Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第三章 オンリー・ユー 君だけを

Episode 31

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--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画 デンス 第一階層
■【偽善者A】ハロウ

とりあえず、ということで作っていた印章ではあったものの。
正直な話、実際に実戦で使えるのは数が少ないだろう。
今の状況バグありで確かめる気はないものの、感覚強化系のバフに関して言えばマギの薬で十分だったり……それこそ、私のような近距離戦闘型には使えない遠距離攻撃にボーナスが入るような印も存在した。

では何故それが分かっていながらも作っているかと言えば……まぁ、使うのは私だけではないからだ。
それこそ感覚強化に関して言えばマギの薬があるものの、それを節約したい時用にパーティ人数分揃えておいて損はないだろうし、遠距離攻撃ボーナスだってメアリー達に渡せば上手く使ってくれるだろう。
それに私の印章を作る技術面の実力が上がっていけば、複数の印を彫刻した印章をもっと簡単に作れるようになるかもしれないからだ。

「……そういえば、使ってなかったけれどハンマーとかに印彫って効果って発揮するのかしら」

こんな感じに思いついては、試し。
暇そうに第一階層をぶらぶらしていたCNVLを捕まえ武器類を作らせて印を彫っていれば、

--System Message 『ランクアップ条件を達成しました』
--System Message 『【印職人マーカー】になることが可能です』
--System Message 『ランクアップ条件を達成しました』
--System Message 『【印器師シギル】になることが可能です』

そんなログが突然視界の隅に流れていった。

「うぉう」
「ん?どうかした?」
「あ、えぇ。一気に2個ほどランクアップ条件達成したみたいでログが流れたのよ」
「おぉ、面白そうだねぇ。生産系?でも2つ?」

丁度近くで印を彫刻したハンマーが機能するかどうかを確かめていたCNVLと共に、新たに出てきた【犯罪者】の詳細を確認していく。
まずは生産系であろう【印職人】から。

―――――――――――
■【印職人】
汎用【犯罪者】。
印章を作り、加工する技術に長けている。
それ故、戦闘面は心もとない。
―――――――――――

―――――――――――
■ランクアップ条件
・レベルが10以上
・印章作成数が規定数を突破(50/50)
―――――――――――

「うん、普通の生産系の上位って感じね」
「でもうちのパーティでハロウまで後方に回る事になるよね?コレとったら」
「えぇ、だからこっちは考えなくていいわ。あとで掲示板にでも投げておきましょう。多分私以外にも出てる人はいるでしょうけど……まぁ、一応ね」

印章を作ることに特化した生産系の【犯罪者】である【印職人】は、そのフレーバーテキストにあるように戦闘面ではあまり役には立てないらしい。
うちのパーティのメンバー構成上、私が後ろに行ってしまうとその分CNVLが1人で前衛を務める事になり負担が大きくなってしまう。
まぁ、今も大きいのだが。主に【偽善者】の所為で。

―――――――――――
■【印器師】
汎用【犯罪者】。
印章を作り、それを武器とする技術に長けている。
―――――――――――

―――――――――――
■ランクアップ条件
・レベルが10以上
・印器の作成数が規定数を突破(3/3)
・戦闘中に印章使用数が規定数を突破(10/10)
―――――――――――

「印器って何かしらね」
「んー……。あぁ、成程。ほらハロウ、このハンマーの武器種の所が『印器:槌』ってなってる」
「あら本当。じゃあ単純に印章を使った武器の略称か……なるほど」
「こっちなら戦闘も出来そうだねぇ。どうするんだい?そもそもの話、ランクアップするのかどうかって所だろうけど」

CNVLの言う事は尤もだ。
現在の私の【偽善者】という【犯罪者】は色々とまぁ……やりやすい。
それこそヘイト管理だったり、スニーキングだったりと他のプレイヤーには今はない強みがある。

「正直、迷うわよねぇ。印章作りだって、最初は暇つぶしで始めたようなものだし」
「でも結構ハマってるよねぇ」
「それはいいじゃない。意外と複数の印をどう入れるか考えるの好きなのよ」

言ってしまえば、私は今印章作りにハマっている。
そこらへんで暇をしていたCNVLを巻き込む程度にはハマっているのだ。
……んー、一応確認はしましょうか。

突然ヘルプを開きだした私を見て、軽く目を開くCNVLは私の開いた項目を見て納得したように頷いた。
私が開いたのは、『ランクアップ』のヘルプが載っている項目。その中でも、一度なったことのある【犯罪者】にもう一度ランクアップする事が出来るのかどうか、その記述が載っている部分を探していく。

「……あぁ、あったわ。なるほど、一回条件達成したら後はいつでもランクアップ自体は出来るのね。レベルは必要だけど」
「あは、ということは?」
「【印器師】になりましょう」

短くそう言って、私は【印器師】へランクアップした。

--System Message 『Crime rankup! 【印器師】』
--System Message 『ランクアップに伴い、【偽善者】にて取得したスキルの変更を行います』
-【偽善活動】から【洋墨生成】に変更-
-【メイクビリーブ】から【デュアルシギル】に変更-
-【真実の歪曲】から【印章暴走】に変更-
-【虚言癖】から【印器乱舞】に変更-
-ランクアップに伴い、レベル12から1に変更-
-処理が完了しました-

以前、区画順位戦中に見たように自身のスキルが置き換わっていく。
生産系に近い【犯罪者】のため、戦闘系のスキルが少なくなってしまうかもしれないと思っていたが、名前だけみるとこちらの方がよほど【偽善者】よりも攻撃的だ。

「お、終わったかな?」
「えぇ、終わったわ。とりあえずレベル上げるまでは普段の武器が使えなくなるから早くレベリングしちゃいましょう」
「いいね、じゃあ手伝うぜ。どこ行く?」
「んー、2人だし【劇場作家の洋館】のノーマルのシェイクスピア周回すればいいんじゃないかしら?」
「おっけー、じゃあ行こうか」

新しい【犯罪者】となった私は、まず自身の得物が使えるようになるためにレベルを上げる作業へと移っていった。



ーーーーーーーーーー
PLName:ハロウ Level:1
【犯罪者】:【印器師A】
所属区画:第二区画 デンス

・所持スキル
【洋墨生成】、【デュアルシギル】、【印章暴走】、【印器乱舞】、【強欲性質】

・装備品
使用済みナイフ、平凡な囚人服【上】、平凡な囚人服【下】、【人革の手帳】、【人革の腕輪】【革造りの網】

・称号
【第二区画所属】、【娯楽を解放した者】、【本当の娯楽を知った者】、【廃都の決闘者】
ーーーーーーーーーー
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