Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

文字の大きさ
上 下
69 / 192
第三章 オンリー・ユー 君だけを

Episode 3

しおりを挟む

--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画 デンス 第二階層
■【偽善者A】ハロウ

製作者CNVLへのフィードバックがある程度終わった頃。
その間ずっと撫で続けていたメアリーが唐突に顔をあげ、辺りを見渡し始めた。
今もローブを頭から被っているために見づらいものの、その顔は驚きに染まっている。

『あれ?ここは?(´・ω・)』
「あら、やっと周囲に気が付いたのねメアリー」
「あは、決闘もしてたし結構な音もなってたはずなんだけどねぇ」
『え?あれハロウ?('ω')??』

少し混乱している様子のある彼女へ、私とCNVLがある程度の説明を行い。
CNVLが工房から連れ出した理由を話し出した。

「まぁ、悩みすぎても仕方ないからね。気分転換にー……って思ったんだけど」
『あー……ごめん(´・ω・)全く気が付いてなかった(;´Д`)』
「だろうなぁとは思ってたよ。一応了承は取ったんだけどね?」

CNVLが言うには、外に出る際に声を掛け、メアリーがそれを了承したため連れてきたとのこと。
恐らく空返事していたのだろうが、少し集中しすぎだろう。
彼女はそれから私の方を見て、ここ1ヵ月の間に少しずつ見せてくれるようになってきた笑顔を向けながら、

『あぁ、でも安心して!('ω')!防具の新調の目途立ったよ!』
「本当?それは嬉しいけれど、しっかり休むのよ?無茶だけはダメ」
『分かった!(*‘∀‘)』
「それならいいわ、頑張ってね。私の事は気にせずに遅くなっても構わないから」

メアリーはそう言った。
だが、精神だけとは言え疲れはするこの世界で、無茶だけはいけないときちんと釘は刺しておく。
しっかりと返事をしてくれたため、もう一度だけ頭を撫でた後に私はベンチから立ち上がる。

CNVLと話し合っている時に、この後に【決闘者の墓場】に運動がてら行かないかという話題も出ていたのだ。
私は酔鴉との決闘で掴みかけていた双剣の感覚を、CNVLは単純に座りながらの作業がここ最近多かったために。
そんなわけで二人してメアリーに別れを告げ、決闘場の方へと向かって足を進め始める。

「あ、そういえば今日マギは?」
「マギくんは今日は居残りだね。今日提出する課題を出すの忘れてたとか何とか言ってたよ」
「大変ね、学生も」
「あは、半ばニートみたいな生活をしてるお姉さんから言われると煽れてるみたいだぜ」

適当な事を話しつつ。
既に慣れた手順で決闘場の中へと入り、ダンジョンの入り口がある方向へと歩いていく。
一応は昔からあるはずの決闘場は手入れがきちんとされているのか、石造りの建物内部を見ても汚い部分はパっと見た程度では汚い所は見当たらない。

そうやって奥に進んでいけば。
下へと続く階段が存在し。その周囲にはデンス所属であろうプレイヤーが数人集まってミーティングのような事をしていた。
近づくとこちらに気が付いたのか、皆が皆何かしらの挨拶を返してくれる。
その中にはやはり私の事を『リーダー』と呼ぶ声も当然あって。

「私はリーダーじゃないって言ってるのに……」
「もう結構広まっちゃったし諦めた方が早いと思うよ?特に掲示板じゃハロウがまとめ役って認識の人のが多いみたいだし」
「私がやったのだって割と誰でも出来るような事なんだけど……はぁ、まぁ言ってても仕方ないわね。とりあえず行きましょうか」

そう言って、久々の2人パーティでダンジョンの入り口である階段の目の前へと立ち。
それぞれの得物を持ってその階段を下りていく。
私は【HL・スニッパー改】を、CNVLは【菜切・偽】を。
……思えば、最初に【劇場作家の洋館】に挑んだのもCNVLとのペアだったわね。なんだか懐かしいわ。
そんな事を考えながら、暗闇の中を下りていけば。

--第二区画 第二階層ダンジョン【決闘者の墓場】1F

視界の隅にそんな文字が出現し、私達は明るい広場のような場所へと出る。
周囲は石造りの迷路のようになっていて。所々石が剥がれ、土の壁がむき出しとなっている場所も存在する。
海外に存在する、集団埋葬場所であるカタコンベ。
それがこのダンジョンを説明するのに適した言葉だろうか。

