Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

文字の大きさ
上 下
101 / 192
第三章 オンリー・ユー 君だけを

Episode 33

しおりを挟む

--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画 デンス 第二階層
■【印器師A】ハロウ

程なくして、CNVLに作ってもらっていたトンカチが完成し、それに対しての彫刻も完了した。
彫った印は攻撃、防御、再生、拡張、俊敏のバフ系5個と、諸刃、脆弱、阻害、空目、鈍足のデバフ系5個の計10個。

バフ系の印はCNVLとマギは一度見たことがある為、ある程度なんの印かは察しがついていたようだが、デバフの方は見せるのは初めてだった為困惑顔だ。

デバフの5個、それぞれの効果を説明するとすれば、

・諸刃:捺印された相手の与ダメージを一定時間低下させる。
・脆弱:捺印された相手の被ダメージ量を一定時間増加させる。
・阻害:捺印された相手のHP回復効果を一定時間無効化する。
・空目:捺印された相手の攻撃射程を一定時間短くする。
・鈍足:捺印された相手の俊敏性を一定時間低下させる。

というもの。
長ったらしく書いたものの、簡単に言ってしまえばバフ5個の対となる性能のものを彫っただけだ。
これらも一応、初心者向けの印の為効果は低い。

「トンカチにして欲しいってのはそうやって使うためだったのかぁ」
「一応これでも問題はないみたいだから。【印器乱舞】だと、どっちかを指定するように指示されるし運営的には想定内のはずよ。効果量のバグについては……ほら、さっき公式で修正したってアナウンス出してる」
「あ、ホントだ。仕事早いねぇ」

私はそれらの印を、トンカチの頭……通常使う面にバフを、反対側の面にそれに対応したデバフを彫り、効果がキチンと発揮されるかを確かめておく。

今回は無駄にMPを使いたくはなかったため、キットの中からインクを取り出し付着させ、【印器乱舞】でどちらも指定できるかを確認した後、近寄ってきていた他のプレイヤーへとデバフ面を捺印させておく。

『あー、あれPKプレイヤーだね。掲示板であの名前見たことあるよ( ・∇・)』
「あらそう?もしあれだったら他のデバフも入れるから掲示板経由で引き取ってもらいなさい」
『はーいd( ̄  ̄)』

動作確認しつつ、全体的に問題がないと判断し私達は早速【決闘者の墓場】へと向かう。
まだ私のレベルが8に届いていないため、少しばかり3Fで戦うことにはなるが……まぁ問題ないだろう。
少し試したいこともある。



--第二区画 第二階層ダンジョン 【決闘者の墓場】 3F

「あー……やっぱりそうなるわよねぇ」
「ある意味無敵だねぇ。これはこれでまたいいんじゃない?」
「経験値稼ぎにはなりませんけどね」

私が確かめたかったことは単純で。
このダンジョンに出現する敵性モブであるスケルトン達の習性?の確認だ。

習性といっても、主に確かめるのはその弱点とも言える液体を異様に嫌がる点だけなのだが。
では何を使って確かめるかといえば、

「【洋墨生成】だけでこうなるなんてねぇ」

インクを生み出すこのスキルだろう。
このスキルを使うと、私の周囲に白く濁った半透明な液体が出現……いや、私の身体から湧き出ると言った方が正しいだろうか。
そう、インクとはいえ液体。
それも発動後は消費していかない限り私の周囲の空中を漂うように存在しているのだ。

この状態でスケルトンに近づいたり、戦闘中に使った場合どうなるのか。
結果から言えば、汚物に対するような反応をされて避けられた。
少しだけ、本当に少しだけショックだった。

「とりあえずここでハロウが8レベくらいになるまでレベリングかな」
「まぁそこまで時間はかからないでしょう。数も多いし、シェイクスピアと違ってここは最前線ともいえるダンジョンなんだし」

そんなことを言いながら、私達は少し移動しギミックのある扉を探すことにした。
態々スケルトンを探すよりも、スケルトン側に来てもらった方が楽だと考えたためだ。
危なくなっても近くにいるスケルトンに関してはインクによって自分からは近寄ってこないし、遠距離系に関しては、

