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第四章 天使にレクイエムを
Episode 17
しおりを挟む禍羅魔に連れられ辿り着いた先は、ファンタジー区画でも開けている噴水のある広場だった。
そこには戦闘をしている酔鴉とその他プレイヤーが、噴水を守るようにして5~6体の天使と交戦していたため、そのまま後ろから挟み撃ちにするような形で参戦した。
そのお陰か、真正面で1体を相手にするよりも楽に処理する事ができ、多少なりともポイントも獲得できたためありがたい。
「正直来てくれて助かったわ。どうしようもなかったから」
「いえ、こっちも遅れてごめんなさいね」
その後追加の天使が来ない事を確認した後に、私達のパーティと酔鴉、禍羅魔の2人、そしてCNVLと一度決闘したことがあるアルファ1……マーキスが集まり2つの区画合同での会議を行う事になった。
「あ、そうだ。ゲーム内配信ってのが出来るようになったんだろう?やってみようぜ」
「……そんなのが出来るようになったの?」
「今回のアプデから出来るようになったみたいですね。FPS、もしくはTPS視点のどちらかが選べて、尚且つ配信閲覧自体を所属している区画やフレンドかどうかで制限する事が出来るようで」
今回全くアプデ内容を仕入れていなかったため、新要素や新機能についての把握があまり出来ていないのがやはり痛い。
あとで時間を作って一度しっかり把握した方が良さそうだ。
「じゃあメアリー、配信お願い出来る?……もしかしてそっちのアルファ1もその要員かしら?」
『り!('ω')ノ』
「そうなります。ではこちらも配信を始めますか」
2人が配信を始めたのを確認してから、私達は今回の会議……天使や防衛戦についてどう対応するのかについて話し合いを始める。
といっても、今も周囲では天使との戦闘が行われているため中身のない会議で時間を潰すわけではない。
「まぁまず前提として。デンス側のプレイヤー全員の行動を縛ることはできないからそこは分かって頂戴な」
「それくらいは分かってるわ。こっちのオリエンスもそうだしね」
そう、まず前提として……私達は本当の意味でのリーダーではない事をしっかりと配信上で宣言しておかなければならない。
私達に他のプレイヤーを従わせる権限など存在していないし、そもそもそんなリーダーなんて役職が存在しているのならば、私なんかよりももっと適任がいるはずなのだから。
うちの区画ならばスキニットとか。
「ここで決まったことは後で【立会人】によってきちんと掲示板に流して多数決するからよろしくお願いするわ。代わりにデンスとオリエンスの各区画掲示板の方のコメントは拾っていくから、そっちで誹謗中傷はお願いね」
「今回もデンスのスキニットさんにお願いするつもりよ。本人はこの配信見てたらそのままオリエンスの噴水広場まできてくれると助かるわ」
何処かで悲痛そうな叫び声があがったものの、ある程度信用が置ける【立会人】というと彼しかいないために仕方ない。
マギに視線を送って個人的に連絡をさせてはおくが。
「よし、じゃあ前置きはここまでにして……。この天使たちをまずどうにかしないと、ってのがあるのよねぇ」
「中央区画に集まってるってのは知ってるけれど……実際どれくらい集まってるのか分かる?」
「マーキス」
「はい、うちのパーティが撮ってきたスクショがこれですね」
そういって渡されたウィンドウに表示されたスクリーンショットには、何処かで見たような天使の姿が大量に映っていた。
それらの隙間から見える風景や地面から中央区画であることは分かるものの、それ以外から情報を読み取ることが困難なくらいだった。
「一応、配信にも見えるようにするわね。これについて更に情報があったら掲示板の方に投稿しておいてくれると助かるわ」
「……あれをどうにかするって考えると、総力戦とかそういうレベルにならないかい?」
「確かに。オリエンス側じゃそこらへんっていうのは考えてあるのかしら。デンスならそうね……とりあえず有志を募って、そのメンバーでの攻略にはなるだろうから少数にはなると思う」
私達のパーティは参加するとして。
参加してくれそうなのが他に何人いるのか、というレベルだ。
スキニットのパーティは重要施設の防衛に当たってもらいたいため、それ以外……となると、普段交流しているプレイヤーを中心に考えるしかないのだが。
私が交流を持っているとなると、やはりバディや赤ずきんなどソロで活動している事が多いプレイヤーとなっていく。
……流石に決闘をしたことあるからって交流があるとは言えないだろうし……面倒ねこういう時は。
仕方ない、と少し溜息を吐きながら掲示板にも目を向ける。
本当に誹謗中傷を書いている者もいれば、私達の話している内容を一緒に考えてくれている者もいる。
他の案を提案している者もいるため、これはまた別に掲示板用の人員が居た方が良さそうだ。
「マギ、掲示板お願い。良いのがあったらピックアップして」
「了解です……と、さっそくなんですけど」
「ん?デンス側のプレイヤーは中々積極的に参加してるのね」
酔鴉が驚いたように目を見開くが参加しているといっても、コメントをしてくれている彼らは各パーティの掲示板係……掲示板によって情報を収集する係か何かだ。
一見真面目そうにコメントをくれていても、その実パーティ側の士気が低ければ実際の戦闘には参加してくれない可能性も高い。
案を出してくれるだけありがたいが。
「あは、良い子達だぜ?今度交流してみるといいさ」
「検討してみるわ。……で、ごめんなさい。早速ってのは?」
「大丈夫ですよ。……単純に『ここの2つ以外の区画と共に攻略したらどうか?』というものです」
そう言って、マギがコメントから拾った案を聞いた私と酔鴉は渋い顔をした。
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