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第5章 記憶残る白霧の先にて
Episode 20
しおりを挟む「だぁあああ!!!本当に面ッ倒な事してくるわねアンタは!」
「いや、【黒死斑の靄】なんて魔術持ってる人には言われたくはないですよ」
約5分後。
突然霧が晴れたので何があったかと思えば、どうやらクロエが霧を解除したようで。
それと共に状態異常が解除された2人が激突。
私の使う【霧の羽を】のようにクロエが指を鳴らした瞬間、靄を上半身に纏って走り出したグリムの足元に何か裂け目のような何かが出現。
それに引っかかったグリムがクロエの前までヘッドスライディングのような形で突っ込んでしまったのだ。
そしてそのまま靄の纏っていない下半身の方をクロエが踏みつけ、試合は終了。今に至る。
「単純にグリムちゃんがクロエちゃんの所有魔術を1つだけだと勘違いしてたのが悪いんじゃないかなぁ」
「うっ……」
「あ、クロエさんこれ。MPポーション」
「ありがとうございます。いいんですか?」
「まぁ私が彼女呼んだのがきっかけですし。回復出来たら防衛クエスト開始しますよー」
私のその言葉に、各面々は驚いたような……それでいて、その内の3人ほどは納得したような表情を浮かべた。
「……任意で開始出来るのかい?」
「一応。色々と手隙にシステムオプションを弄ってたらダンジョン管理メニューなんてものを見つけまして」
分かっていなそうな人の代表としてフィッシュが質問してきたため、ウィンドウを他プレイヤーにも見えるように可視化させた後に説明を開始する。
「いやぁ、いつの間に追加されてたんだって感じのシステムなんですけど、ダンジョン管理メニューってのがオプションの方にありまして」
「あ、それ結構前からありますよ。それこそダンジョンの管理が出来るようになった辺りには既に話題になってたかと」
「……そんな感じのダンジョン管理メニューがありましてですね?」
バトルールからの補足に少しばかり心が抉られたものの。
ウィンドウを操作し、ダンジョン管理……その中でも『NEW』と強調されている『階層情報』という項目を指し示した。
「さっき、うちの馬鹿狐から聞いた話を考えるに多分この項目を操作する事で、色々とダンジョンの階層を弄れそうなんですよねぇ」
「あ、まだ弄ってないの?」
「実はまだ。ちらっと見て、今のこの『惑い霧の森』の状態というか……敵性モブでどんな種類のモノが存在しているかとかは分かったんだけど……その中で、ねぇ?」
『階層情報』、その中の第一階層情報……今私達が居るボスエリアを含めたダンジョン内の情報を閲覧できるウィンドウが別に開き、数々の情報を下へとスクロールしていくと……『階層追加』という項目が出現する。
きちんとその項目の下に『※ダンジョン内にて操作を行うと危険な場合がございます。ボスと相談した上で操作を行ってください』という注意書きがある以上、ほぼほぼこれで確定だろう。
「これは……うちの方の管理メニューにはないですね……」
「うーん、こっちもないなぁ。ちなみにアリアドネはこのダンジョンをどれくらいの時期から持ってるの?」
「えっと……ほぼ初期から?大体開始1週間以内にはあの馬鹿狐を倒してたはずなんで」
「となると時間……ですかね?」
「あり得ますね。VRではありますけど、MMOですから。時間が何かを解放するなんてありきたりで尚且つ実装しやすい内容ですから」
ダンジョンを管理しているらしい灰被りとRTBNは、自身のダンジョンのメニューを開き確認するものの『階層追加』という項目はなかったらしい。
他にも開放されるための要素はあるのかもしれないが……私が2人に対して勝っているものと言ったら時間くらいなため、十中八九合っているだろう。
「ってことで、今からこれをやっていこうと思うんですが、皆さん……というかクロエさんとグリムさん準備大丈夫です?」
「私は大丈夫ですけど……グリムは?」
「大丈夫よ。というか、ほぼほぼ私はMP使ってないし、その気になったらモブさえいれば回収は出来るから」
「成程、じゃあ操作開始しまーす」
私は直前まで決闘をしていた2人に確認を取った後、ウィンドウを操作し始める。
といってもやる事は『階層追加』を指でタップするだけ。
……あ、やっぱりここら辺の確認は表示されるのか。
軽く指でタップすると、きちんと本当にこの操作を行うのかという意思確認のウィンドウが出現した。
それを軽く承認すると、突然……この場の空気が震えた。
ドクン、という何かが鼓動するかのような音と共に、境内内に薄く掛かっている霧がどこかへと……ボスエリアの入り口の方へと流れていく。
それと共に、ボスエリア内にブザー音が鳴り響き……空中にいつぞや出現したあの文字が出現する。
【ウェーブ防衛開始】
【First Wave Start!】
「来ます!」
「【吊り人】、【隠者】、【力】、【戦車】……4種の複合補助結界です。結界内から出ない限りはバフが入り続けるので!」
私の声と共に、バトルールが大アルカナと呼ばれるタロットカードの名を当てはめた魔術を発動させる。
瞬間、ボスエリアを包み込むように薄っすらと白く色付いた結界が出現した。
恐らくは彼が言う複合補助結界とやらなのだろう。
視界の隅に複数……4種のバフが追加されているのを見て、少しばかり微笑む。
久方ぶりの防衛クエスト。それが今、開始された。
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