Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

文字の大きさ
上 下
32 / 192
第二章 【食人鬼】は被食者の夢を見るか?

Episode 4

しおりを挟む

--第二区画ダンジョン 【劇場作家の洋館】 Hard 2F
■【食人鬼A】CNVL

斬って、切って、そしてかち割っていく。
ナイトゾンビの持つ剣を召喚しながら、周りに存在するナイトゾンビやアクターゾンビを相手にしていく。
血が、光が、そして肉が舞う。
舞ったモノからゾンビが生まれ、それがまた光を産む。

「あはっ、キリがないねぇこれ!」
「流石にゾンビスポーナー3体同時は厳しいわね……マギ!まだどこにあるかわからない?!」
「すいません!場所変えてもらっててなんですけど分かりにくくて!!」
『あ、ナイトゾンビ追加かも!(゜д゜)!』

休憩後、階段を目指して探索していた私達を待っていたのは所謂モンスターハウスというものらしく。
簡単に言えば、部屋の中に大量の敵モブが存在した時の事をいうとのこと。
確かに開いた瞬間に、ナイトゾンビ2体にゾンビスポーナー3体に加え、スポーナーから産み落とされたであろうアクターゾンビが数体存在していたため、この部屋はモンスターハウスだったのだろう。

ナイトゾンビに気を付けていれば、そこまで強い敵モブもいないため戦闘自体は楽に進む、のだが。
問題は別にある。

「ゾンビスポーナー、めんどくさいわね……」
「あは、個人的には素材が集まって助かるんだけど……この数は気が滅入るねぇ……」
「どうします?適当な所で振り切るってのも手だとは思いますよ?トレインとかもこのダンジョンなら大丈夫でしょうし」
『でもこれ逃げたら逃げたで階段から遠ざかるかもしれないよね……(´・ω・)』

そう、私個人だけで見ればこの戦闘自体はボーナスみたいなもので、強力なゾンビスポーナーの素材が手に入るため続けられるなら続けたいものではあるのだが。
それ以外の点を考えると、この場で戦闘を続けるのは得策ではないのだ。

ここで戦闘が長引けば、その後にも響いてくる。
例えば、現実の時間。ここが現実なわけもなく、仮想現実でのゲームだからこその問題だ。
そこがクリアしていたとしても、マギの薬を作り出すためのリソースが持つかどうかにもよる。
彼の薬がなければこのパーティではバフを他人に付与できる者がいなくなってしまうため、そこが私達の限界なのだ。

「……よし、ここだけどうにかしましょうか。でもマギは休みながら、バフ無しで」
「いいんですか?」
「いいわ、私達が疲れるよりも貴方のリソースがなくなる事の方が後が厳しいもの」

ハロウがそう言って、ハサミを改めて構え直した。
一瞬だけこちらへ視線を向けた後、近くに来ていたナイトゾンビへと向き直ったために、正確な意図は図りかねるが……それでも分かる事はあった。

私はインベントリ内からゾンビスポーナーの肉塊を取り出し。
出刃包丁を片手に構える。
……全力で、出し惜しみなしに。私の出来る限りを今ここで出し切って。
そう考えて、私もハロウの後ろに続くようにして敵の中へと突っ込んでいく。

一瞬だけメアリーとマギの護衛について頭に過ったものの、彼らも戦えないわけではないのだ。
自衛程度なら出来るだろうし、そもそも私とハロウがこの場で一番近接が強いであろうナイトゾンビを引き受ければ後はアクターゾンビとスポーナーだ。対処できないモブではない。

「【祖の身を我に】、【アントロポファジー】」

肉塊を食べながらスキルを発動する。
瞬間、私の身体から落ちた赤黒い何かが小さな人型2体へと変化していく。上手くゾンビスポーナーの能力を引けたようだ。
彼らは近くに居たアクターゾンビへと襲い掛かる。
それと同時、身体の芯から熱が溢れるような感覚と共に青色のオーラが身体から溢れ出る。

