Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第三章 オンリー・ユー 君だけを

Episode 11

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--第二区画 第二階層ダンジョン 【決闘者の墓場】 3F
■【偽善者A】ハロウ

3Fを暫く進んだ後。私達は全力でダンジョン内の通路を走っていた。

「だぁああ!!肉体は疲れないって言っても限度はあるのよ!?」
「なら迎撃でもするかい!?」
「却下!却下で!!ここであの量と戦闘したらそのまま帰還コースですよ!?」
『にゃああああああああ(ToT)/~~~』
「「「君だけ余裕あるじゃん!」」」

若干、全員が全員キャラ崩壊を起こしながらも壁にぶつからないように注意しながら走っていく。
ちら、と背後へと視線を送れば。
そこには大量の骨の犬、人がこちらへと向かって走ってきていた。
ほぼほぼ走る速度は同じなのか、距離を詰められることはないものの。

私から見ても戦闘狂であるCNVLが真っ先に逃げの判断を下したほどの数だ。
総数は数十にも渡る。
……今だけはダンジョンの仕様がパーティ毎で助かったというべきかしらね……。
他のパーティが居る中で、こんな大勢を引き連れ走り回っていたらモンスタートレイン……つまりは迷惑行為として運営に通報されていたかもしれない。

こうなってしまった理由、経緯は実の所簡単で。

―――――――――――――――――――――

『あは、ハロウ。あそこにまたドッグがいるぜ?』
『あー、あの位置だと確実に気付かれるわね。速攻行ける?』
『任せて。さっきはマグロ包丁のみだったけど、今回は他のも使うから1人である程度削れるはず』

数分後。

『アォオオォオォォォォォォォオン!』
『撤退ッ!』
『CNVLゥ!!』
『ごめんって!イケるかなって思ったんだって!!』

―――――――――――――――――――――

とまぁ。
言ってしまえば、チャレンジさせた私とチャレンジしちゃったCNVLの2人が悪い。

「で、実際どうする?アレ放置したまま次の階層行けないだろう?」
「そうなのよね。どうせまた水晶のギミックの先に階段あるだろうし……んー、マギ」
「何です?」
「ここで戦闘を行うとして回復薬、強化系の薬はその後どれくらい残りそう?」
「そうですね……最低でも次の階層の探索分くらいは。その次になると流石に分からないです。水、というか液体があれば作れなくはないんですけど……あぁ、先輩腕を切る動作をしなくていいです。どうせ作れな……いや、もしかして作れるのか?」

何やら考え始めてしまったマギの事を放っておきながら。
今の答えを聞いて、考える。
私達のパーティに迫られている選択肢は実の所2つしかない。

1.後々ジリ貧になることが分かっていながらも戦闘を行う。
2.この場を逃げ続け、ギミック部屋の前で戦闘を行う。

どちらにしても、戦闘は確定事項。
その結果が全滅か、それとも誰も欠けずの勝利かはまた別の問題にはなるものの。
そのどちらかを選ばなければならない。

「……よし、戦いましょう。マギは薬を出来る限り温存。CNVLは攻撃受けてもいいけど自分のスキルで何とかして。この量だと流石に【虚言癖】で釣ると私がすぐに落ちるから」
「「了解」」
『私は?('ω')』
「メアリーはいつも通りに。爆発中心でいいわ。こっちで合わせるから、隙の出来た奴を中心にお願い。ヘイト引きすぎないように注意して」
『りょ!('ω')ノ』

作戦会議は簡単に。
走るために仕舞っていた【HL・スニッパー改】を取り出して、すぐに双剣へと分解する。
戦い方を構築していきたいといえど、相手の量が量の為に隙の多いハサミの状態では戦えないと判断したためだ。

他のメンバーも同じように自分の得物を取り出して。
戦闘を走っていた私とCNVLがくるりと反転し、後ろから迫ってきていたスケルトンたちを迎撃するために地を蹴り、メアリーとマギを追い抜いて彼らとモブ達の間に立つ。

「さ、気合を入れようか」
「元はと言えば私達の所為だしね。在庫は?」
「十分。割とスケルトンたちはアイテム落としてくれるからね」
「了解、じゃあやりましょうか」

軽く言葉を交わし、私達は武器を構え。
止まった私達2人に対し、好機と思ったのか飛びかかってきたスケルトンドッグをそれぞれ双剣とマグロ包丁で受け止めつつ。
それが開始の合図となったのか、自業自得の戦闘が始まった。


自分の頬を、前から飛んできた矢が掠める。
恐らくは3Fから追加された弓矢を持ったスケルトンの放った矢だろう。頭に当たれば問題だが、それ以外の場所ならば問題にはならない。
むしろ、今のように外した時はこちらの好機となる。
そのまま私の後ろから同じコースを辿り、矢よりも短い何かが飛んでいく。

『hit』

日本語を撃つ暇も惜しいのか、短く命中させたと報告してくれるメアリーに少しだけ頬を緩めながらも、私も私で目の前……というよりは周囲の敵に集中する。
剣、ナックル、こん棒、ハンマーといった多種多様な武器による攻撃を避け、時に逸らしながら。
両手に持った剣を振るい、確実にダメージを稼いでいく。

幸い今現在戦っている通路はあまり広くなく、人が横並びになると2人程度までしか広がる事の出来ないくらいには狭い。
そのおかげか、物量で圧されるという事は起こっておらず。
ある程度戦いやすい状態で戦い続ける事ができている。
……でも長くはなりそうねぇ。これ。
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