Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第二章 【食人鬼】は被食者の夢を見るか?

Episode 18

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--浮遊監獄都市 カテナ 中央区画 メディウス 第一階層
■【食人鬼A】CNVL

ボンッという気の抜けた爆発音と共に、空中に煙が集まっていき人型を形成し始める。
それは暫くすると、何故か継ぎ接ぎだらけのぬいぐるみのマスコットのような何かへと変化した。
但し、そのモチーフは緑色をした小さな小鬼のような……所謂、ファンタジーに出てきそうなゴブリンみたいな姿をしていた。
それの頭上にはGMというネームタグが表示されているため、彼?彼女?もまた運営側の存在なのだろう。

『あー……ふむ。プレイヤーの諸君、ご機嫌よう。私はこのゲームの管理AIであるグリンゴッツという。今回はイベントの進行役として任命された。不手際もあるとは思うがよろしく頼む。では今回のイベントの説明に入ろう――』
「……は?グリンゴッツ?えっ?」

ペコリと頭を下げる姿は少しだけ愛らしい。
そうしてマスコット……グリンゴッツはイベントの説明を開始したが、少しだけ気になることもある。

「どしたのハロウ。驚いた声出して」
「あー、いや。うん。……少しだけ、こう知り合いに似てて」
「……あれが?」
「まぁ、そうね。アレが。そういうキャラクターも作れるようなVRMMOだったから」
「……成程?」

ハロウは少しだけ悩むような素振りを見せた後、頬を叩いた。
小さく聞こえてくる声は「まぁ、他人の空似でしょう」というある意味で問題の先送りのようなものだったが。
気を取り直し、今なお宙に浮かびイベントの説明をしているグリンゴッツへと意識を傾けた。

『――というわけで、決闘イベントの参加自体は任意とさせてもらおう。フィールドへ行き限定モブを狩りたい場合には、この中央区画からイベントフィールドへと移動することがいつでも可能だ。期間中、狩りたくなったら狩る、休みたくなったら休む。運営としても無理にプレイさせ続けるのは流石に本望ではないからな』
「あ、今回は任意なんだねぇ」
「今回は割と長めのイベントみたいですからね。大体2週間ほど続くそうですよ。決闘の方は今日だけみたいですけど」
『決闘イベントはあくまでサブってことかな('ω')』
「多分そうだねぇ。プレイヤーの全員が全員PvPが大好きってわけじゃあないだろうし、まぁ良いんじゃないかい?」

--System Message 『決闘イベントに参加しますか? Y/N』

目の前にウィンドウと共にシステムメッセージが出現した。
ウィンドウには色々な注意事項……主に、誹謗中傷の類を受ける可能性云々について書かれているようだった。
肝心の決闘イベントの説明はと言えば、1対1のタイマン勝負。
トーナメント形式で、何グループかに分かれてそれぞれの勝者を決めた後に、最終的な勝者を決める試合をするらしい。
アイテムの持ち込みについては制限せず、それを使っての戦術を立ててもいいという……所謂何でもありというルールらしい。

……成程?誹謗中傷に関しては、何でもありだからってことかな。外道みたいなことをして非難されてもこっちは先に注意してますからねーってこと?
と言っても、私の出来ることの中にそういった類のものができるスキルやアイテムは特になく。
特に問題もなさそうだったため、YESを選択した。

「うちのパーティは事前の話し合いの通り私とハロウが決闘参加かな?」
『そうだねぇ(゜д゜)決闘の中継もあるみたいだから応援するね!('ω')ノ』
「うん、よろしくね。頑張るわ」

早々にYESを選択したのか、ホクホク顔のハロウはメアリーの頭を撫でつつも自らのナイフを取り出したり収納したりを繰り返していた。
今すぐにでも戦いたいのだろう。
それを分かってか否か、グリンゴッツが再び話し始める。

『よし、現在ログイン中のプレイヤー全員の参加非参加の申請を受理した。では、参加者諸君はこれより決闘専用フィールドへと転移させるため、各自その場で準備を出来るものはするように。では、舞台で会おう』

ポンッという音と共にグリンゴッツが消えたかと思えば、周囲の視界も歪んでいく。
転移とやらが始まったのだろう。
ぐにゃりと歪んでいく視界は次第に暗くなっていき、最終的にブラックアウトした。



--イベントフィールド 【決闘者の廃都】

視界の隅にそんな文字が出現したかと思いきや、真っ暗だった視界が色を取り戻し始める。
崩れた都市、といえばいいだろうか。
私が普段活動しているデンスのように中世モチーフの建物ではなく、どちらかと言えば現代に近い……ディエスのような街並みをしているそこは、文明を感じさせないほどに崩壊していた。

半分ほどから折れているビル。
タイヤやガラスが無くなっている車。
ほぼ廃墟と化しているコンビニやファーストフード店のようなもの。
廃都という名の通り、終わった都市がそこにはあった。

周囲には私と同じように転移されたと思われるプレイヤーが複数いるのが確認できて。
今からすぐに決闘が開始されるわけではないと察することができた。

「えーっと……ハロウは居ない、か。別のグループにでもなったのかな」

周囲を見渡し、ハロウの影を探してみるも何処にもいない。
一瞬、暴走し一人で突っ走って行ってしまったのではないかと思ったが、流石に彼女はそこまで頭がアレではないだろうとすぐにその考えを否定した。

このままここに居ても仕方ないと思い、何処か散策へ行こうかと思った矢先。
再びポンッという音と共に空中にグリンゴッツが出現した。

『すまない、待たせたな。これより順次トーナメント形式で試合を行っていく。現在近くにいるのが君達が戦う相手だ。今のうちに顔くらいは確認しておくといいかもな……では、試合を開始していこう。転移後30秒のインターバル後に戦闘開始だ』

そう言った後、彼?は何かを操作するような仕草をした。
瞬間、何人かが再度転移されたのかスゥ……っと消えていき、残った私達の前には巨大なウィンドウが出現した。
……大体半分くらいが消えたかな?次辺りに私の試合かなぁ。

『待っている間暇だろうと、運営が用意した試合観戦用のウィンドウだ。何試合か一度に映すため音声はついていないがそこは許してくれ。では、自分の試合の番が来るまで少しだけ待機ということで頼む』

彼はそう言って再度チープな破裂音と共に消えていった。
残されたプレイヤー達の間には、お互いを牽制するかのようなピリピリとした空気が漂っていたが、私には特に関係なく。
座り心地の良さそうな瓦礫に腰を掛け、観戦用ウィンドウへと目を向けた。

……こういうのも面白いよねぇ。誰がどんな戦い方するのか見物だし。
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