルだから。とりあえず使えるようになるまでは、予定通りにサポートとか採取とかメインかな!」
『そうなるわね。あ、一度人狼と戦ってみる?』
「……いや、戦えない事はないんだろうけど、武器とかどうするんだい?流石に私も獣相手に素手は無理だって知ってるぜ?」

相手はこちらを殺しに来ている獣。
対して、私はこの世界では言ってしまえば、少し特殊な力を持っているただの人間に過ぎない。
このどうしようもない力の差を埋める場合、どうしても必要になってくるのは武器か策だ。

『大丈夫よ、武器なら【憑依】の影響でサーのが使えるようになってるはずだし……使い方もある程度分かるようにはなってるんじゃないかしら』
「そうなの?サーちゃん」
((確かに、私の武器を取り出してくれれば出来るはず……?いざとなったら私がアシストするし))
「おーけぃ。じゃあ取り出してみよう……ってどこから取り出すんだろう。アーちゃんと同じくここかな」

木で編まれたバスケットの中に手を入れてみる。
すると、見た目以上に底が深く、何か水の中にでも手を入れているような感覚を私の手に伝えてきた。

「これは……所謂アイテムボックスみたいなもの?」
『あー、そういえば説明してなかったわね。そうよ。それぞれのモチーフとなっている収納系の小物。それが基本的にアイテムボックスと同じ役割を持っているの。そこに手を入れた状態で何が欲しいと念じれば……』

目の前で実演してくれるアーちゃんは、バスケットに突っ込んだ手を引き抜く。
すると、その手に持っていたのは、まだまだ新鮮そうな活きた魚だった。

『こうやって、取りたいものを取れるってわけ。マスターのはどうか分からないけれど、私達のアイテムボックスは時間による劣化とかそういうのもないから、もし気になるアイテムとかあったら気軽に呼びなさい』
「了解。……よし、じゃあ取り出してみるか」

突っ込んでいる手をそのままに、頭の中でただ漠然と武器が欲しいとだけ考えてみる。
どんな形状か、どんな種類か。全く知らないものの、何かが手に吸い付いてくる感覚があり。
それを引き上げるようにして、腕を持ち上げた。

「これは……」
『『うわぁ……』』
((……))

――出てきたのは、モーニングスターだった。
何処か赤黒い色をした模様のようなものが付いている、そんな棘のついた鉄球。
確かにダメージも、それこそ攻撃範囲も中々だろう。
しかし、これがここに入っているということはサーちゃんが使っていたということなのだろう。
童女にしか見えない彼女が、使っていた武器。

「……えっと。そうだね、うん。確かに武器が出てきた」
『慣れれば素早い相手にも十分使えるでしょうしいいんじゃないでしょうか』
『確かにね。慣れたら確かに良い武器だわ。えぇ』
((別にいいじゃん……強いじゃんモーニングスター……))

声は私にしか聞こえていないため、他の2人が反応することはない。
そんなに言いたいことがあるならば一度【憑依】を解けばいいと思うのだが……彼女はそれに気が付いているのだろうか。

「とりあえずコレを使っていこうか。……ちなみに、アーちゃんは分かるけど、スーちゃんの武器って何なの?」
『私ですか?これですね』
「あ、短剣なんだ。アーちゃんと同じように遠距離系の武器かと思ってたんだけど」
『私の能力的に、こっちの方がやりやすいんですよ。相手の位置とかも正確にわかりますしね』
「成程ね」

確かに彼女の索敵能力を考えれば、それでもいいのだろう。
もしかしたら隠密……姿を隠す能力にも長けているのかもしれない。アサシンタイプと考えてもよさそうだ。

『私に聞かないのは何でよ』
「いや、聞かなくても基本的に出てくるの銃火器でしょ?」
『失礼な、パイルバンカーだって出てくるわよ』
「使わないから大丈夫」

ある程度、そんな感じのやり取りをしながらもアーちゃんは何処かへと向けて今も銃を撃っている。
今こうして雑談していられるのも彼女が安全を確保してくれているためであるため、いつかは使ってあげようとは思っているものの。
今後しばらくは使わないだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?

水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

鋼月の軌跡

チョコレ
SF
月が目覚め、地球が揺れる─廃機で挑む熱狂のロボットバトル! 未知の鉱物ルナリウムがもたらした月面開発とムーンギアバトル。廃棄された機体を修復した少年が、謎の少女ルナと出会い、世界を揺るがす戦いへと挑む近未来SFロボットアクション!

特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第三部 『暗黒大陸』

橋本 直
SF
遼州司法局も法術特捜の発足とともに実働部隊、機動隊、法術特捜の三部体制が確立することとなった。 それまで東和陸軍教導隊を兼務していた小さな隊長、クバルカ・ラン中佐が実働部隊副隊長として本異動になることが決まった。 彼女の本拠地である東和陸軍教導隊を訪ねた神前誠に法術兵器の実験に任務が課せられた。それは広域にわたり兵士の意識を奪ってしまうという新しい発想の非破壊兵器だった。 実験は成功するがチャージの時間等、運用の難しい兵器と判明する。 一方実働部隊部隊長嵯峨惟基は自分が領邦領主を務めている貴族制国家甲武国へ飛んだ。そこでは彼の両方を西園寺かなめの妹、日野かえでに継がせることに関する会議が行われる予定だった。 一方、南の『魔窟』と呼ばれる大陸ベルルカンの大国、バルキスタンにて総選挙が予定されており、実働部隊も支援部隊を派遣していた。だが選挙に不満を持つ政府軍、反政府軍の駆け引きが続いていた。 嵯峨は万が一の両軍衝突の際アメリカの介入を要請しようとする兄である西園寺義基のシンパである甲武軍部穏健派を牽制しつつ貴族の群れる会議へと向かった。 そしてそんな中、バルキスタンで反政府軍が機動兵器を手に入れ政府軍との全面衝突が発生する。 誠は試験が済んだばかりの非破壊兵器を手に戦線の拡大を防ぐべく出撃するのだった。

オワコン・ゲームに復活を! 仕事首になって友人のゲーム会社に誘われた俺。あらゆる手段でゲームを盛り上げます。

栗鼠
SF
時は、VRゲームが大流行の22世紀! 無能と言われてクビにされた、ゲーム開発者・坂本翔平の元に、『爆死したゲームを助けてほしい』と、大学時代の友人・三国幸太郎から電話がかかる。こうして始まった、オワコン・ゲーム『ファンタジア・エルドーン』の再ブレイク作戦! 企画・交渉・開発・営業・運営に、正当防衛、カウンター・ハッキング、敵対勢力の排除など! 裏仕事まで出来る坂本翔平のお陰で、ゲームは大いに盛り上がっていき! ユーザーと世界も、変わっていくのであった!! *小説家になろう、カクヨムにも、投稿しています。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

処理中です...