Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第四章 天使にレクイエムを

Episode 11

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--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画 デンス セーフティエリア
■【印器師A】ハロウ

リアル時間午後21時。
ゲーム内アプデが終了し、いつものようにセーフティエリアへと降り立った私に待っていたのは、いくつかの称号取得通知と今回のアップデートから実装された『犯歴キャリア』のヘルプ通知だった。

--System Message 『称号【偽善を振りかざす者】を獲得しました』
--System Message 『称号【印を操る者】を獲得しました』

「称号の方は……まぁ少し待ちましょうか。どうせCNVL達と合流するなら一緒に見た方がいいわね。問題は……」

そう、問題は『犯歴』の方だろうか。
キャラクターメニューから呼び出せた『犯歴』の画面は、何かの液体が半分ほど入った試験管のようなものが1つと、いくつかの項目が存在していた。

「うん、『スキルカスタマイズ』に『一時効果付与』。……こっちもCNVLと合流した方が分かりやすそうね」

事前の説明だと、この『犯歴』というものは自身の【犯罪者】に似合った事……【食人鬼】ならば食人行為などを行った場合に蓄積されていく、らしい。
それによって蓄積されたポイントを使うことで、スキルのカスタマイズやその他の色々な効果を得る事ができるそうだ。

試しにスキルカスタマイズの項目をタップしてみると、私の取得しているスキルが一覧となって表示された。
特殊スキルである【強欲性質】は選択できないように灰色の表示にはなっていたが。

「色々ありそうね……よし、とりあえず行きましょうか」

弄っていたらキリがなさそうだと判断し、全てのウィンドウを閉じてセーフティエリアからデンスの第二階層へと移動する。
今日の集合場所は、以前私と酔鴉が決闘をしたコロッセウムが見える広場。
近くにメアリーやCNVLが利用している鍛冶場もあるため、アクセス的にも広さ的にも便利なのだ。

「ん?!おぉ、リーダーじゃないですか!どうも!」
「?……あら、バディ。今日もコロッセウム?それとも【決闘者の墓場】の方かしら」
「今日は一応【決闘者の墓場】ですね!ソロなので厳しいっちゃ厳しいですけど!」

ぼーっといつもの面々をベンチに座って待っていると、声を掛けられる。
何かと思いそちらへと顔を向けてみれば、最近知り合ったプレイヤーであるバディが笑顔でそこに立っていた。
生産系の【犯罪者】でありながら、以前行われた決闘イベントでCNVLと真正面から戦えていた武闘派だ。
当然、決闘者として登録もしているため私も何回か戦った事がある。

「成程ね、どこまで行けた?」
「今の所3階層です!所持品的に厳しくなって削りきられるんですよ」
「あー……貴女のスキルも使いすぎると危険だものね」
「そうなんですそうなんです!涙とかを使おうにも【脱水】とかの状態異常になっちゃうんで……!」

彼女の【犯罪者】である【狂画家】は、CNVLほどではないものの、人から採れる素材に依存している。
簡単に言えば、彼女が言ったように涙などを絵画用の素材として指定する事が出来るのだ。
それに加え、彼女がCNVLとの決闘で見せたように体液などを操って攻撃に転用することも可能という……かなり汎用性の高い【犯罪者】なのだ。

「おっと、ダンジョンアタックなら引き止めちゃ悪いわね。何か助けになれたら言って頂戴」
「私から話しかけましたから大丈夫です!こちらこそ何かあれば!では!」

彼女の用事を邪魔してはいけないと思い、手を振って別れる。
それと同時にこちらへと近寄ってきている小さな人影へと話かけた。
無論、パーティ申請を送りながら。

「……そろそろ私達以外にも慣れなさいよ、メアリー」
『が、頑張ってるんだけどねぇ(-_-;)』
「最近は広場でも出店してないでしょうに。まぁ今の貴女が露店出すと色々と騒ぎになるの分かるけれど」
『正直、露店出すよりも素材売却してる方が利益出ちゃってるからね(´・ω・)……それはそうと!(゜д゜)!『犯歴』弄った?』

露骨な話題逸らしに少しだけ苦笑しつつも、メニューを操作して『犯歴』のウィンドウをメアリーにも見えるように出現させる。

「まだ何も。ほら、うちにはもうこのゲージが限界まで溜まってそうなのが1人いるでしょう?」
「あは、誰の事かな?まぁMAXなのは否定しないけど」
「あらCNVL、それにマギもいるわね。丁度いいわ、確認していきましょう」

噂をすれば何とやら。
丁度先輩後輩組CNVLとマギが合流し、そのまま第二階層の喫茶店へと移動し適当に雑談混じりに『犯歴』について話し始めた。


「と、言っても私もまだ何も弄ってないんだけど……これくらいはやろうかなって所かな」

そういってCNVLは見せてきたウィンドウには、スキルカスタマイズの画面が表示されていた。
それも【あなたを糧に生きていくカニバリズム】という、彼女の代名詞ともいえるスキルだ。

よくよく見て見れば、色々と弄れる項目があるようで。
『回復率』、『コスト』、『持続性』とスキルに関係のありそうな項目から、【あなたを糧に生きていく】には必要ないであろう『攻撃性能』など、多岐に渡る。
そして、それらの項目の横にはローマ数字が表示されている。

「この数字は?」
「その項目の強さ、私達で言うレベルっぽいぜ?元は全部Ⅰで表示されてたし」
「ふーん……じゃあ『回復率』と『持続性』のレベルを上げてるのね。しかもⅤまで」
「あは、ⅠからⅤまであげるのにほぼほぼゲージ使っちゃってねぇ。ちなみにⅤで限界っぽいよ。これ以上は上がらなかったし」

笑いながら言う彼女に少しだけ呆れながら。
人柱になってくれた事である程度分かったことをマギと共にまとめることにした。
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