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第2章 精鋭達の夢の跡にて
Episode 38
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運営からのアナウンスが闘技場内に響き渡る。
『Gグループの皆さま、お待たせいたしました。……これより、本戦参加者用の控室へと転移します。その後、木村より本戦の仕様に関する説明を行います』
「おっと、ここまでみたいですね」
「そうみたいね。あぁ、良かったらフレンド登録しておきましょう」
「あ、いいですね」
すっかり馴染んだグリムとフレンド登録を行い、私達は別々に転移させられる。
移動した先は何処かの宿の部屋のような、ベッドと木の机、椅子しかない1室だった。
恐らくはここが控室なのだろう。
思い浮かべていた控室とは違ったものの、まぁこれもこれでありだろう。
『あーあーテステス……OK?OKだね?……よし、プレイヤーの皆さん!まずは予選お疲れ様ぁ!負けてしまった人も、勝った人も楽しんでくれているなら幸いだ!さて、次からは所謂本戦、トーナメント方式でのPvPだ!』
部屋の中に突然響き始めた運営の木村の声に少しばかり肩を跳ねさせながら。
同じく突然現れた、何やら画像が映っているウィンドウを眺める。
そこにはどうやらこの後から始まるトーナメントについてを図やイラストによって説明しているものが映されているようだった。
『さぁて、本戦出場者は手元のウィンドウを!観戦者はでっかいウィンドウを見てくれ!まず本戦トーナメントはAグループとBグループの2つに分ける!63人毎だ!各グループの勝者同士が最後に戦い優勝者を決める……という流れになる!』
木村の説明と共に、ウィンドウが切り替わる。
トーナメント表らしきものが2つ載せられており、そのどちらにもシード枠が存在しているようだった。
『図を見てもらえれば分かるとは思うが、シード枠を設けさせてもらった!誰がシード枠に選ばれるかは完全にランダム!トーナメントの組み合わせがAIによって決まるまで運営側も誰がなるか分からないからそのつもりで!』
「……シードがいいなぁ……」
1回戦目を戦わないでいい、というのは対人戦ではかなりの意味を持つ。
なんせ、自分が戦うであろう相手の情報を自分は一方的に知ることが出来るのに対し、大抵の相手はこちらの情報を一切知らないのだから対策云々の話になってくるのだ。
そして私の習得魔術や戦い方的に、一度タネが割れてしまうと比較的対策のしやすい方なのだ。
霧を何とか吹き飛ばせばいいし、それ以外にしたって遠距離から攻撃されていればいずれは削りきられてしまうだろう。
『では、抽選スタートォ!』
木村のその言葉と共に、私の目の前に突然新井式廻轉抽籤器……所謂、ガラガラ抽選機が出現し、独りでに回りだす。
そして口から出てきたのは『51A』という数字とアルファベットが書かれた白色の球だった。
……あー、これもしかしなくてもシードじゃないな?
ここに書かれているものだけでも察する事は簡単だ。
A、というのはどちらのグループトーナメントに参加するか。
その中でも私は51番目に配置された、ということだろう。
ぼぅっと見ていると、ウィンドウに表示されたトーナメント表に名前が続々と埋まっていくのが見えた。
その中には私の名前も存在し、予想通りAグループの右側の方に配置されていた。
知り合いの名前はグリム以外にあるか?と思い探してみると、意外とすぐ近くに見慣れた名前があることに気が付いた。
というか、私の対戦相手は知り合いだった。
「メウラじゃーん……えぇ、マジ?一回戦目から私の事知ってる相手と戦うとか確率どんなもんよ」
ゴーレムを操り、それをコストに破壊力抜群な攻撃魔術を行使する生産組。
私の装備を手掛けたプレイヤーであり、私がこのゲーム内で一番長く行動を共にしているプレイヤーでもある。
つまりは、お互いにお互いの手の内がバレている状態での戦闘になるわけだ。
だが、私はメウラにも教えていない魔術言語という今現在は小手先の技にしかならない変化があるし、メウラも私に見せていない何かくらいは持っているだろう。
つまり、この一回戦はそれらを相手により効果的にぶつけられたほうの勝ちとなる。
……ちょっと試そうかと思ってたのを試すしかないかなぁ……。
『よし、全て出揃ったな?ではこれより!本戦トーナメント第一回戦目を開始する!観戦者側は手元のウィンドウで好きな試合を検索して見れるから、各自好きなように過ごしてもらって構わない!では、転移開始!』
木村の言葉と共に、再度私の視界が切り替わる。
宿の部屋から一変、予選の時に散々駆け回った闘技場を2人用に小さく狭く作り替えたフィールドへと転移させれた。
軽く周囲を見渡していると、すぐ近くに男性が転移してきた。
「はろはろー、いやぁこういう偶然もあるんだね」
「……こっちは自分の運のなさに泣きそうだよ」
「いやいや、少なくとも本戦に上がってきてるんだから運も実力もあるでしょうに。……まぁ、楽しんでやろう」
「あぁ。そっちは油断してたら負けるかもしれねぇから気をつけろ?」
「ははっ、誰にモノ言ってるのかなぁ?」
男性に……メウラに対しいつもの世間話のように話しかけ、お互いに距離を取っていく。
大体10メートルくらいの間隔をとった瞬間、空中に『戦闘開始まで』という文字と30から始まるカウントダウンタイマーが出現した。
静かに、私は『熊手』と煙管を。
メウラはトンカチを2つ、両手に取り出し。
『START!』
空中に試合開始を告げる文字と共に響き渡ったブザーと共に、私達は動き出した。
本戦第一回戦の開始だ。
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