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第1章 霧狐の神社にて
Episode 34
しおりを挟むウェーブ防衛が終わった次の日。
ログインし、他の面々が集合するまで適当に改修作業用の素材を集めた後、皆でボスエリアへと移動した。
改修作業自体は、何かを作ろうとしない限りは素材をボスエリアへと置くだけで独りでに光の粒子へと変換されて進んでいくため非常に楽だ。
ウェーブ防衛が終わり、何かに邪魔されることもなく。元々露店を開いていて在庫として素材を何個か持っていたメウラもいた事もあって、そこまで時間も掛からずに改修作業は進んでいった。
私も私で特に何もしていなかったわけではなく、主に素材を集める側としてフィールドを走り回っていた。
特に『惑い霧の森』のモブの素材なんかを集める時、私の持つ『白霧の狐面』が非常に便利なのだから当然だろう。
「アリアドネちゃん、進捗どうだい?」
「えーっと……あぁ、あと5%です。多分これ持っていけば終わるかと」
「おっけーい。じゃあすぐに狩っちゃおう」
一応、何かあったら大変だろうということでフィッシュと共に行動しながら適当にモブを狩っている。
いつも通り出現するミストイーグルとミストベアーに加え、今ではウェーブ防衛をこなしたからかミストウルフやミストラットなんかもある程度普通に出現するようになっているこのダンジョンは、攻略する前と現在では難度が大きく変わってしまっている。
中でも、私達の目の前でこちらを威嚇してきているミストシャークが難度を大きく変える原因になってしまっているのは否めない。
といっても、何度か既に倒している私達にとってはそこまで辛い相手でもなく。
すぐさま急所を突き刺し一気にその白い胴体を切り裂き、光の粒子へと変換した。
素材が複数インベントリへと追加されたのを通知で確認しつつ、私達はお互いに頷いてボスエリアへと移動を始めた。
「ただいまーっと、またソレ作ってるの?」
「おう、アリアドネ達か。防衛用のゴーレムとしては優秀だからな」
徐々に綺麗になっていっている神社の境内へと戻ってきた私達2人が見たのは、石で出来た巨大なゴーレムだった。
初見ではなく、私の事を白蛇の尾から救ってくれたもので……詳細自体は製作者であるメウラと設計者であるバトルールの2人から聞いていた。
と言っても、正直そこまで興味は湧かなかったためあまり覚えていないのだが。
覚えているのは、ロケットパンチのように腕からバトルールの【攻撃3番】による砲撃が行えるという事。
次いで、今まで作ってきたゴーレム達よりも頑丈で、試してみた所ミストベアーの攻撃ならば正面から喰らったとしても数回はしっかり耐えられる程度には耐久力が上がっているという事。
この2つの点が今までのゴーレム式移動放題との違い、らしい。
「今持ってきたので改修作業は終わりみたいだよ」
「本当ですか?お疲れ様ですアリアドネさん」
「いえ、手伝っていただきありがとうございました。お2人が居なかったらもっと時間が掛かっていたと思うし、防衛自体まだやっていたと思うので」
「あは、困ったときはお互い様ってね。よし、回収作業終わらせちゃおうぜ」
フィッシュの言葉に頷きながら、私はインベントリ内からミストシャークの素材を石畳の上に出現させる。
すると少しずつ少しずつ光の粒子へと変わっていき、神社の方へと吸いまれていき一度大きく光る。
【ボスクエストの進捗が100%となりました】
【イベントを開始します】
そんな通知が流れたと同時、神社内に発生していた霧が1つに集まっていく。
私にとっては3度、他のメンバーにとっては2度目となるそれは、予想通りそのまま大きな白狐の形となった。
『……まずは、回収作業ご苦労と礼を言おう』
私達の目の前に現れた『白霧の森狐』は頭を下げた。
そしてそのまま、白狐は頭を神社の方へと向け口を開いた。
それと共に身体から白い霧を発生させながら、それらを神社の方へと移動させてるのが『白霧の狐面』を持っているからか感覚的に分かる。
白狐が発生させた霧はいつの間にか賽銭箱の上あたりに集まっていき、最終的に球体とそこから伸びる紐のような何かの形を象った。
遠目から見ると、それは参拝した時に鳴らす鈴と、その鈴緒のように見える。
「あれは?」
『仕上げだ。流石に最後まで全て獣人の仔らに任せるわけにはいくまいよ』
「防衛は任せたのに?」
『……狐の女子はいつも一言多いな』
そんなことを言いながら、霧を操作しているらしき白狐の横に立ち、『白霧の狐面』に触れる。
白狐の何をしようとしているのか分からないが、とりあえずそれが必要なのだろうと、私は白狐の行っている操作を上から補強するように操作した。
それを感じてか、白狐は霧の操作を私に任せ。そのまま身体から光を発生させる。
白色でありながら、優しい光を放ちつつ。白狐はこちらへと顔を向ける。
表情は読み取れない。
当然だろう、私は狐の表情を読み取れるほど狐にたいして造形が深いわけではない。
しかしながらその瞳からは感謝の意が伝わってきていた。
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