赤ずきんは童話の世界で今日も征く

柿の種

文字の大きさ
上 下
9 / 45
第一章

Episode 8

しおりを挟む

2日目。
私はいつも通りに家事を終わらせた後にログインした。

ログイン位置は昨日サーちゃんと話していた公園のベンチ。
今日も今日とてルプス森林にて採取や戦闘を行うつもりだ。
そして出来るのなら、アーちゃんから戦闘について教わろうかと思っている。

昨日と同じ道を辿り、森林の方へと向かっていく途中。
出店を出しているプレイヤー達を見かけることが出来た。
そこに出されているアイテムを横目でみていると、大体が薬草や何かくすんだ緑色をしているポーション等、初期ならではのモノばかりが並んでいた。

……うん、やっぱりまだプレイヤーから物を買うレベルじゃないみたいだね。
プレイヤーと繋がりを作る、という意味では今のうちから気になった人と交流しておくべきなのだろうが……まぁ、それは後でもいいだろう。
私は何処か足早に、その場から離れ森へと急いだ。

<ルプス森林 浅層>

「【喚起サモン全契約オール】」

森に入った瞬間、契約の書を開き赤ずきん3人を呼び出す。
流石に昨日の今日でサーちゃんだけを呼ばない、というのは喧嘩を売ってるようにしか思われない。
呼んですぐ、こちらへと抱き着いてくるサーちゃんの頭をなでつつ、アーちゃんへと話しかける。

「アーちゃん」
『何?一応敵なら近くにいないわ』
「そう?ありがとう。……まぁ聞きたいのはそうじゃなくて。昨日最後の方で何かスーちゃんと話してたじゃないか。アレについて歩きながら聞こうかなって」
『あー……あれね。いいわよ』

そう言って、今日は私とアーちゃんが前に、その後ろにサーちゃんとスーちゃんがついてくる形となった。
今回も、目指すは出来る限りの奥だ。
出来れば深層か中層という表記くらいは見ておきたい。

『で、まぁ。そうね、昨日話していたことだけれど』
「うん、なんか【契約】的にアウトなんじゃないかって話してたねぇ」
『実際それに近いから。……と、色々話す前に私達の事について改めておさらいしておいた方がいいかしらね』

そう言いながら、アーちゃんは猟銃をどこかへと向けつつ話す。
恐らくはそちらの方向に人狼か何かがいるのだろう。

『いい?私達……ここにいる3人の赤ずきん以外の、【契約】を結べる人物たち。貴女から見て私達はどういう存在かしら?』
「どういう存在……それはAIとかそういうのじゃなく?」
『そうね、メタ的な所ではなく』
「……それこそ、この世界の中に実際に存在している登場人物NPCだとは思ってるかな」

アーちゃんは私の回答を聞いて静かに『なるほど』と呟いた後に、銃の引き金を引いた。

<レッサーウェアウルフが討伐されました>

ログが流れたものの、今はそれを気にする必要はないだろう。

『まぁ、間違ってないわ。そうね、間違ってない。でも正解ではないわ』
「あは、じゃあ君らはなんなんだい?」
『……私達は、過去の亡霊。ここに限らず、世界各地に存在する領域の戦いに参戦し、その最中命を落とした者たちの霊』
『まぁ、つまりは私達もう死んでるんですよね』
『ちょっとスー』
『いや、アーちゃん突然回りくどい言い方するんですもの。こういうのは簡潔に、ですよ』

何やらアーちゃんとスーちゃんが言い合っているが、それはいいとして。
彼女たちが霊。幽霊。
あの実際には触れることが出来ない、ぬくもりすら感じることが出来ない者たちだというのだろうか。

「幽霊、って割には昨日から普通に触れるよね?それはどうなん?」
『それは簡単、【契約】のおかげですね。触ったりできないと守るときに色々と面倒でしょう?』
「あぁ、確かに。……で、それがどう繋がってくるんだい?」
『幽霊といえば、みたいなものがあるでしょう。アレよアレ』

