Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第四章 天使にレクイエムを

Episode 40

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--浮遊監獄都市 カテナ 第四区画 ディエス 第一階層
■【???T】アリアドネ

空が夕暮れから夜へと変わっていくのを、神社へと続く石の階段の上から私は眺めていた。
先程、第三勢力のボスである【反海星 マリア・ステラ】が討伐されたというシステムログが届いたため、そろそろ動く時なのだろう。

「【竹取の五難題】……今回は枝でいっかな」

そう言った瞬間、私の手の中には金色の枝が出現する。
そっと、折れないようにそれを握れば身体の中から何かが吸われるような感覚と共に、その金色の枝に白い玉が複数……計7つ作り出された。

「まぁとりあえずで、気張らず、頑張らず、人を使わずに。【怠惰模造】」

私はその中の1つを手で取ると、もう1つスキルの宣言を行った。
瞬間、私の手の中から白い玉が光となって消えていき……代わりに周囲から白い液体が複数空へと噴き上がり、徐々にそれらが人型へと固まっていく。
最終的に1回のスキルで出現したのは5体の白い人型の何か。
顔というものはなく、シルエットが人というだけの人形ですらないものだ。

「うーん、1個で5体?まぁ何とかなるかな。……『敵に見つからないよう他区画の重要拠点の破壊工作を開始』。よし、いけ!ごー!」

スキルを使うことを意識しながら、その人型たちへと命令をする。
すると、どうやって私の声を認識しているのかは分からないものの、人型たちは地面へと溶けていきこの場から遠ざかっていくのが感覚で分かった。

その感覚に満足したように頷くと、他の白い玉も同じように光へ、白い人型へと変えていく。
そして最後の1つが人型へと完全に変わった瞬間、手に持っていた金色の枝は崩れ去っていった。
先に向かわせた5体と同じように命令すると、私は石階段に座り込んだ。
周囲はすっかり暗くなっており、空には丸い月が浮いている。

「……少なくとも、第一回よりはなんとかできるよね。みんな協力してくれてるし」

小さく呟き、私はため息を吐いた。
第一回区画順位戦。3位ではあったものの……個人個人で敵さえ倒していればなんとかなるイベントではあったのだ。
勿論、統制が取れていてパーティ行動が出来ているのであれば狩る速度が速くなるため、ある程度のポイントの差は出るのだが。

この現実を模倣したかのような区画で、少しずつ少しずつ力をつけてきたのだ。
次の区画順位戦で自分たちの出来ることを最大限やるために。

その為に第三勢力との戦闘、他の区画への攻め込むのは最低限に……力を溜め込むことに注力した。
勿論、こちらの話を聞かず他の区画や第三勢力を狩りに行ったプレイヤーも少なくはないが……彼らに関しては何もしないことで手を打った。
流石に誰もディエス所属のプレイヤーと出会わないと、不審がられる可能性があったから。
……一応、私だけ・・が第三勢力との戦闘に出ても良かったんだけど……止められちゃったからね。

『アリアドネ?今大丈夫かい?』
「大丈夫大丈夫。……連絡くれたってことは準備が出来たの?」
『あぁ。出来る限りの式神を用意した。これでダメだったらまた素材を集め直さないと』
「おっけーおっけー。じゃあ命令出しちゃって!こっちも出せるようになったら順次出していくから!」

知り合いからの連絡に、笑みを浮かべ応答する。
ここからが私達の区画順位戦の始まりだ。


-to be continued......-
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