【アントロポファジー】。
自身が食人行為……今回でいうならばスポーナーの肉塊を食べた事がトリガーとなって発動する自己バフ系のスキル、らしい。
効果としては、食べた量に比例した持続時間での身体強化。
攻撃、素早さ、防御力など。そういった身体に関係するステータスが強化されるスキルだ。
いつも何かを口に含みながら戦っているのにはこれを維持するという目的もあったりする。……まぁ、半分趣味ではあるのだが。

「あはっ行こうか!!」

そうして長いようで短い戦闘が再度始まった。
ナイトゾンビからの斬撃を避けつつ、その振り切った腕を出刃包丁で一度切りつけ。
思いっきり体重を乗せながら胴体を蹴りつける。
他のゾンビとは違い、甲冑の重みもあるからなのか派手に吹っ飛んでいくことはないものの、その衝撃に耐えられなかったのかナイトゾンビはそのままバランスを崩して倒れていく。

そんな絶好の隙を見逃すわけもなく。
インベントリからナイトゾンビの腕を取り出し、スキルのコストとして使用する。
突如左腕が甲冑に包まれ、ソルジャーの使うものよりも上等な白銀の剣が出現しそれを手に取って。上から切りつける。

やはりなのか。私の使っている出刃包丁よりもナイトゾンビの使う剣の方が切れ味が良いようで。甲冑にするりと刃が入っていく。
そしてそのままに、腕を切り落とそうとしたところでナイトゾンビが刃を直接つかみ、勢いを止めた。
瞬間、そのまま光となって剣が消える。

どうやらこちらの戦闘は早めに終わるかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セルリアン

吉谷新次
SF
 銀河連邦軍の上官と拗れたことをキッカケに銀河連邦から離れて、 賞金稼ぎをすることとなったセルリアン・リップルは、 希少な資源を手に入れることに成功する。  しかし、突如として現れたカッツィ団という 魔界から独立を試みる団体によって襲撃を受け、資源の強奪をされたうえ、 賞金稼ぎの相棒を暗殺されてしまう。  人界の銀河連邦と魔界が一触即発となっている時代。 各星団から独立を試みる団体が増える傾向にあり、 無所属の団体や個人が無法地帯で衝突する事件も多発し始めていた。  リップルは強靭な身体と念力を持ち合わせていたため、 生きたままカッツィ団のゴミと一緒に魔界の惑星に捨てられてしまう。 その惑星で出会ったランスという見習い魔術師の少女に助けられ、 次第に会話が弾み、意気投合する。  だが、またしても、 カッツィ団の襲撃とランスの誘拐を目の当たりにしてしまう。  リップルにとってカッツィ団に対する敵対心が強まり、 賞金稼ぎとしてではなく、一個人として、 カッツィ団の頭首ジャンに会いに行くことを決意する。  カッツィ団のいる惑星に侵入するためには、 ブーチという女性操縦士がいる輸送船が必要となり、 彼女を説得することから始まる。  また、その輸送船は、 魔術師から見つからないように隠す迷彩妖術が必要となるため、 妖精の住む惑星で同行ができる妖精を募集する。  加えて、魔界が人界科学の真似事をしている、ということで、 警備システムを弱体化できるハッキング技術の習得者を探すことになる。  リップルは強引な手段を使ってでも、 ランスの救出とカッツィ団の頭首に会うことを目的に行動を起こす。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

Reboot ~AIに管理を任せたVRMMOが反旗を翻したので運営と力を合わせて攻略します~

霧氷こあ
SF
 フルダイブMMORPGのクローズドβテストに参加した三人が、システム統括のAI『アイリス』によって閉じ込められた。  それを助けるためログインしたクロノスだったが、アイリスの妨害によりレベル1に……!?  見兼ねたシステム設計者で運営である『イヴ』がハイエルフの姿を借りて仮想空間に入り込む。だがそこはすでに、AIが統治する恐ろしくも残酷な世界だった。 「ここは現実であって、現実ではないの」  自我を持ち始めた混沌とした世界、乖離していく紅の世界。相反する二つを結ぶ少年と少女を描いたSFファンタジー。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

処理中です...