Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第一章 ハジメマシテ、【犯罪者】

Episode 22

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--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画 デンス
■【リッパーA】ハロウ

「【シャープエッジ】、【霧の外套】、【ディア・ボス】」
「あはっ!二人とも支援は任せたよ!【アントロポファジー】!」

私とCNVLはそれぞれ武器を取り出し。
スキルを使った後にそのままこちらへと近づいてきていたソルジャーたちの迎撃へと走り出した。
CNVLが使ったのは【食人鬼】の新スキルだろう。昨日時点では使っていた記憶はないため、夜に狩りを行っていた時に習得したんだと思う。

【HL・スニッパー】を使い。
挟むのではなく、横から叩きつけるように振り回す。
当然コマンダーの支援を受けているソルジャー達はスッと身をずらし、私の攻撃は空振ることにはなるがそれでいい。
身をずらすことで生じた隙を見逃さず。CNVLが手に持つ出刃包丁で一撃、マギとメアリーの後方支援組がそれぞれ一撃ずつ加え、目の前にいた3体のソルジャーゾンビは倒れていく。

「赤いヤツを倒すか、ソルジャーたちから引き離して!アレがいる限りソルジャーの行動パターンがいつもより厄介になるから!」

周りで戦っている他のプレイヤーに聞こえるように。
うちのパーティメンバーには既に伝えてあるものであるため、大きな声で。
周囲のプレイヤー達の視線がコマンダーへと向くのを横目で見つつ。

私は再度ハサミを使いソルジャー へと攻撃を仕掛け始める。
一度見られているからかそのまま避けず、盾で受け止めるようにして防がれる。
【霧の外套】によって強化されているためか、辺り一帯に響くほど重い音が鳴る。

しかし、これで終わりではない。
盾で防いだソルジャーの頭にクロスボウの矢が刺さり光となって消えていく。メアリーの支援射撃だろう。
それと共に隙の出来た私へと襲いかかってきていた他のソルジャー達は、CNVLが手に持つ出刃包丁で背後から攻撃し、わたしに辿り着く前に倒れていった。

……パーティプレイ万歳!
ソロとパーティではここまで違うのか。
苦戦した覚えしかないコマンダー、ソルジャー との戦闘がある程度楽に行えている。

一番得物が大きい私を中心に、コマンダーへ向かう道中にいるソルジャーとの戦闘が組み立てられていく。
【HL・スニッパー】を振り、そのまま当たればそれでよし。
避けられればその瞬間、別の方向から攻撃が飛んできて倒され。
盾で防がれても、怯んでいる間に他の3人からの攻撃が殺到する。

「くそっ、逃げられた!」
「こっちもだ!近づいたら逃げ出したぞあの赤いの!」
「追え!それか他の区画まで追い込め!オリエンスにだけは行かないようにしろよ!同盟の効果で他の奴らが被害被るからな!!」

どうやら、私の言葉によって列の後方へと向かっていたプレイヤー達は、逃げだしたコマンダーを追ってぞろぞろと移動を開始したようだった。
それに釣られるように、というよりは逃げるコマンダーのためにプレイヤー達を足止めするように。
ソルジャー達が彼らの前へと立ちはだかっていく。

コマンダーの支援範囲から外れるまでは基本的にあんな風に立ちはだかるようにして殿を務めようとするのがソルジャーだ。
厄介なのは、支援によって向上した性能スペックとコマンダーの叫び声によって集められる新たなソルジャー達だろう。
しかも今現在は、この区画ほぼ全体にゾンビが湧いているような状態だ。
すぐに近くにいるソルジャー達がやってきて、そのまま戦闘に参加する。時間経過と共にどんどん数が増えていく。

無限に戦闘が続くかと錯覚する程度にはこちらの集中力も削ってくる。
いくらパターンに入れば倒せるとはいえ、この状況がいつまでも続くのは勘弁願いたいものだ。

「キリがないわね……メアリー、禍羅魔か酔鴉辺りはこっち来れない?」
『無理そう!同盟見る限りだと、あっちのレッドキャップのせいで似たようなことになってるって!(;´Д`)』
「流石にこれは辛いなぁ。下手に攻めすぎるとこっちもデスペナ食らってポイント減るねぇ。どうする?」