幽霊といえば。
例えば、恨み辛みによって生者を恨んでいたり。
知識不足感が否めないが、私の中の幽霊のイメージはそんな程度しかない。

「私が持ってるイメージだと、恨み辛みくらいしかないのだけど」
『割と平凡ね。……ほら、憑依』
「あぁ、そういえば幽霊と言えばそれがあるね。……あ、もしかしてそういうこと?憑依できるのかい?君たち」
『そういうことよ。対象は色々制限はあるものの、基本的にマスターには出来るわ』

一気にゲームのジャンルが変わってきたなとそう思いつつ。
気になったことを聞いてみる。

「昨日の話的には、残ってた子……サーちゃんとそれをやるって話だったよね?」
『えっ』
『そうね、スーでもいいのだけどサーの方が色々出来るから』
『えっえっ』

話を事前に聞いていなかったのか、サーちゃんが驚いているが。
それをスルーしつつ話を進めていく。

「成程ね。じゃあやってみようぜ。適当に来い!っていえば出来る?それともオーバーソ〇ル!とか言った方がいいかい?」
『それはいいわ。サーの身体のどこかに触れて。その後はサー側から干渉するから』
「おーけぃ。サーちゃんおいで!」
『私の意見は無視なんだね2人とも!?』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

続・歴史改変戦記「北のまほろば」

高木一優
SF
この物語は『歴史改変戦記「信長、中国を攻めるってよ」』の続編になります。正編のあらすじは序章で説明されますので、続編から読み始めても問題ありません。 タイム・マシンが実用化された近未来、歴史学者である私の論文が中国政府に採用され歴史改変実験「碧海作戦」が発動される。私の秘書官・戸部典子は歴女の知識を活用して戦国武将たちを支援する。歴史改変により織田信長は中国本土に攻め入り中華帝国を築き上げたのだが、日本国は帝国に飲み込まれて消滅してしまった。信長の中華帝国は殷賑を極め、世界の富を集める経済大国へと成長する。やがて西欧の勢力が帝国を襲い、私と戸部典子は真田信繁と伊達政宗を助けて西欧艦隊の攻撃を退け、ローマ教皇の領土的野心を砕く。平和が訪れたのもつかの間、十七世紀の帝国の北方では再び戦乱が巻き起ころうとしていた。歴史を思考実験するポリティカル歴史改変コメディー。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

ダンジョンの隠し部屋に閉じ込められた下級冒険者はゾンビになって生き返る⁉︎

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 Bランクダンジョンがある町に住む主人公のカナンは、茶色い髪の二十歳の男冒険者だ。地属性の魔法を使い、剣でモンスターと戦う。冒険者になって二年の月日が過ぎたが、階級はA〜Fまである階級の中で、下から二番目のEランクだ。  カナンにはAランク冒険者の姉がいて、姉から貰った剣と冒険者手帳の知識を他の冒険者達に自慢していた。当然、姉の七光りで口だけのカナンは、冒険者達に徐々に嫌われるようになった。そして、一年半をかけて完全孤立状態を完成させた。  それから約半年後のある日、別の町にいる姉から孤児の少女を引き取って欲しいと手紙が送られてきた。その時のカナンはダンジョンにも入らずに、自宅に引きこもっていた。当然、やって来た少女を家から追い出すと決めた。  けれども、やって来た少女に冒険者の才能を見つけると、カナンはダンジョンに行く事を決意した。少女に短剣を持たせると、地下一階から再スタートを始めた。

VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~

オイシイオコメ
SF
 75歳のおじいさん「ひろし」は思いもよらず、人気VRゲームの世界に足を踏み入れた。おすすめされた種族や職業はまったく理解できず「無職」を選び、さらに操作ミスで物理攻撃力に全振りしたおじいさんはVR世界で出会った仲間たちと大冒険を繰り広げる。  この作品は、小説家になろう様とカクヨム様に2021年執筆した「VRおじいちゃん」と「VRおばあちゃん」を統合した作品です。  前作品は同僚や友人の意見も取り入れて書いておりましたが、今回は自分の意向のみで修正させていただいたリニューアル作品です。  (小説中のダッシュ表記につきまして)  作品公開時、一部のスマートフォンで文字化けするとのご報告を頂き、ダッシュ2本のかわりに「ー」を使用しております。

処理中です...