Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第二章 【食人鬼】は被食者の夢を見るか?

Episode 28

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--イベントフィールド 【決闘者の廃都】 
■【食人鬼A】CNVL

あの後、すぐにグリンゴッツによる転移が行われ、私は最初の……このイベントが開始した時に転移させられた初期エリアへと再び訪れていた。
周囲には私の他に3人。
その内2人は知り合いで、1人は完全に知らないプレイヤーだった。

「やぁ、ハロウ」
「あら。勝ってきたのね、お疲れ様」
「そっちもね。掲示板見る限りだとすっごいことになってたみたいだけど」
「おかしいわよね。私は普段通りに戦ってただけなのに」

知り合いのうちの1人である、頭のおかしい奴ハロウへと話しかける。
暇な時、決闘イベントのリアルタイム実況が行われている掲示板を適当に流し読みしていたが、それだけでも彼女がかなり狂っていたのはわかる。

「いや、君普段笑いながら敵に突っ込んではいかないだろう」
「そうだったかしら」
「……自覚がないのが一番厄介なんだよねぇ」

笑いながら巨大なハサミを手に、相手へと突っ込んでいくその様は、まさに狂人か何かだろう。
たまに私も笑いながら突っ込んでいくため、あまり人の事は言えないのだが。

そんな風な話をしていれば。
最早聞き慣れたあの音が響き、グリンゴッツが出現した。

『全員転移が完了したな?現在この場に居るこの4人が予選突破者……つまりは、本戦出場者となる』
「敗者復活戦はどうなったの?割と気になるのだけれど」
『そちらについては現在裏で進行中だ。決まり次第こちらに突っ込む形となるだろう……さて。では本戦の組み合わせを発表しよう』

そう言って彼は、空中に巨大なウィンドウを出現させる。
すると、そのウィンドウに文字とトーナメント表が徐々にフェードインしていった。

「げぇ」

それを見た私は、通常出さないような……蛙が潰れたような声を出してしまった。
というのも理由は簡単で。
私の対戦相手が現在隣にいるハロウだったからだ。

「何よその声」
「いや、君は酔鴉さんと潰し合ってくれよ。私はどっちも面倒だから戦いたくないんだ」
「そんなに戦いにくいかしら、私」
「そりゃ目の前から突然消えるようなアタッカーは戦いにくいってレベルじゃあないだろう」

【偽善者】のスキルによって、相手の視界から無理矢理に消えるなど、正直彼女は真っ向から相手にはしたくない相手だ。
だからといって、格ゲーみたいな動きをすると言われていた酔鴉と戦いたいかと言われればそうでもない。

もう1人の名前が分からなかったプレイヤーはソーマというようで。
そういえばこの間掲示板を見た時に見たことがある名前だと思い出した。
……確かネース辺りのダンジョン初攻略者だったっけ。

パッと見は冴えない男性プレイヤー。
目が髪で隠れているために、視線がどこを向いているのかわからないというのが対戦する時に面倒な点だろうか。
あまりプレイヤーについては掲示板などで調べていないため、その程度の印象しか浮かばなかった。

『では、第一試合を開始する。それぞれ検討を祈ることにしよう』

彼がそう言った瞬間に、私の視界はいつも通り歪み転移が開始された。
出来れば広い空間よりも、閉鎖的な……狭い所で戦いたいなと思いつつ。
私の視界は闇に落ちる。



--イベントフィールド 【決闘者の廃都】 屋上エリア

次に視界が戻った時、私の目に映ったのはいつもよりも近い青い空だった。
周囲を見てみれば、人が落ちないように設置されている手すりが存在し。
所々穴が開いているものの、底が見えない闇となっている床部分があるそこは、高さ的にどこかのビルの屋上らしい。

廃墟ばかりだったこのフィールドでは珍しく、ある程度の形を保っているみたいだが、それでも強い衝撃を加えてしまえば倒壊する恐れもあるだろう。
そんなことを確かめていた私に近づいてくる足音が一つ。

ハロウだ。
彼女は愛用しているハサミを手に。満面の笑みでこちらへと歩いてきていた。

「カウントダウン、始まったわね」
「お手柔らかに頼むよ」
「本気で行くわね」
「本当に話を聞かないね」

先程までの話ができていた彼女とは違い、既に彼女は決闘モードとでもいうべき、頭のネジが外れた状態になっていて。
にやにやと普段の彼女では絶対しないような笑みを顔に浮かべていた。
仕方ない、とため息を吐きながら。
インベントリから【解体丸】と【菜切・偽】を取り出して、目の前の狂人と対峙する。

ナイトゾンビの腕の在庫は残り2。
ゾンビスポーナーの在庫は残り1と、多少心もとないが……何とかするしかないだろう。
深呼吸をして、構え。
対面の彼女も同じように構えているのを確認して。

カウントダウンが0になったのと同時。
私と彼女は同時に駆けだした。
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