Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第四章 天使にレクイエムを

Episode 23

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援軍を迎えた私達は、先程以上の速度で中央区画へと近づいて行った。
といっても、そこまで今までも遅くはなかったのだが。
普段歩き慣れた道を走り、道中襲い掛かってくる天使達を処理しながら前へと進む。
自然と私と酔鴉のパーティが先頭に立ち、その後ろにスキニットのパーティ、そして後から合流したプレイヤー達がそれに続く。

--浮遊監獄都市 カテナ 中央区画 メディウス

「……予想以上ってこの事をいうべき?」
「よくここから生きて逃げたわね、あの子……」

そして、私達はやっと中央区画へと辿り着いた。
それと同時に私達は理解した。
CNVLが死ぬと言った理由を。

スクリーンショットに映っていた量とは比べ物にならないほどに多いその天使の量は、少しずつ空へと飛び立っていく個体がいるのにも関わらず減っている様子がない。
幸いなのは、全てが全てこちらではなく空を見上げている事だろうか。
そのおかげで中央区画へと足を踏み入れたのにも関わらず、今だこちらへと気付いている個体はいない。

しかし。
じゃり、という音が聞こえた。
どうやら私達の誰かが足元の砂利を踏んでしまって音が出てしまったのだろう。
瞬間、中央区画に存在する天使が全てこちらへと振り向いた。

『――【犯罪者】多数目視、殲滅を開始します』
『『『殲滅開始』』』
「せっ、戦闘開始ッ!」

焦ったように声をあげ、武器を構える。
周囲のプレイヤー達も天使と私の声によってハッとしたように武器を構えた。
地獄のような、天の使いとの戦闘はこうして本番を迎えた。



「それぞれ生き残る事を優先しろ!逃げてもいいが、死んでも区画のポイントが減るだけだ!デスペナなんて気にするな!」
「スキニットくんは相変わらずだねぇ。ハロウ!私はちょっとスキニットくんの所と暴れてくるから気にしなくていい!バディちゃんと上手くやってくれ!」
「「はぁ?!」」

戦闘開始から十数分ほど経った時だろうか。
私と酔鴉、スキニット達のパーティからは脱落者はいないものの、後から合流してきたプレイヤー達は少しずつ死に戻りをしていっていた。
私も私で何とか誤魔化しているものの、天使達の攻撃密度が高すぎるためか少しずつ擦り傷のようなダメージが積み重なってきていた。
幸いにして、マギやメアリーと言った後衛職の居るラインまで天使達を大量に抜けさせる事はないため、支援バフ自体は絶えることがない。

「……赤ずきんはあぁ言ってたけど、どうしたい?」
「ははは……いやまぁ今ここで他の所にはいけませんって!」
「そうよねぇ……CNVLもそろそろ着くと思うから少しは楽になると思うんだけど……」

そう言いつつ、切れてしまった印章の効果を再度捺印する事で再発動させる。
ついでに【印器乱舞】を使い周囲の天使へと向かってデバフ系の印章を捺印させ、どうにか戦いやすくはしていた。

「酔鴉!」
「何!?今こっちも割と厳しいんだけど!」
「それはごめんなさいね!神父姿の天使ってそっちから見える!?」
「神父ぅー……?禍羅魔見えた?」
「奥の方に一瞬だけなァ!一番密度が濃いあそこだあそこ!」

禍羅魔がそう言いながら天使をある方向……普段の中央区画ならば中心に当たる位置の方へと投げ飛ばした。
恐らくそちらの方向に見えたと言いたいのだろう。
酔鴉と禍羅魔に礼を言いつつ、パーティチャットによってその情報を共有する。

その間にも襲い掛かってくる天使達を斬り、時には弾き飛ばし。
攻撃を避け、デバフを捺印し転ばせ周囲のプレイヤー達と共に袋叩きにして光へと変える。
戦闘をしながら他の事をする、というのが少しだけ慣れてしまった。

「……とのことだけど、メアリーかマギ、どっちか狙える?」
『僕は難しいですね。【薬人形】でも……正直難しいですね』
『私は狙えるけど……バリスタ出したら天使達の視線がこっちにずずい!って向くんだよねぇ……(-_-;)』
「たまーにこっちから視線が外れるのはそういう事ね……」

恐らくは大ダメージを与える事が出来る武器などに対してヘイトが強制的に集まるのだろう。
私にあまり反応していないのは、単純にダメージは与えられるものの、一定のダメージ量にはならないからだろうか。

「了解、じゃあそっちは今まで通りでお願い。……アイテムの方は?」
『爆破矢は数体反応する程度かな、でもファウストの方で使った奴はバリスタと同じくらい見られるね(´・ω・)』
「……アレが使えないのねぇ……面倒だ――「じゃあ私の出番だッ!」――……やっと来たのね」

私の立っている場所に影が差す。
その影は人型で、右腕に当たる部分が異様なほどに膨れ上がっていた。
そしてその人影は、そのまま天使達の方へと落ちていき爆発したかのような音を立てながら着地した。

「遅いわよ、CNVLッ!」
「いやぁごめんごめん、ディエス側で色々あってさぁ。っとぉ!?あっぶなぁ!?」
「何やってんのよ!!」

周囲の天使達を巻き込みながら着地したCNVLに対し、天使達が集まって攻撃していく。
それを紙一重で避けながら、こちらへと近づいてくる彼女の姿を見て、思わずため息を吐いてしまう。

「慣れてるわね」
「そりゃさっきからずっと戦ってるからね。これくらいの速度なら慣れちゃったよ」

そして虚空から取り出したマグロ包丁を使って周囲の天使達の首を斬りつけ、出血させた。
ほぼほぼ天使達の方を見ずに、音だけで位置を判断し首を掻っ切ったのだから、この短い時間で天使との戦闘に慣れたかと呆れてしまう。

「じゃあ私がやってこようじゃあないか」
「いけるの?死にかけたんでしょう?」
「あはッ、言うねぇ。自分の強化だけじゃあ無理だけど、今は皆いるからね。問題ないさ」

軽くマグロ包丁を肩に担ぎ、私の横へと歩いてくる彼女は笑っていた。
私達のパーティの攻撃役アタッカーが遅れて再び参戦した。
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