Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第二章 【食人鬼】は被食者の夢を見るか?

Episode 4

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--第二区画ダンジョン 【劇場作家の洋館】 Hard 2F
■【食人鬼A】CNVL

斬って、切って、そしてかち割っていく。
ナイトゾンビの持つ剣を召喚しながら、周りに存在するナイトゾンビやアクターゾンビを相手にしていく。
血が、光が、そして肉が舞う。
舞ったモノからゾンビが生まれ、それがまた光を産む。

「あはっ、キリがないねぇこれ!」
「流石にゾンビスポーナー3体同時は厳しいわね……マギ!まだどこにあるかわからない?!」
「すいません!場所変えてもらっててなんですけど分かりにくくて!!」
『あ、ナイトゾンビ追加かも!(゜д゜)!』

休憩後、階段を目指して探索していた私達を待っていたのは所謂モンスターハウスというものらしく。
簡単に言えば、部屋の中に大量の敵モブが存在した時の事をいうとのこと。
確かに開いた瞬間に、ナイトゾンビ2体にゾンビスポーナー3体に加え、スポーナーから産み落とされたであろうアクターゾンビが数体存在していたため、この部屋はモンスターハウスだったのだろう。

ナイトゾンビに気を付けていれば、そこまで強い敵モブもいないため戦闘自体は楽に進む、のだが。
問題は別にある。

「ゾンビスポーナー、めんどくさいわね……」
「あは、個人的には素材が集まって助かるんだけど……この数は気が滅入るねぇ……」
「どうします?適当な所で振り切るってのも手だとは思いますよ?トレインとかもこのダンジョンなら大丈夫でしょうし」
『でもこれ逃げたら逃げたで階段から遠ざかるかもしれないよね……(´・ω・)』

そう、私個人だけで見ればこの戦闘自体はボーナスみたいなもので、強力なゾンビスポーナーの素材が手に入るため続けられるなら続けたいものではあるのだが。
それ以外の点を考えると、この場で戦闘を続けるのは得策ではないのだ。

ここで戦闘が長引けば、その後にも響いてくる。
例えば、現実の時間。ここが現実なわけもなく、仮想現実でのゲームだからこその問題だ。
そこがクリアしていたとしても、マギの薬を作り出すためのリソースが持つかどうかにもよる。
彼の薬がなければこのパーティではバフを他人に付与できる者がいなくなってしまうため、そこが私達の限界なのだ。

「……よし、ここだけどうにかしましょうか。でもマギは休みながら、バフ無しで」
「いいんですか?」
「いいわ、私達が疲れるよりも貴方のリソースがなくなる事の方が後が厳しいもの」

ハロウがそう言って、ハサミを改めて構え直した。
一瞬だけこちらへ視線を向けた後、近くに来ていたナイトゾンビへと向き直ったために、正確な意図は図りかねるが……それでも分かる事はあった。

私はインベントリ内からゾンビスポーナーの肉塊を取り出し。
出刃包丁を片手に構える。
……全力で、出し惜しみなしに。私の出来る限りを今ここで出し切って。
そう考えて、私もハロウの後ろに続くようにして敵の中へと突っ込んでいく。

一瞬だけメアリーとマギの護衛について頭に過ったものの、彼らも戦えないわけではないのだ。
自衛程度なら出来るだろうし、そもそも私とハロウがこの場で一番近接が強いであろうナイトゾンビを引き受ければ後はアクターゾンビとスポーナーだ。対処できないモブではない。

「【祖の身を我に】、【アントロポファジー】」

肉塊を食べながらスキルを発動する。
瞬間、私の身体から落ちた赤黒い何かが小さな人型2体へと変化していく。上手くゾンビスポーナーの能力を引けたようだ。
彼らは近くに居たアクターゾンビへと襲い掛かる。
それと同時、身体の芯から熱が溢れるような感覚と共に青色のオーラが身体から溢れ出る。

【アントロポファジー】。
自身が食人行為……今回でいうならばスポーナーの肉塊を食べた事がトリガーとなって発動する自己バフ系のスキル、らしい。
効果としては、食べた量に比例した持続時間での身体強化。
攻撃、素早さ、防御力など。そういった身体に関係するステータスが強化されるスキルだ。
いつも何かを口に含みながら戦っているのにはこれを維持するという目的もあったりする。……まぁ、半分趣味ではあるのだが。

「あはっ行こうか!!」

そうして長いようで短い戦闘が再度始まった。
ナイトゾンビからの斬撃を避けつつ、その振り切った腕を出刃包丁で一度切りつけ。
思いっきり体重を乗せながら胴体を蹴りつける。
他のゾンビとは違い、甲冑の重みもあるからなのか派手に吹っ飛んでいくことはないものの、その衝撃に耐えられなかったのかナイトゾンビはそのままバランスを崩して倒れていく。

そんな絶好の隙を見逃すわけもなく。
インベントリからナイトゾンビの腕を取り出し、スキルのコストとして使用する。
突如左腕が甲冑に包まれ、ソルジャーの使うものよりも上等な白銀の剣が出現しそれを手に取って。上から切りつける。

やはりなのか。私の使っている出刃包丁よりもナイトゾンビの使う剣の方が切れ味が良いようで。甲冑にするりと刃が入っていく。
そしてそのままに、腕を切り落とそうとしたところでナイトゾンビが刃を直接つかみ、勢いを止めた。
瞬間、そのまま光となって剣が消える。

どうやらこちらの戦闘は早めに終わるかもしれない。
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