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第4章 言の葉は蜃気楼を穿つのか

Episode 31

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暫く戦い続けていると、ログに全く素材獲得通知が流れていないことに気が付いた。

……考えても仕方ない、って切り捨てるにはちょっと違和感が強すぎるかなぁ。
どこぞの霧に包まれた森の中で行った防衛戦と似た様相の連続戦闘を繰り返しながら、素材が1つも手に入っていない。
この場合、考えられる理由は2つある。

1つは倒しているように見えて、全くもって倒せていない……つまりは囮や幻覚などを倒している可能性だ。
実体がないのだから素材とならない。
囮なのだから素材としてアイテムを獲得することができるほど存在が強固ではない。
だからこそ、素材が獲得できない……とまぁ現状にマッチしている理由であるとともに、こうであってほしいという願望が入ったもの。

そして2つ目は、単純にこの戦闘自体がイベント処理……特殊な戦闘イベントである可能性。
そのイベントが終わらない限りは素材も経験値も何も得られない処理がされている場合だ。
人狼達は戦闘前に長々と何かを語っていた。
それこそ、この状況に陥ることになった物語のあらすじのようなものを。

……確か言ってたのは……『人狼を探せ』、『占い師と狩人は死んだ』とかだっけ。
人狼ゲームと考えるのであればかなり負けの色が強い状況だ。
しかしながらこれはArseare。そんな敗戦するのが確定しているゲームを態々プレイヤーにやらせるわけがない……と信じている。
単純に考えるのであれば、その人狼ゲームを終わらせるのがこの状況から抜け出す第一歩だろう。

「メウラ!」
「なんだよッ!こっちはこっちで結構厳しいんだからな!?」
「そんなのわかってる!この村の中で、まだ中に人がいる家・・・・・・・・・って探せる!?」
「探せる!探せるが何するつもりだ!?」
「この状況が変わるかもしれないって言ったら?!」
「ッ、上等ッ!!」

私達3人の中で、一番索敵に長けているプレイヤーは実のところグリムではなくメウラだ。
グリムは結局、自身の出現させたゴブリンによって周囲を確認してもらう……という索敵手段を使っているものの、それは結局そのゴブリンさえ潰してしまえば索敵能力がなくなるということ。
私は言わずもがな、霧の中でしか効果を発揮しない索敵能力なんて無いのと同じだ。

そしてメウラ。
彼は私達2人とは違い、広い範囲をカバーできる索敵能力を持っている。
それは、

「【ゴーレマンシー】!!」

既に彼の代名詞と言われるほどに有名となった魔術、【ゴーレマンシー】の存在だ。
メウラの持つ魔術はアイテム加工などに関係する生産系の魔術と、ゴーレムを作り出す【ゴーレマンシー】を起点とする戦闘用、フィールドワーク用の魔術の2種類に分けられる。
その中でも、私も詳細は聞いていないものの……どうやらゴーレムの視界を自身へと送信させることができる魔術……ゴーレムを監視カメラへと変えることができる魔術があるらしいのだ。
だからこそ、彼は索敵という面ではこの場にいる誰よりも長けていて。

「……見つけた、見つけたぞ!中で寝てる・・・奴が1人!」
「それどこ!」
「丁度俺達と反対側に居やがる!流石にそこまで行くには厳しいぞ?!」
「――それだけ聞ければ十分よ」

メウラが方向を示し声を挙げた瞬間、風が吹いた。
黒く、どこか龍のようにも見えるそれは人狼達を飲み込み、そしてさらにその大きさを肥大化させていく。

「さぁ行きなさい。私が行くよりも一気に加速出来るアリアドネが行った方がいいでしょう」
「グリムさん!」

【黒死斑の靄】によって強引に作られた道は、寝ている住人がいるという家まで一直線に……それこそ道中にあったはずの家や向かってきていた人狼達を綺麗さっぱり消し去っていた。
彼女だからこそできる芸当に少しだけ笑いつつ。
彼女の言葉に頷いて、私は足に力を入れた。

「【衝撃伝達】、【脱兎】」

使うは、いつも通りの加速用の魔術。
周囲から迫ってくる人狼達を尻目に、力の入れた足で思いっきり地面を蹴る。
瞬間、私の身体がぐんと前へと運ばれ、周囲の風景も一気に後ろへ流れていく。
前方には扉が閉まり、明かりも灯っていない民家があり。その近くには周囲から身を隠すようにしながらも私へと手招きしているゴーレムの姿があった。
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