……同盟からの援軍は見込めない、と。流石にこっちも迎えられるほどの余裕はないから仕方ないか。
一時的に逃げる、もしくはコマンダーとソルジャーを産んでいるであろう【ゾンビスポーナー】を倒して、一時的に数を減らすなど考えられることはたくさんあるが……この場合はどうするべきか。
発言のなかったマギの方を見てみれば、彼も同じような事を考えていたのか頭を横に振る。
策無し、ということだろう。

「んんー……そうね。みんな今レベルは?私は8」
「レベルかい?……そうだね、今は6だ」
『私も8!そろそろ9になるよ(*‘∀‘)』
「僕は9ですね。昨日の夜上がってます……というかもしかしてレベリングですか?」
「もしかしなくてもレベリングよ。どうせいつか死ぬなら限界まで戦っちゃったほうがいいでしょう?それとも疲れたかしら?」

近くのソルジャーからの攻撃をハサミを盾のように構えることで防ぎつつ問いかければ、近くで光が舞った。
横目でそちらの方をみれば、いつも通りに何かを食べている彼女の姿があり、

「んぐっ……ふぅ。あはっ、いいじゃないかレベリング!こっちになってから割と経験値溜まっても上がらないから持ってこいだぜ」
「CNVL、今食べてたのって?」
「あぁ、こいつらの喉かな。狙えそうだったから狙ってみたけど、アクターゾンビよりは美味いね」

血が口の端についたまま、こちらへと笑いかけてくる姿があった。
一種のホラーにしか見えないが、まぁいいだろう。

『私もいけるよ!矢の本数も【人骨】加工すればなんとかなるからね(^^)/』
「それを言ったら僕もいけますよ。ただ、途中から薬が尽きてただ乳棒で殴るやばい奴にはなりそうですけど」
「了解了解。じゃあやりましょうか……目標はここら辺のソルジャーの掃除ってことでいいわね?」
「「『応!』」」

出来る時に稼げるだけ稼ぐ。
得物を振れば誰かが勝手に連携し。
目の前の敵は倒れ、私はすぐに次の相手へと移動を開始する。
祭りイベントはやっと中盤。むしろここからが本番だった。



「あは、意外と生き残れるもんなんだねぇ」
「そうね……っと、10レべ達成」
「僕もいつの間にか10レべですよ。乳棒で剣持った相手と戦うなんて考えてなかったんだけどなぁ……」
『それは仕方ないね(´・ω・)あとで何か接近戦用の武器作ろうか?』
「お願いします。流石にいつまでも乳棒じゃ戦えないでしょうし」

暫くして。
結論から言えば、私達は周辺にいるソルジャー達を倒し切った。
といっても、途中からコマンダーの支援が消えたため1人1体ずつ相手にしていたのもあるのだが。
現在はいつコマンダーやソルジャーが出てきてもいいように、周囲を警戒しつつ道端で話しながら休憩中だ。

「新規スキルも覚えたし……それに出たわねぇ」
「お?ランクアップかい?」
「えぇ。多分10で通常ランクアップ先が出現するんじゃないかしら。2人も出てるでしょ?」

そう話を振れば、メアリーとマギは首を縦に振った。
CNVLやスキニットのような特殊ランクアップではないものの、ランクアップするだけでもかなりスキルや性能が変わるのはCNVLによって実証済みだ。
今一度、送られてきたメッセージを確認する。

--System Message『ランクアップ条件を達成しました』
--System Message『【切裂魔ティアーアッパー】になることが可能です』
--System Message『特殊ランクアップ条件を達成しました』
--System Message『【偽善者ヒーロー】になることが可能です』

おかしいのが混じっているが、きちんとランクアップ先が出現しているのが分かるメッセージだ。

『出てるよー!こっちは【加工師クラフター】っていうのがある!('ω')ノ』
「僕の方は【薬剤師ケミスト】ですね。ランクアップ先の上位職は基本的に漢字で統一されてるんですかね……?」
「どうだろうねぇ。ただスキルとか見る限り、名前を決めてるスタッフさんが最低でも2人は居そうなんだよ。ここらへんはその片方の人が決めたんじゃない?」
「あぁ、成程。確かにそうですね」
「【リッパー】の【シャープエッジ】と【切裂衝動】とかの話ね。確かにそうかも」

