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第二章 【食人鬼】は被食者の夢を見るか?
Episode 23
しおりを挟む--イベントフィールド 【決闘者の廃都】
■【食人鬼A】CNVL
私が一番最後だったのか、転移した先には既に私以外の3人が揃っていた。
その中でも目を引いたのは、やはり彼だろう。
「あれ、スキニットくん。居たんだねぇ」
「ん、気が付いてなかったのか」
「あんまり周りの事見てなかったからね。それに若干私の事怯えてる人もいたでしょ?」
「成程な……それなら仕方ないか」
つい最近、共に第二階層までを見学したスキニットがそこに居た。
彼は既に【立会人】にランクアップしていて、ある意味ではランクアップしたプレイヤーの中では一番知られている存在だろう。
なんせ、誰でも見れる掲示板に【立会人】の情報を投下しているのだから。
実力で見ても、デンスの中ではトップクラスに近いものを持っている。
トップであろう私達のパーティから見ても、彼の戦闘能力の高さはよく話題に上がるほどだ。
「いやぁ、君とは当たりたくないねぇ」
「それはこちらの台詞なんだがな……デンスのトップパーティのアタッカーと殺し合いたいとは思わん」
「あは、君からそう思われてるのは光栄だ。なら一緒に次の試合で当たらないように祈っておこうぜ」
「ふっ……そうするとしよう」
そんな冗談を言っていれば。
既に聞きなれてきた破裂音が響いてきた。
『失礼、待たせたな。ではそのまま第三試合といこう。既に勝手は分かったと思うが、そろそろ初歩的なミスをしだすのが人間だ。各自、死力を尽くして頑張ってくれ』
グリンゴッツはそう言って、再度どこかへと消えていった。
瞬間、私の視界も歪み始める。
「じゃあ、スキニットくん頑張って」
「あぁ、そちらも気を付けて」
咄嗟に口から出た言葉ではあるものの。
彼と戦ってみたいという気持ちはあるため、このまま勝ち残ってくれることを願い、そう言った。
彼の返答を聞いた後、私の視界は完全に黒く染まる。
次の相手は誰だろうか。
--イベントフィールド 【決闘者の廃都】 ショッピングモールエリア
数々の商品。それが荒らされたかのように床に落ちている。
それ以外にも、ガラスは割れ。そこかしこに何かの侵入を防いでいたと思われる即興のバリケードが存在していた。
視界の戻った私を迎えたのはそんな光景で。
近くにはもう1人、プレイヤーらしき囚人服を纏った人がいた。
「おや、君は……」
「どうも。話しかけようかと思ったんですが、知り合いの方と話していたようでしたので」
「すまないね。……っと、君の事は何て呼べばいいんだい?」
会話はしたことはないものの、彼の姿を見たことはあった。
一度酔鴉と共に中央区画へとやってきたプレイヤーの1人だったからだ。
その時主に話していたのはハロウと酔鴉であって、私達付き添いは特に何をしていたわけでもなく。
こうして顔を合わせるのは2回目なれど、名前は知らなかった。
「私は……そうですね、アルファ1とでもお呼びください」
「名前と言うよりコードネームっぽいねぇそれ。理由でもあるのかな?」
「一応我々の間での呼び名ではあるのですよ。酔鴉様の親衛隊のようなことをしているので、コードネームで呼び合った方が都合の良い時もありまして」
「なーるほどねぇ……まぁいいや。私はCNVLだよ、知ってそうだけど」
そう言って、私とアルファ1は握手を交わした。
そして私と彼は己の得物を取り出しながら距離をとった。
私は【菜切・偽】と【解体丸】を右手と左手に。
彼が取り出したのは、カットラス。海賊などがよく使う刃が湾曲した剣だ。
中々に切れ味が良さそうなその剣を見つつ。
いつの間にか残り10秒を切っていたカウントダウンが0になるのを待って。
カウントダウンが終わった瞬間に、またお互いに距離を詰めた。
第三試合の開始だ。
アルファ1の振るうカットラスに合わせ、ぶつけるように出刃を置く。
甲高い音と共に、重い衝撃が右腕に伝う。
出刃を落としそうになるのを我慢しながら、私は左手の【解体丸】を使って彼の身体を突き刺そうとするが、身体を捻り避けられる。
そのままの動きで足払いを掛けられそうになったために、その場でジャンプして何とか避ける。
今の所スキル無しの、完全なプレイヤースキルだけでの戦い。
私も彼も何も使わず、己の技術だけで戦っている。
この段階では、ほぼ互角。
お互い同じことを考えたのか、再度距離をとり。
「【アントロポファジー】、【暴食本能】!」
「【黒髭の流儀】!」
私は腐った肉片を喰らいながら。
彼は自らの首に傷を付けながら。
自己強化スキルを発動させた。
「成程、君もランクアップしてるんだねぇ!」
「当然ッ!」
先程の倍以上の速度で距離を詰める私に対し。彼はその場から動かない。
といっても、試合を諦めたわけではなく。
アルファ1は新たにピストルを取り出し、私に向かって発砲した。
弾は見えず、しかし何か頭の奥の方がチリチリと焼けるような感覚した瞬間に、咄嗟に横へと跳べば。先程まで居た位置に弾痕が新しく生成された。
……あっぶなぁ!
本能とでもいうべきだろうか。
今まで最前線で戦ってきた経験からか、ある程度の速度の攻撃ならばなんとか対応できる程度には勘が冴えてきている。
といっても、スキルによる身体補助がなければ出来ない芸当ではあるのだが。
真っ当に強い相手との戦いが続いていく。
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