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第四章 天使にレクイエムを
Episode 22
しおりを挟む「CNVLの事は問題なかったわ!ただやっぱりモブ生産系のが居たらしいから注意して!」
「「「了解!」」」
直接聞いてきた禍羅魔を含めた、周囲のプレイヤー達に対しCNVLから聞いた事を簡単に説明する。
彼女がMPK紛いの事をしかけていると聞いた時にスキニットを始めとした何人かが眉を顰めたものの、現在はある種の戦争状態。
それも他の区画を攻める一つの手段だということを説明すると納得はしてくれた。
やはり昔からマナー違反行為だと言われてきた事だけに、良い印象はないようだ。
「よし、審議終了!賛成が過半数超えてるからこの内容で適応するぞ!」
周囲に居る天使達を程々に片付けつつ、私達は前へと進んでいく。そんな時だ。
スキニットが声をあげ、【契約審議】が終わったことを告げた。
つまりは、だ。
「すまねぇ!待たせたなッ!」
「うちのパーティリーダーが頭硬くてなぁ……」
「ようやっと自由に動けるぜ」
周囲から武器を持ったプレイヤー達が天使へと襲い掛かる。
デンスとオリエンスの境界だからだろうか、デンス側からはある程度見かけた事のある顔ぶれが。
オリエンス側からは、酔鴉の方へと区画の方からプレイヤー達が集まってきていた。
何かしらに縛られてこちらに援軍に来たくても来れなかった者たちだろう。
パッと見ただけでも両区画合わせて十数人ほどがすぐに応援に来てくれた。
「あ!リーダー!どもです!」
「あらバディ、貴女も来てくれたのね」
「えぇ!経験値も稼ぎやすそうですし、それにアレの大本を殺らないと結局の所負けでしょう?なら来ますよ!」
びしゃっという水音と共に、私の近くへと落下してきたプレイヤー……つい最近も話をしたバディが天使を赤黒い液体で溺死させつつ、こちらへと話しかけてきた。
「いやぁ、すいません!今日は流石にパーティ組んでて遅れちゃって!」
「へぇ……貴女がパーティをねぇ」
「はい!あ、来ました!」
彼女が上を見上げると、もう一つ人影が空中から落ちてきた。
何か腕のようなものが6本ほど存在するように見え。
そのうちの一つが不自然に下に伸び、そのプレイヤーと地面の間に入ってクッションのようにぶにゅりという音を立てながら身体を受け止めた。
所々何かの液体で汚れているツナギを着ているバディと違い、そのプレイヤーは村娘のような服装の上から赤色の頭巾を頭に被っていた。
まるでそれが自身のトレードマークであるかのように。
背中から生えた腕が、これを見ろと言わんばかりにその頭巾に指を指していなければまだよかったのだが。
「すまない、待たせたね」
「いえいえ!大丈夫ですよ!」
「あぁ、こっちが現場責任者さんかい?知らない仲じゃあないけれど、よろしく頼むよハロウリーダー?」
「……バディと組んだのって寄りにもよって貴女なのね……赤ずきん」
にっこりとこちらに笑いかける赤ずきんに対し、私は苦笑いを浮かべる。
気が付けば、私の周囲から天使は居なくなっていて、ある程度自由に動く事が出来るようになっていた。
これも周りのプレイヤー達、そして応援に来てくれた者達のおかげだろう。
「よし!各自近くにいる天使を処理したらそれぞれの区画、もしくはパーティ単位で固まって行動して!配信見てたから目的地は分かるわよね!?」
私の声に、周囲のプレイヤー達は頷き肯定する。
正直配信している事を忘れていたのだが、見ている者は多かったらしい。
……説明の手間が省けて楽ね。問題はダンジョン攻略中だと先を越されかねないくらいかしら。……現状には関係ないし後にしましょう。
赤ずきんとバディの2人パーティに関しては、そのまま私達3人と行動してもらう事にする。
控えめに言って、CNVLと少ない時間ながら正面から切り結べたバディは良い前衛として機能してくれるだろうし、赤ずきんは赤ずきんで彼女の【犯罪者】的に足りていない人手を補ってくれることだろう。……多分。
「赤ずきん」
「なんだいハロウ」
「貴女、結局何が出来るの?」
失礼かもしれないが、聞いておかねばならないだろう。
【人形師】になったという話自体はリアルの方で聞いたものの、ゲーム内で何が出来るのかは詳しく聞いていないし……そもそも周囲に【人形師】のプレイヤーが居ないというのもあって、情報もあまり見たことがない。
「あー……いやまぁ色々出来るぜ?とりあえずはこれとか」
そう言って、赤ずきんは虚空から何かの革で出来た人形を取り出した。
剣と盾を持ち、鎧を着ている重量のありそうな人型の人形だ。
ぐちゃぁ、という音が聞こえそうな位に脱力して地面にへたり込んでいるが。
「んー、じゃああの天使で良いかな。【ドールオペレーション】」
周囲を見渡し、こちらへと向かって降りてきていた天使へと向かって指さしながらスキルを発動したかと思えば、近くでへたり込んでいた人形がスッと立ち上がり天使へと飛びかかった。
「んー、1体じゃ難しそうだねぇ。5体追加」
そう呟いたかと思えば、更に虚空から同じような人形達が出現し、天使へと襲い掛かる。
動きは単調であるものの防御の出来る攻撃は盾で防ぎ、隙をついて剣を振るう人形達は素直に脅威であると言えるだろう。
程なくして天使を倒した人形たちを回収し、こちらへとドヤ顔さえ向けてこなければ中々決まっていたのだが。
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