話をしながらも、特殊ランクアップ先の条件と説明を確認してみる。

―――――――――――
■ランクアップ条件
・レベルが10以上
・多くのプレイヤーが関係する出来事の当事者となる(2/2)
・自身の支持者を一定数獲得する(1/1)
・自身の批判者を一定数獲得する(1/1)
―――――――――――

―――――――――――
■【偽善者】
汎用特殊【犯罪者】。
主に偽装を得意とし、系統によってその特徴をより特化させている。

『君は君自身の主張を隠し、されど罪人としてこの場にて罪をそそぐ。これが偽善でなければ何という?』
―――――――――――

何とも言い難い【犯罪者】だろう。
まさかゲーム側から煽れるとは思っていなかったが。

「ん、どうしたんだい?」
「あ、あぁ。いえ。何故か私のランクアップ先に特殊条件達成系のが含まれてて」
「おぉ!じゃあ私と似たようなものになるのかい?いやぁ仲間が出来て嬉しいぜ」
「いや、流石に【食人鬼】と同じにはなりたくないのだけど。そもそも違うし」

私は3人に出現している【偽善者】の情報を分かっている範囲で話し、どうするべきかを聞いてみた。
汎用特殊、ということは恐らくはどの【犯罪者】からでもなれるのだろう。
つまりは別に今すぐ【偽善者】にならずとも、【切裂魔】を経由してからでも遅くはないのだ。

「私はなっていいと思うけどねぇ。なんたって、ハロウが偽善者とか色々面白いじゃあないか」
「僕もなっていいと思いますよ。ゲーム的に通常より特殊の方がピーキーな性能をしていることは多いですけど、その分強力だったりしますし。先輩の【食人鬼】なんかはその部類ですしね」
『私もいいと思うよ(*‘∀‘)最近鋏も使ってるし【切裂魔】って感じでもないしね('ω')』
「確かにそうだけども。……まぁいいか。2人もランクアップする?レベル1にはなるけど」

頷かれたため、そのまま近くの端末へと移動し【偽善者】へとランクアップする。

--System Message『Crime rankup!【偽善者】』
--System Message『ランクアップに伴い、【リッパー】にて取得したスキルの変更を行います』
-【切裂衝動】から【偽善ヒロイック活動シンドローム】に変更-
-【シャープエッジ】から【メイクビリーブ】に変更-
-【霧の外套】から【真実の歪曲】に変更-
-【ディア・ボス】から【虚言癖】に変更-
-ランクアップに伴い、レベル10から1に変更-
-処理が完了しました-

今まで持っていたスキルが全て【偽善者】由来のモノに置き換わり、レベルも1へと変わる。
それに伴い、持っていた【HL・ナイフ】と【HL・スニッパー】が使えなくなったがそこまで変化はない。すぐに上げなおすことくらいは現状ならばできそうだ。
2人の方を見れば既に終わっているようで、私と同じように装備ができなくなったものを変えているようだ。

「終わったわね。5くらいまでは頑張って上げちゃいましょう」
「じゃあ私が基本的に前に出て削る役をやったほうがいいね?頑張るぜ」
「色々出来そうだから、あんまり負担はかけないと思うけどよろしくCNVL」

そんな話をしながら。私達は再び区画探索へと戻る。
時刻は昼前の11時。もう少しで日が上がりきる時間帯だった。


ーーーーーーーーーー
PLName:ハロウ Level:1
【犯罪者】:【偽善者A】
所属区画:第二区画 デンス

・所持スキル
【偽善活動】、【メイクビリーブ】、【真実の歪曲】、【虚言癖】

・装備品
使用済みナイフ、平凡な囚人服【上】、平凡な囚人服【下】、【人革の手帳】、【人革の腕輪】、【革造りの網】

・称号
【第二区画所属】、【娯楽を解放した者】
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