Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

文字の大きさ
上 下
190 / 192
第五章 月を壊したかぐや姫

Episode 38

しおりを挟む

「あー。そこのネースのお二人さん。先に行くなら行っていいよ」
「……一応聞くが、アリアドネは?」
「うーん、聞きたい?」

私がそう言いながら振り返ると、柚子饅頭とジョンドゥは明後日の方向を見た。

「まぁ問題はないよ。と言うかそろそろデスペナ送りだ、行くなら早めにしたほうがいいんじゃない?多分もうアリアドネの後詰めがこっちに向かってるんじゃない?」
「成程。では、ジョンドゥ」
「あァ。行きましょう」

そう言って、彼女らは私の横を通り過ぎ階段の方へと向かっていった。
この場に残るはいつものパーティメンバーと、血に捕らわれ今も少しずつ消えていっているアリアドネのみだった。
【フードレイン】を止め、何と無しに【食人礼賛】を発動してみると……一気にアリアドネの身体が消えていき、光の粒子へと変わったのが分かった。
それと同時、私の右腕にいつもよりも小さく、そして短い肉の異形の腕が作り出された。

「先輩?何する気ですか?」
「え、そりゃあ一応私達もここまで攻め込んだんだし……」

いつもより一回りほど小さいためか、取り回しやすいそれを私は大きく後ろへと振りかぶり、

「これくらいは許されてしかるべき、そうだろう?」

今も、柚子饅頭達が昇っている石階段へと叩きつけるように振るった。
当の2人は腕の影によって気付いたのかギリギリで直撃は避けたものの、代わりに石階段は崩れていった。

--System Message 『重要拠点へのダメージを確認。比例したポイントを所属区画へと付与します』
--System Log 『+32pt』

「おぉ、今の一回で32ポイントも入ったぜマギくん。これでここにいる面々が死んでも実質タダみたいなもんさ」
「はぁああ……」

軽い冗談のような口調でそんなことを言いながら。
私は柚子饅頭達の出方を視線で追う。
攻撃を仕掛けたのは単純に、ここから帰るのに攻撃されデスペナルティとなった方が楽だからだ。それ以外は……まぁ、特に仕事もせずに見ているだけだった彼らに腹いせで攻撃したかったというのもある。
彼女らはその場に立ち止まり、こちらを警戒するように見てきたものの。
こちらが攻撃体勢をとっていなかったからなのか、すぐに踵を返し階段を昇って行った。

「というわけで。ディエス遠征はこれで終わりかな?」
「そうね……後で色々と聞くから答えを用意しておいて」
「あは、了解。その時は一緒に確かめてもらうぜ」

普通に歩けるくらいには回復したのか、ハロウが私の横までやってきてそう言った。
ハロウもハロウで色々と思う事はあったのだろうが……とりあえずは、私が見せたハンティングナイフの情報を得る事が先決と考えたようだ。
確かにそれは間違いじゃない。
同じパーティを組んでいる仲だ、知らないスキルによってパーティが全滅する可能性もあるのは、リーダーにとっては見過ごせないだろう。

「まぁ、とりあえず戻ろうぜ」
「そうねぇ……まだソーマ達が戦ってる可能性もあるし、それを拾ってからにしましょう」
『了解了解(゚д゚)!とりあえず戻るのはデンスでいいの?』
「流石にここから他の区画攻めにいくのは面倒だし、体力も持たないわ。適当にセーフティエリアで今日は休憩させてもらいましょう」
『はーい!』

暫くして、ディエスの重要拠点が破壊されたというシステムメッセージが全体通知された。
恐らくは柚子饅頭、ジョンドゥの2人を始め、ソーマや神酒達が頑張ったのだろう。

私達はデンスへと戻り重要拠点で防衛を行っていたスキニットに状況を確認してからセーフティエリアにて休憩をとらせてもらうことになった。
とはいっても、私は暴れ足りない……というよりは在庫を増やしたかったため、【決闘者の墓場】や重要拠点を襲撃にきていた他所属のプレイヤーを防衛チームと一緒にあって倒していたのだが。

こうして、長い長い2日目が終わりを告げる。
そして、最終日。全てが決まる日がやってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

異世界コンビニ

榎木ユウ
ファンタジー
書籍化していただきました「異世界コンビニ」のオマケです。 なろうさん連載当時、拍手に掲載していたものなので1話1話は短いです。 書籍と連載で異なる部分は割愛・改稿しております。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

異端の紅赤マギ

みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】 --------------------------------------------- その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。 いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。 それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。 「ここは異世界だ!!」 退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。 「冒険者なんて職業は存在しない!?」 「俺には魔力が無い!?」 これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・ --------------------------------------------------------------------------- 「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。 また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・ ★次章執筆大幅に遅れています。 ★なんやかんやありまして...

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

処理中です...