『2Hit!』

調子が良いらしいメアリーによって、射線が通った瞬間に倒されているためそこまでの脅威とならない。
やはりレベル上げや素材集めだけ見れば良いダンジョンなのだろう。
攻略する側から言わせてもらえばクソと言いたいが。

と言っても、メアリーだけに戦闘を任せておくのは流石に申し訳ないため私も参加する。
【印器乱舞】によって、インクによって近寄ってきていなかった近接系のスケルトン達3体を指定し、それぞれに脆弱、空目、鈍足の印を捺印させていく。
諸刃と阻害を使わない理由は単純にこちらに近づいてこないし、HP回復程度どうとでもなるからだ。

代わりに自分に対して攻撃を付与した後。
懐かしくも心許ない武器である使用済みナイフを手に持って鈍足の印を捺印したスケルトンに接近し、力の限り頭蓋骨へとナイフを叩きつけた。
攻撃の印のお陰か、それともクリティカルが入ったのか。そのまま半壊した頭蓋骨は光へと変わり、程なくしてその全身も光となって消えていく。

周りのスケルトン達は私の周りに漂うインクを嫌がり近づいてこない為、このダンジョンでは終始出来なかった各個撃破が安定して出来る。
それだけでもかなりストレスが軽減されているのが分かり、少しだけ笑みを浮かべてしまう。

「よし、レベル上がるまでやるわよ!メアリーはある程度在庫の消費抑えて!」
『あいあい!(・∀・)』

こうして、目標である8レベになるまでギミック部屋を周っては耐久するという周回を繰り返した。
予想以上に楽に進んだため、最後の方など世間話をしながら倒していたくらいだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セルリアン

吉谷新次
SF
 銀河連邦軍の上官と拗れたことをキッカケに銀河連邦から離れて、 賞金稼ぎをすることとなったセルリアン・リップルは、 希少な資源を手に入れることに成功する。  しかし、突如として現れたカッツィ団という 魔界から独立を試みる団体によって襲撃を受け、資源の強奪をされたうえ、 賞金稼ぎの相棒を暗殺されてしまう。  人界の銀河連邦と魔界が一触即発となっている時代。 各星団から独立を試みる団体が増える傾向にあり、 無所属の団体や個人が無法地帯で衝突する事件も多発し始めていた。  リップルは強靭な身体と念力を持ち合わせていたため、 生きたままカッツィ団のゴミと一緒に魔界の惑星に捨てられてしまう。 その惑星で出会ったランスという見習い魔術師の少女に助けられ、 次第に会話が弾み、意気投合する。  だが、またしても、 カッツィ団の襲撃とランスの誘拐を目の当たりにしてしまう。  リップルにとってカッツィ団に対する敵対心が強まり、 賞金稼ぎとしてではなく、一個人として、 カッツィ団の頭首ジャンに会いに行くことを決意する。  カッツィ団のいる惑星に侵入するためには、 ブーチという女性操縦士がいる輸送船が必要となり、 彼女を説得することから始まる。  また、その輸送船は、 魔術師から見つからないように隠す迷彩妖術が必要となるため、 妖精の住む惑星で同行ができる妖精を募集する。  加えて、魔界が人界科学の真似事をしている、ということで、 警備システムを弱体化できるハッキング技術の習得者を探すことになる。  リップルは強引な手段を使ってでも、 ランスの救出とカッツィ団の頭首に会うことを目的に行動を起こす。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

Reboot ~AIに管理を任せたVRMMOが反旗を翻したので運営と力を合わせて攻略します~

霧氷こあ
SF
 フルダイブMMORPGのクローズドβテストに参加した三人が、システム統括のAI『アイリス』によって閉じ込められた。  それを助けるためログインしたクロノスだったが、アイリスの妨害によりレベル1に……!?  見兼ねたシステム設計者で運営である『イヴ』がハイエルフの姿を借りて仮想空間に入り込む。だがそこはすでに、AIが統治する恐ろしくも残酷な世界だった。 「ここは現実であって、現実ではないの」  自我を持ち始めた混沌とした世界、乖離していく紅の世界。相反する二つを結ぶ少年と少女を描いたSFファンタジー。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

処理中です...