入口である現在地点から少し離れればここの住人……いや、埋葬されたであろう元人のスケルトンが出現し、こちらへと襲い掛かってくるこのダンジョンは、今だ私達のパーティも3F以降にたどり着けていないデンスの攻略最前線だ。

「今日もやりますかーっと。どうやって進んでく?」
「そうねぇ……とりあえず動きの確認とかが目的だから、スケルトンを見かけたら喧嘩を売るってスタイルで行きましょう」
「いいね、そっちのほうが私達向きだ」

簡単に作戦会議を終了し。
私達は奥へと進んでいく。
きちんとした攻略自体は他のパーティメンバーの2人がきちんと揃った時に。
今回はあくまでも確認を目的に。



「ハロウ!そっち行った!」
「了ッ解!」

右に持つ剣を振るい、左に持つ剣で近くのスケルトンから振るわれた剣を受け止める。
そしてCNVLの方へと顔を向ければ、確かにこちらへと走ってくるスケルトンが2体ほど。
……あぁ!もう!単純に数が多い!
近くにいたスケルトンたちを押し返し、近づいてきたスケルトンへと対応する。
これが・・・このダンジョンの厄介な所だ。

正直な話、私達のパーティの練度ならばこのダンジョンの敵……スケルトン程度ならばあまり苦戦はしない。
では何故攻略が進んでいないか?答えは簡単だ。

「本当に厄介ね……パーティ組んで・・・・・・・襲ってくる・・・・・のは!!」

そう、スケルトンたちはプレイヤーを真似してか、それとも生前の記憶でも残っているのかそれぞれ役割分担をし、大体4~5体ほどの集団で襲い掛かってくるのだ。
前衛であるタンク役、遊撃のアタッカー役、後方支援のバッファー、ヒーラー役とその割り振りはその時々で変わるものの、大体はそんなふうに分かれていて。
それぞれの役割に沿って装備もしているために、単純に相手にするのが大変なのだ。

第一階層と第二階層の違いということだろうか。
【劇場作家の洋館】で行っていた私刑のような戦闘ではなく、パーティ単位での戦闘。
ある程度連携は取れているものの、相手が3~4パーティになってくると話が変わってくるというもの。

「あはッ!でもこれでここのスケルトンはラストッ!」
「そう、ねッ!」

CNVLの声に合わせるように、右の剣を振るい。
それを盾で受けたスケルトンがよろけるのを確認しながら蹴りを入れ、完全に体勢を崩させ。
その無防備となった頭蓋骨へと左の剣を突き刺し破壊する。
一瞬、神経も血も通っていないはずの身体がびくんと跳ね、そのまま光と変わっていく姿を見て何とも言えない気持ちになる。

「ふぅー……お疲れ。もう割と双剣の扱いは大丈夫みたいだねぇ」
「えぇ、無駄に戦闘できるからやっぱりこのダンジョンは『経験を積む』って意味では良いわね。それ以外は今の所嫌な要素しかないのだけれど」
「まるで何かを守ってるみたいだもんね、巡回兵みたいな」
「そうそう、それなのよ。いっちょ前にスポーンしてから警備みたいな事してるからまた面倒なのよね……」

そんな事を話しつつ。
私とCNVLはある程度自分の目標を達成したため、今日はこの辺りで解散することにした。
デスペナルティになっても仕方ないし、偉い人も言っていた。
『まだ行けるは、もう行けない』と。誰かは覚えていないが。

そんなこんなで入り口へと戻ってきた私達は、そのまま外に出てログアウトを行った。
次全員時間が合うときにダンジョンの攻略を進めよう、そんな話をしながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

異世界コンビニ

榎木ユウ
ファンタジー
書籍化していただきました「異世界コンビニ」のオマケです。 なろうさん連載当時、拍手に掲載していたものなので1話1話は短いです。 書籍と連載で異なる部分は割愛・改稿しております。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

異端の紅赤マギ

みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】 --------------------------------------------- その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。 いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。 それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。 「ここは異世界だ!!」 退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。 「冒険者なんて職業は存在しない!?」 「俺には魔力が無い!?」 これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・ --------------------------------------------------------------------------- 「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。 また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・ ★次章執筆大幅に遅れています。 ★なんやかんやありまして...

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

処理中です...