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第6章 雷鳴轟く瘴気の大地にて

Episode 49

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当然、フールフールも殴られ続けているだけではない。
灰被りは兎も角として、私に対して雷撃は効果が薄いとみたのか。
瘴気を剣や槍、時にはただただ細長い触手のように成形しこちらを攻撃してくる……のだが。
幾ら魔術寄りとは言え、実体を持つ攻撃では【血狐】の鎧にその威力の大幅な部分を打ち消されてしまう。
こちらを拘束しようとしてくる瘴気の触手なんて、そもそも私の身体に辿り着く前に血の中で圧縮されてしまい、形を保てずに崩壊していく。

だがそんな状況は長く続かない。
突然フールフールが低く唸り始めたかと思えば、周囲の瘴気が牡鹿の身体へと急速に集まり。そして爆発する。
物理攻撃、一撃の重いダメージなどに対して私は何とか出来る。
しかしながらその時、フールフールから発せられたものはそのどちらでもなかった。

衝撃波。
自身の【衝撃伝達】でそれを喰らうのには慣れているとはいえ、それでも。
その衝撃波は大きく私と灰被りをその場から弾き飛ばした。

「くっ……」
「大丈夫ッ!」

ダメージ自体は問題ない。
そもそも衝撃波にダメージがあった所で【血狐】によって身体HPに影響する形では徹らない。
だが【魔力付与】によるダメージ無効化と同じように、私は運動エネルギーによる移動は防ぐことが出来ない。
灰被りはそういうものにも対策はあるのだろうが……しかしながら。
現状として、彼女は私と同じように弾き飛ばされている。

「大丈夫って……効いてないじゃないですか、貴女の攻撃!」
「……?」

何とか空中で体勢を整えながら受け身を取る。
【血狐】も手伝ってくれている為、そのまま私は立ち上がりフールフールに取らされた距離を再度詰めるべく走り出す。
距離は5メートル程だ。そこまでの距離ではなく、数秒も掛からず辿り着ける事だろう。
しかしながら戦闘中の数秒は長すぎる。
特に避けられるとはいえ、相手は光よりも速い雷を扱う悪魔なのだ。
距離は出来る限り短く。手が触れられる距離程度の方が良いのだから。

「いえ、そもそもとして。私の攻撃は・・・・・ここからですので・・・・・・・・
「は……?」

その声に、私は一瞬だけ振り返ろうとしてしまう。
しかしながら既にフールフールとの距離はほぼゼロに近く、ここで振り返ってしまえば敵に対して背を向けてしまう事になる。
灰被りの言葉の意味は分からない。だが彼女の声は力強く、虚勢で出しているものではないように聞こえた。
なら私はそれを信じるしかない。何せ、私の攻撃手段である【衝撃伝達】は内部にダメージを確実に与えているはずなのだが……フールフールがそれに堪えているいるようには見えないのだから。

……【魔力付与】でもう一回。さっきみたいに避けられないと良いけど……。
それならば攻撃方法を切り替える。
近場に寄ってきた私に対して、フールフールは油断なく。
再度、先ほどと同じように瘴気を使った攻撃を繰り出してくるものの、それ自体はほぼ問題はない。
面倒ではあるがダメージ自体は回復が追いつくレベルなのだから、意識は最低限向ける程度だ。

私は『面狐』を振り上げ、動作行使によって【魔力付与】を纏わせる。
形状は先ほどの盾と違い、まるで短剣を直剣のように扱うために刃渡りを伸ばす形に。

「『我は友の為に剣を振るう』」

瞬間、私の周囲に灰が寄ってきた。
否、寄ってきたのではない。元々そこに在った所へと私が突っ込んだのだ。
灰は空気中に漂いながら集まり形を変える。
最初は長方形に、そして徐々に剣の形へと変わっていった。

「『我の剣を阻む障害を切り裂こう』」

声が響く。
詠唱や奏上のようにその声には魔力が宿っているものの、言霊のように無秩序な込め方ではない。
方向性が決められている。目的に沿って行使されている。
それ・・の行き先は、フールフールの叫び声によって示された。

『き、貴様……ッ!我の外皮を剥ごうと言うのか!?』

水音が聞こえだす。
私の居る方向ではなく、先ほどまで灰被りが居た方向からだ。
そちらへと視線を向けてみれば、そこには紫色の液体がフールフールの足元に水たまりを作り出していた。
それを見た瞬間、深く考えずに私は『脱兎之勢』によって移動する。
傷が出来ているならば、そこに攻撃した方がより深いダメージを与えられるのだから。

「『我の眷属は友の剣を支えよう』」

再度声が聞こえた。
声に込められた魔力は灰を伝い、そして私の持つ『面狐』に、【魔力付与】による膜に纏わりついていく。
半透明だった膜が灰によって色づいて、直剣というよりは大剣と言うべき程に刃幅が広くなっていった。
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