Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第五章 月を壊したかぐや姫

Episode 38

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「あー。そこのネースのお二人さん。先に行くなら行っていいよ」
「……一応聞くが、アリアドネは?」
「うーん、聞きたい?」

私がそう言いながら振り返ると、柚子饅頭とジョンドゥは明後日の方向を見た。

「まぁ問題はないよ。と言うかそろそろデスペナ送りだ、行くなら早めにしたほうがいいんじゃない?多分もうアリアドネの後詰めがこっちに向かってるんじゃない?」
「成程。では、ジョンドゥ」
「あァ。行きましょう」

そう言って、彼女らは私の横を通り過ぎ階段の方へと向かっていった。
この場に残るはいつものパーティメンバーと、血に捕らわれ今も少しずつ消えていっているアリアドネのみだった。
【フードレイン】を止め、何と無しに【食人礼賛】を発動してみると……一気にアリアドネの身体が消えていき、光の粒子へと変わったのが分かった。
それと同時、私の右腕にいつもよりも小さく、そして短い肉の異形の腕が作り出された。

「先輩?何する気ですか?」
「え、そりゃあ一応私達もここまで攻め込んだんだし……」

いつもより一回りほど小さいためか、取り回しやすいそれを私は大きく後ろへと振りかぶり、

「これくらいは許されてしかるべき、そうだろう?」

今も、柚子饅頭達が昇っている石階段へと叩きつけるように振るった。
当の2人は腕の影によって気付いたのかギリギリで直撃は避けたものの、代わりに石階段は崩れていった。

--System Message 『重要拠点へのダメージを確認。比例したポイントを所属区画へと付与します』
--System Log 『+32pt』

「おぉ、今の一回で32ポイントも入ったぜマギくん。これでここにいる面々が死んでも実質タダみたいなもんさ」
「はぁああ……」

軽い冗談のような口調でそんなことを言いながら。
私は柚子饅頭達の出方を視線で追う。
攻撃を仕掛けたのは単純に、ここから帰るのに攻撃されデスペナルティとなった方が楽だからだ。それ以外は……まぁ、特に仕事もせずに見ているだけだった彼らに腹いせで攻撃したかったというのもある。
彼女らはその場に立ち止まり、こちらを警戒するように見てきたものの。
こちらが攻撃体勢をとっていなかったからなのか、すぐに踵を返し階段を昇って行った。

「というわけで。ディエス遠征はこれで終わりかな?」
「そうね……後で色々と聞くから答えを用意しておいて」
「あは、了解。その時は一緒に確かめてもらうぜ」

普通に歩けるくらいには回復したのか、ハロウが私の横までやってきてそう言った。
ハロウもハロウで色々と思う事はあったのだろうが……とりあえずは、私が見せたハンティングナイフの情報を得る事が先決と考えたようだ。
確かにそれは間違いじゃない。
同じパーティを組んでいる仲だ、知らないスキルによってパーティが全滅する可能性もあるのは、リーダーにとっては見過ごせないだろう。

「まぁ、とりあえず戻ろうぜ」
「そうねぇ……まだソーマ達が戦ってる可能性もあるし、それを拾ってからにしましょう」
『了解了解(゚д゚)!とりあえず戻るのはデンスでいいの?』
「流石にここから他の区画攻めにいくのは面倒だし、体力も持たないわ。適当にセーフティエリアで今日は休憩させてもらいましょう」
『はーい!』

暫くして、ディエスの重要拠点が破壊されたというシステムメッセージが全体通知された。
恐らくは柚子饅頭、ジョンドゥの2人を始め、ソーマや神酒達が頑張ったのだろう。

私達はデンスへと戻り重要拠点で防衛を行っていたスキニットに状況を確認してからセーフティエリアにて休憩をとらせてもらうことになった。
とはいっても、私は暴れ足りない……というよりは在庫を増やしたかったため、【決闘者の墓場】や重要拠点を襲撃にきていた他所属のプレイヤーを防衛チームと一緒にあって倒していたのだが。

こうして、長い長い2日目が終わりを告げる。
そして、最終日。全てが決まる日がやってきた。
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