Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第五章 月を壊したかぐや姫

Episode 13

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「マギ、こっちで合ってるの?!ちょくちょく道曲がってるんだけど!?」
「合ってます!僕達が向かってるのが分かってるのか、逃げるように移動してるんですよ!」
「それってソーマ達の方はどうなるんだい?この先にいるのは【式紙】を使ってるかもしれないプレイヤーだろう?」
「一応【狂信者】ならリモート操作なんかが出来るスキルも系統によってはあったはずなのでそれかと!でも普段は使えるほどまともなAI乗っけられてないんですよね!」

何処かに隠れていたのか、それとも他の場所へと誘導されていたのか。
ここにきて多くのプレイヤー達が【式紙】と共に、移動中の私達に対して攻撃を仕掛けようと武器を振り上げ襲い掛かってくる。

流石現実区画と言うべきだろうか。
彼らの手に握られている得物は、他の区画で見られたような剣などではなく。
鉄のバッドやL字バール、果ては工具などと現代ならばいずれも簡単に手に入りそうなものばかりだった。

それらは本来、武器として使われることを想定していない物達だ。
しかしながら、私達には縁があるとそろそろ言いたくなるような、黒い靄がそれらに纏わりついているのを見て私は頬を引きつらせた。
……【ラミレス】系統の【犯罪者】達!

悪魔と呼ばれる者から力を貸し与えられ、それを行使する者達。
恐らくは先程からマギやソーマの口から出てきていた【狂信者】という【犯罪者】達がそれらを扱う事が出来るのだろう。
周りの、それこそ私を除いた面々はそれぞれ対処に走っていた。

CNVLはこちらへと近づいてくる者を【フードレイン】で足止めをして。
そこにマギの薬によって強化されたジョンドゥと柚子饅頭が迫り、容赦なく相手を殺していく。
……あれは、投げる用のナイフかしら。
気になったのは、ようやっと見る事が出来たジョンドゥの戦い方だろうか。

彼は手に何本もの投げナイフを出現させては、それらを巧みに操り敵を屠っていく。
投げたナイフはそのまま真っ直ぐに飛んでいくものや、何故かぐにゃぐにゃと機動を歪ませながら進んでいくものも存在する。
彼が何かしらのスキルを使っているのだろうが……検討もつかないというのは初めてだ。
或いは、アレも彼の姿通り手品と言われても信じてしまうかもしれない。
それほどまでに綺麗な動きをするナイフだった。

「オラァ!余所見してんじゃあねぇぞ!!」
「あらごめんなさい。でも女性にそういう言葉遣いはどうかと思うわよ?」
「ッるっせぇ!」

当然ながら私の方にも敵は来る。
槍のようなモノを持ち、私の方へと素早く数回の突きを繰り出した彼に対し。
私がとった行動はそれなりにシンプルだ。

「ぐっ?!」

咄嗟にその場に伏せ、そしてそのまま横に回転するように足払いを掛ける。
素早く立ち上がり、体勢が崩れた敵の背中に対してインベントリから取り出した【土精の鎚】を叩きつける。
【洋墨生成】を使用していないために【衝撃】の効果は発声しないものの。
そのまま地面へと顔面から叩きつけられた敵は、光となって消えていく。
そこまで強くなかったのだろう。

近くに居た連中に対しても似たような対処や、手の内を晒すことにはなるが【隆起】などを使って攻撃を防ぎつつ。
私達はマギの示す方向へと走っていく。
残りHPを横目で確認しておくと、8割ほどしか残っていなかった。
恐らくは途中で誰かの攻撃が当たっていたのだろう。
【再生】の捺印によって少しずつではあるものの回復をしておいた。

そして私達が辿り着いたのは、

「……こんな所にも自然って残ってるのね」

森の入り口だった。
マギの方をみれば首を縦に振って肯定した。
つまりは、だ。この先に【式紙】を放った張本人が居る……かもしれない。

少しだけ、周りと比べて私は不安を感じていた。
当然だ。突発で、アドリブで役割を決めたような【式紙】を行使するプレイヤーへの反撃カウンターだ。
私達がプレイヤーとの戦闘になれていたのもあるかもしれないが、それでもここまでHPの損害が低く収まるわけもないだろう。

折角ここまで来たのだ。
石橋を叩いて渡るように慎重になってもいいだろう。
そう進言しようとした時だった。

『……やぁ、みなさん。ネタ風に言うならば、今あなた達の頭の中に直接話しかけています……ってのが定番ですかね?』

声が、頭の中に響いた。
それと同時、私とCNVL、柚子饅頭とジョンドゥは警戒態勢を維持し、どこから敵が現れてもいいように、周囲を見渡している。

『おぉっと、これは失敬。ここまで辿り着けたのですから、何かしらの索敵は持っていると思っていたのですが……当てずっぽうで来られてしまいましたか』
「……マギ、反応は?」
「……この先です、間違いないです」
「……了解」

小声でマギに確認をとれば、やはりこの森の奥に私達から逃げていた推定【式紙】行使者がいるはずだ。
それならば、と。私は一歩前へと踏み出した。
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