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第五章 月を壊したかぐや姫
Episode 2
しおりを挟むいざ話をしようとした所でマギが手を挙げた。
「で、結局の所なんで僕達こうして集まって情報共有してるんです?某神話的なTRPGじゃないんですから、各個人で確認できる掲示板でもいいのでは?」
「んー、まぁ簡単に言えば……知り合いの中で誰が主導になって他区画を攻めるか、重要拠点を守るのかってのを決めておきたいのよ。そっちの方が誰に連絡すればいいのか分かりやすいでしょう?」
「でも結局赤ずきんさんが言った人形に報告するんでしょう?なら……あぁ、成程。そういうことですか」
どうやら自身で話しながら頭の中で答えに思い当ったらしく、マギは腕を組み何回か頷いた。
そう、私達の報告自体は赤ずきんの人形に回す。
しかしながら、その報告を人形から受け取った赤ずきんがまとめた情報をどこに回すべきなのかがこの場合はっきりしていないのだ。
「いくら情報をまとめた所で、誰が必要としているのか、誰にとってその情報は要らないのか分かっていないと人形を介していたとしても混乱するのよ。まぁ情報全部欲しいって人にはそのまま横流しするような形にはなると思うけどね」
私達のパーティの場合は基本的に情報は全て貰う形になるだろう。
それを処理するのは恐らくメアリーとなる。
彼女自身、それが分かっているのか少しばかり溜息を吐いているものの……適材適所というものだ。諦めてもらうしかない。
「はい!質問です!」
「どうぞ、バディ」
「私みたいなソロプレイヤーは防衛や攻城?戦に参加するのはいいですけど、情報を貰う意味ってのはあるんですか?正直、私達を指揮するプレイヤー……ここで言うならスキニットさんみたいな人に渡しておくだけでもいい気がするんですけど!」
そんな彼女の発言に、彼女の周囲にいた普段ソロで活動しているプレイヤー達が頷いている。
確かに彼女達のようなこちらの指示を聞いてくれるパーティを組んでいないプレイヤーに対して情報を渡す意味はあまりない。
「一応意味は薄いけどあるわよ?簡単に言えば……そうね、サクラって知ってる?」
「樹木の、じゃない方ですよね?知ってますよ!」
「なら話が早いわね。貴方達みたいにこちらに協力的なソロプレイヤーが情報を渡す意味はそこなのよ。スキニットみたいにある程度名前の知られているプレイヤーもいるにはいるけど、それでも不特定多数に指揮をするとなると……まぁアホは何処にでも出てくるわけね?」
「確かに居るな、そういうのは。何かといちゃもんつけて状況をかき乱すだけかき乱す奴」
「まぁ自由にプレイしてるって意味では縛られたくないってのは分かるから何とも言い難いのは確かなんだけど。でもこっちも勝ちたいからある程度統率はとっておきたいわけね?そこで貴方達情報を事前に渡されてるプレイヤーの出番ってわけ」
私の言葉に頭にハテナマークを浮かべている者や、言いたい事が分かったのか頷いている者など様々だ。
……口が上手くないからこういう説明をする時苦労するわねぇ……やっぱりマギに任せた方が良かったかしら。
内心で自身のスキルのなさに苦笑しつつ、私は息を一つ吸って話を続ける。
「何て言えばいいのかしらね……私が貴方達に求めているのは、言ってしまえば指示に従ってもらうことじゃないの。情報を持った上で、スキニットとか指示をするプレイヤーの正当性を行動で示してほしいというか……ねぇ?」
「あは、それでこっちに振られても困るぜハロウ。いやまぁ、言いたいことは分かるからねぇ……。つまりはこう言いたいんだろう?普段ソロで活動してる君達を縛るつもりは無いけど、周りで粗相をしてる奴が居たら情報を渡してもいいから、こっちが指示できるように誘導してくれっていう感じの。ほら、君達にも1人くらいは居るんじゃないかい?仲がいいけど、上の指示とか聞けないタイプの友人。あれの見えない手綱を握るために手伝ってくれってことだろう?」
「凄いわね、CNVL。自慢じゃないけれど、私の話は理解されないことの方が多いのよ?」
「君は後でマギくんに話の組み立て方とか教わるといいよ」
サムズアップしながらCNVLに笑顔を向けると、CNVLは良い笑顔でサムズダウンさせた手で首を掻っ切るような仕草をしてくれた。
周りを見れば、CNVLの説明である程度理解してくれたのか先程私が話していた時よりハテナマークを浮かべている者は少なかった。
今度から説明は先輩後輩コンビに任せることにしよう。
「まぁ難しい話をしていても仕方ないわ。兎に角、バディ達のように普段ソロで活動しているプレイヤー達は、その情報を得た上で自分が思うように行動してもらって構わないって意味と同じだもの」
「成程!分かりやすい!了解です!」
「さて、じゃあ他に質問ある人いるかしらー?居ないなら次に進めるわよー」
バディのように手を挙げて質問する者は他には居らず、話し合いはそのまま進んでいく。
結果として、スキニットのパーティが基本的な重要拠点の防衛。
ソロプレイヤー達がその補助。そして私達のパーティが基本的に他の区画へと攻め込む事となった。
まぁ私達が攻撃役となった理由として……まぁ私やCNVLは言わずもがな、広範囲でバフを行う事が可能なマギや、遠距離から狙撃が出来るメアリーと、言われてみれば防衛よりも攻撃の方が向いているメンバーが多かったためだ。
正直その場に居た私達を除く全員から攻撃役と指名された時は全員で目を丸くしたが。
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