Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第五章 月を壊したかぐや姫

Episode 22

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■【印器師A】ハロウ

マギの案内に従って私達は移動する。
私を含め、目立つ集団だ。
当然ながら道中何度も何度もプレイヤー達に襲われていく。

私をメインに狙ってきたり、私達のパーティの事を知っているのか……あまり外部に情報が露出しないマギを狙ってきたり。
他にも、柚子饅頭やジョンドゥに対して敵対心でも抱いているのか、執拗に挑んできたりする者達もいた。

「……これで何人目よ」
「えぇっと……17人くらいですかね。これならまだ一撃で何とかなる【式紙】の方が楽なんですが……」
「明らかに減ったな、数」
「今までが異常だったのよ」

プレイヤー達を打倒しつつ進むにつれ、【式紙】を見る事自体が減ってきていた。
勿論、こちらへと襲い掛かってくるプレイヤーの中に【式紙】を使ってくる者はいる。
ここで言う【式紙】は、私達がディエスに入ってから延々と縦横無尽に襲い掛かってきていたあの【式紙】だ。
数が少なくなってきている、ということは対応を任せたCNVLが何とか頑張っているのだろう。

「……ちなみにここのダンジョンまでってあとどれくらい距離あるのかしら」
「もうすぐ近くまで来てますよ。ただまぁ……正直相手さんも僕達の区画みたいにプレイヤーで固めてると思うんですよねぇ……」
『私達の目的はどっちかっていうとアリアドネさん?を止める事だから良いんじゃない?それ以外は柚子饅頭さん達に任せちゃおう?('ω')』
『それが良いかしらねぇ……明確に味方ってわけじゃないし、それの方が色々楽そうね』

周囲の景色は進んでいくにつれ、少しずつ都会から田舎へ……ビルよりも畑や田んぼが多い農村部のように変わってきていた。
独特な鼻につく臭いを感じながら、私達は草木の生えたアスファルトの道を走っていく。
ここまでくると流石に隠れる場所などが無くなってくるのか、ディエス所属のプレイヤー達はダンジョンがあると思われる方向からパーティ単位で襲い掛かってくるようになってきた。

……スケルトンで慣れてるとはいえ、やっぱりキツイわね。
私達のように各自のやりたいことを優先し過ぎないかぎり、パーティ内の役割というのは何か1つに偏ったりはしない。

相手の攻撃や、ヘイトをその一身に受けるタンク。
火力を出し相手を倒したり、タンクからヘイトを奪わないようダメージ管理も行うアタッカー。
上記2つの役割を、バフやデバフによって支えるサポーター。
そして、全員のHPやMPを管理し戦況に合わせて回復させていくヒーラー。

基本的にはこれら4種の役割がパーティ内に合った方がスムーズに攻略は進んでいく……はずなのだ。
だからこそ、ディエス所属のプレイヤー達はそれに則った構成で襲い掛かってくる。
だが、それは相手が普通だった場合に上手くいくのであって……勿論当てはまらない相手も存在する。

ディエス側からすれば、今の私達がそうだろう。
マギを除き、今この場に居るプレイヤーは全員が全員毛色は違うもののアタッカー。
全員の攻撃をタンクに集中させてしまえば、流石に1人では抑える事は厳しくなってくる。
それが分かっているのか、こちらの中でも一番弱そうに見えるメアリーに対して攻撃を仕掛けてこようとするプレイヤーもいるものの、近づかれる前に眉間に矢を喰らい光へと変わっていく。

他を狙おうとしても、私は言わずもがな……他のネース所属の2人もそれなりに対人戦は得意なのか危なげなく倒していっていた。
だが相手側は気付いていないだろうが……この中で一番危険度が高いのは私達アタッカーではない。
1人で4人のバフ、デバフを管理しているサポーターであるマギだ。

彼の調薬スキルによって作られる薬は、私達に対してのバフ、そして相手に対してダメージを与えるものやデバフを多重に与えるものまで様々なモノばかりだ。
彼を放置しているだけで、無視できないほどに致命的な影響がパーティ内に襲い掛かってきてしまう。
ヒーラーポジションのプレイヤーが状態異常などを快復しようにも、マギをフリーにしている時点で快復した傍から再び追加されていくため、最終的に手が回らなくなってしまう。

死に戻りしたプレイヤーから話を聞いたのか、徐々にマギを狙おうとする者も増えてはいるものの。
彼へと近づくには私達をどうにかしなければ辿り着けない。
……本当、味方で良かったわ。
彼の戦闘を見ていると心からそう思ってしまう。
私なら絶対に相手にしたくないからだ。

今も私達が適当に抑えている間に相手プレイヤー全員にデバフ、ダメージを伴う状態異常などが多重に罹り、その動きが鈍くなった所を急所を狙う事で簡単に処理できてしまっている。
ダンジョンでのPvEと、こういったイベントでのPvP。
戦い方が違うのもそうだが、やはり状態異常への対策をしっかりしなければと考えさせられる。

「よーし、片付きましたね。もう少しでダンジョンに続く石階段にたどり着きますよ」
「了解。2人は大丈夫?休憩入れたいなら短いけれど入れるわよ?」
「大丈夫だ。まだまだ余裕はある」
「こっちも大丈夫デェス。行きましょう」

ある程度疲労の度合いが分かるメアリーは別として、普段共に行動していないネースの2人に確認をとってから先に進む。
急ぐ必要のある事柄だが、疲労が原因で変なミスをしてしまっては元も子もない。
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