Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第四章 天使にレクイエムを

Episode 39

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光で作られたハルバードを振るい、主にタンクをしてくれているプレイヤー達を薙ぎ払っている【反海星 マリア・ステラ】の背後から私とスキニットの2人は近寄り、攻撃を仕掛ける。
私は勿論ハサミを。スキニットは片手剣を振るいダメージを与えすぐに離脱していく。

側面側に居るプレイヤーの数が多いために背中側に移動してた私達ではあるが、同じような考えの者は多く。
数は多少減るものの、背中側にもそれなりの量が存在していた。
だからこそ、一撃入れたら即離脱……所謂ヒットアンドアウェイ戦法のようなものを基本として立ち回っている。
相手が巨大なボスならばこんなことを考えずに済んだのだろうが……今回のように、人型であることの方がこのゲームFiCのボスでは多いため、そこを踏まえて今後戦い方をプレイヤー間で考えた方がいいだろう。

「残りHPは!?」
「2割切ったぞ!ホント柔いな!」
「よし、そのまま押し切れ!早く拠点防衛に戻らねぇといけねぇんだからよォ!」

プレイヤー達の普段とは違う喧騒が中央区画に響き渡り、一種の祭りに参加しているかのような心境になってくる。
気分が高揚し、胸が高鳴り。そして、祭りの終わりに感じるあのなんとも言えない寂しさを少し感じていた。
残りHPは2割。それを削り切るために今までは空気を読んで交代交代で攻撃を仕掛けていたプレイヤー達は、甘味に群がるアリのように【反海星 マリア・ステラ】へと攻撃を仕掛けていく。

炎が、水が、酸が、岩が、剣が、槍が、斧が、そしてそれ以外にも様々な武器がボスへと殺到し。
それらをボスは両手で扱っていたハルバードを左手に、そして右手には新たに光の剣を作り出しその脅威的な速度と筋力をもって無理矢理に対応していく。
実体がないものは武具を振るうことで生じた衝撃波で打消し。
実体があるものに関しては打ち砕くように。
武器に関してはそのそれぞれにあった対処法で無力化していく。

しかしながら、ここに居るのは少ないといっても3つの区画の連合軍。
1人で対応できるならば、彼女は史実では一騎当千などと言われ聖人ではなく武人として名を馳せていたことだろう。
徐々に傷が増え、HPが削れていく。

「さて、私も行くわ。スキニットは?」
「俺はパスだ。どうしたってアレには混ざれん」
「それは残念。じゃあ重要拠点の方を任せるわ。今から戻れば他よりは早いでしょうし」
「了解、あー精神的に疲れた」

そして、当然ながらこの最後の削り作業に私も参加する。
一緒にどうかと思い、隣に居るスキニットも誘ってみたが断られてしまったため、私達の区画の防衛へと戻ってもらう。
元々彼は攻めには向かないタイプのプレイヤーなのだ。ここまで付き合ってくれただけでもありがたいだろう。

「よしっ、行きましょう。……今回は色々考えすぎて疲れてきてるのよ。だから――」

浅く息を吐き、ハサミを構え。自身アバターに出来る最大の力をもって地を蹴った。
印章のバフ、それに加え恐らくはマギが使ったのであろう広範囲による筋力バフによって私の身体はいつも以上の速度で目標へと近づいていく。
当然、今の状況でボスに近づくということは、ボスへの攻撃に巻き込まれることになるが……それくらいは分かりきっているし、そんなに気にするようなことでもない。
HPが全損したらその時の私がどうするべきか考えるだろうから。

ハサミを開き、真剣な顔ではなく意識的に笑みを浮かべ。
一瞬でタッチの距離……ハサミを使うには近すぎる距離まで近づき、その開いた刃を暴れている【反海星 マリア・ステラ】の首に何とか掛ける。

「――ちょっと良いとこは貰っていくわ」

じょきん。
いつもの心地いい音がプレイヤー達の喧騒の中に大きく響いた。
直後、ボスに向かって放たれた見覚えのある太いバリスタの矢が頭を失った身体に突き刺さり白い爆炎を発した。

『LA頂きィ!(゚д゚)!……あっ』
「……マジィ?」

勿論、私はその白い爆炎へと巻き込まれる。
当然ながらこのゲームは区画順位戦中だろうがフレンドリーファイアは有効だ。
至近距離でその余波を喰らったからだろう。
私のHPはそのまま全損し、デスペナルティとなった。抵抗のしようがない完璧なタイミングだったために変なリアクションしか取れなかったのは少しだけ後悔しているが……とりあえず。
私はリスポーンしたら、メアリーに嫌味を言うくらいは許されるはずだ。


-【反海星 マリア・ステラ】を討伐しました-
-これ以降、現在カテナに存在する天使を除き第三勢力は出現しません-
-反節制の聖書が破壊されました-
-勝利条件を一部満たしました。残る条件は『他区画よりもポイントを獲得する』ことです-
-ボス撃破報酬はイベント終了後に全てのプレイヤーに向けて配布されます-

--System Message 『あなたはデスペナルティとなりました。一定時間全ステータスが低下します。また、所属区画であるデンスの区画順位戦ポイントが減少しました』
--System Log 『-6pt』
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