Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

文字の大きさ
上 下
192 / 192
第五章 月を壊したかぐや姫

Epilogue

しおりを挟む
犯罪の祭典 epilogue

■鷲谷 香蓮

「っていう感じで、こっちもこっちで色々大変だったのよ」
『……それを、アカウント特定されて尚且つ通話に強制参加させられてる私に言う……?』
「あら、当事者じゃない。色々知りたいこともあるでしょう?」

イベントの翌日。
私は珍しく夜だというのにゲームにインせずに現実である人物と通話をしていた。

『はぁ……まぁ、いいわ。とりあえず、今後そっちにお邪魔するかもしれないから、その時はよろしく』
「……ん?さっき聞いたけれど、貴女の【赫奕姫】のデメリットじゃ問題しか起こらないわよね?」
『それをどうにかするのがまとめ役の役目でしょう?』
「無茶ぶりねぇ。まぁ、来る1時間前くらいにゲーム内でもこっちでもいいから連絡をくれればデンスの掲示板には書いておいてあげるわ。あぁ、丁度いいからその時リベンジさせてもらってもいいかしら?」
『……面倒なのだけど』
「悪いものに目を付けられたと思って諦めなさいな」
『……自分の事を悪いものって言うのね』

そう、通話の相手は私達……というか、私を主に苦しめてくれたディエスのぼっち姫こと、アリアドネだ。
ちなみに、彼女の通話用のアカウントについては知り合いである木蓮から教えてもらったため、法を犯すようなことは何もしていない。まぁ本人に承諾を貰っていないため、マナー的な所を言われると痛いのだが。

私はマグカップに淹れたインスタントの紅茶を飲みながら。
彼女と共に今後の話を続けていく。

『というか、木蓮さんと知り合いだったのね貴女』
「んー……アレは偶然みたいなものよ。向こうは普段使ってるネームやアバターじゃなかったから私ももう1人の身内赤ずきんも気が付かなかったし」
『ふぅん……ちなみに彼って他だと何て名前でやってるの?これくらいは教えなさいよ。こっちはアカウント知られてるんだからいいでしょう?』
「えぇっと、動画とかもあるけど調べない方がいいわよ?多分イメージ崩れるから。『ガビーロール』って名前なのだけど」
『ガビーロール……へぇ、WAOの動画がヒットしたわね……』

……ノータイムで検索かけてるわこの娘。
ガビーロールに、と言うよりは木蓮に対して心の中で手を合わせておくことにした。
恐らく彼も彼であの世界では木蓮のようなロールプレイを心掛けているだろうから。

「あぁ、そうそう。公式サイトみたかしら」
『一応ね。次回のアップデートとかの話?』
「そうね。今まではダンジョンの最前線がクリアされると解放だったのが、今後は他のゲームと同様に時間を置くらしいのよ」
『……そりゃ、どっかの誰かがアレだけハイペースで攻略してた今までがおかしいのよ。普通に難度高いのよ?FiC』
「ほら、うちには脳筋アタッカーとかいるから」
『……それで納得できちゃった自分に頭が痛いわ……』

何やら現実に絶望しているような声が聞こえるが気にしない。
ともあれ、今後はゆっくり焦らずに攻略に集中できそうなのだ。
この機会に色々と試したいものもあるし、レベル上げをしておきたいというのもある。
CNVLを見ていればレベルを上げるという行為が大切なのが本当によくわかるからだ。

「まぁお互い頑張りましょうってことで」
『えっ、もしかしてこれで終わり?私貴女達デンスのイベント中の動き程度しか聞いてないんだけど?』
「えぇ、終わりよ。まぁ今後ゲーム内とかでも交流は増えるでしょうし……」

一息。

「後輩的な子には、優しくしないと。そうでしょう?」
『……そんな相手に、この後ゲーム内で決闘挑もうとしてるのについては?』
「?そんなにおかしいことかしら?」
『この決闘厨が……。はぁ、いいわ。じゃあ先に行って待ってるから。中央ね』

ブチッと通話が切られ、私の部屋には静寂が訪れた。
苦笑いを浮かべながらも、遅れたら遅れたでまたとやかく言われるのだろうと急いでFiCへログインする準備を進め、VR機器を起動した。

瞬間、私の意識は現実から仮想空間へと旅立っていく。
スゥと身体から何かが抜けていくような感覚は、何度やっても慣れなかったものだが……今では、もう私の生活の一部とかしていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

セルリアン

吉谷新次
SF
 銀河連邦軍の上官と拗れたことをキッカケに銀河連邦から離れて、 賞金稼ぎをすることとなったセルリアン・リップルは、 希少な資源を手に入れることに成功する。  しかし、突如として現れたカッツィ団という 魔界から独立を試みる団体によって襲撃を受け、資源の強奪をされたうえ、 賞金稼ぎの相棒を暗殺されてしまう。  人界の銀河連邦と魔界が一触即発となっている時代。 各星団から独立を試みる団体が増える傾向にあり、 無所属の団体や個人が無法地帯で衝突する事件も多発し始めていた。  リップルは強靭な身体と念力を持ち合わせていたため、 生きたままカッツィ団のゴミと一緒に魔界の惑星に捨てられてしまう。 その惑星で出会ったランスという見習い魔術師の少女に助けられ、 次第に会話が弾み、意気投合する。  だが、またしても、 カッツィ団の襲撃とランスの誘拐を目の当たりにしてしまう。  リップルにとってカッツィ団に対する敵対心が強まり、 賞金稼ぎとしてではなく、一個人として、 カッツィ団の頭首ジャンに会いに行くことを決意する。  カッツィ団のいる惑星に侵入するためには、 ブーチという女性操縦士がいる輸送船が必要となり、 彼女を説得することから始まる。  また、その輸送船は、 魔術師から見つからないように隠す迷彩妖術が必要となるため、 妖精の住む惑星で同行ができる妖精を募集する。  加えて、魔界が人界科学の真似事をしている、ということで、 警備システムを弱体化できるハッキング技術の習得者を探すことになる。  リップルは強引な手段を使ってでも、 ランスの救出とカッツィ団の頭首に会うことを目的に行動を起こす。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

Reboot ~AIに管理を任せたVRMMOが反旗を翻したので運営と力を合わせて攻略します~

霧氷こあ
SF
 フルダイブMMORPGのクローズドβテストに参加した三人が、システム統括のAI『アイリス』によって閉じ込められた。  それを助けるためログインしたクロノスだったが、アイリスの妨害によりレベル1に……!?  見兼ねたシステム設計者で運営である『イヴ』がハイエルフの姿を借りて仮想空間に入り込む。だがそこはすでに、AIが統治する恐ろしくも残酷な世界だった。 「ここは現実であって、現実ではないの」  自我を持ち始めた混沌とした世界、乖離していく紅の世界。相反する二つを結ぶ少年と少女を描いたSFファンタジー。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

処理中です...