Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第一章 ハジメマシテ、【犯罪者】

Episode 21

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--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画 デンス
■【リッパーA】ハロウ

同盟を組んでから数時間。
適当にゾンビやら、同盟反対派のプレイヤーたちの襲撃をなんとかしつつ。
今後の予定をいつものメンバーで立てていた。

「そっちムービーゾンビ来てる!マギ、カバー!」
「了解です!」
「あはっ!流石に1戦1戦のスパンが短くなってきたねぇ!」
『素材や経験値は入るけど、これはこれでつらい!(;´Д`)』

否、立てられていなかった。
現在時刻はゲーム内時刻で夜の20時。あと4時間でゲーム内の日付が変わるのだが。
1時間ほど前から出現し始めたムービーゾンビによって、さながらゾンビ映画のように……名前のままに生存者プレイヤー達の休息時間が正直区画内でとれるような状況ではなかった。

オリエンスの方はどうなのかと、適当に同盟掲示板のほうを覗いてみれば……こちらも似たようなもので。
オリエンスに存在するダンジョン【喪揺る地下都市】。そこに出現するモンスターたちは所謂妖精系……らしい。

フェアリーやケットシーと呼ばれる代表的な妖精種はもちろんの事。こちらの【劇場作家の洋館】でいうムービーゾンビにあたるレッドキャップという敵モブが出現するとのこと。
時間帯的に、そのレッドキャップが大量にダンジョンから溢れ出しているため……もしかしたらデンスよりも地獄絵図となっている可能性もある。

「これだめね。一旦誰かのセーフティエリアに行きましょう」
「そうですね……休憩の意味合いも兼ねてそうしましょうか」

マギとタイミングを合わせ、全員がバフをかけなおしたタイミングで端末へと走り出す。
時間も時間だからか、端末の近くには多くのプレイヤーがいるため、トレイン行為に見られてしまうかもしれないが……その端末周辺のプレイヤーにもムービーゾンビが群がっているためあんまり咎められないだろう。
マナーが悪いのは否定しないが。


そして端末へと辿り着き、そのまま私のセーフティエリアに全員で移動した。
他の3人のセーフティエリアは聞くところによると、かなりごちゃごちゃしているようで。特にマギなんかは薬品なんかがそこら中に置いてあるため、セーフティといえど危ないとのこと。

「どうする?このまま一旦朝まで休む?」
「んんー、それでもいいんだけどねぇ。私はもうちょっと狩りに行ってこよう、誰か一緒に来るかい?」
「あぁ、じゃあ僕が手伝いますよ。でも長くても22時までで」
「了解。メアリーちゃんはどうする?」
『移動するのもアレだし、このままここで寝るよ('◇')』
「分かったー。じゃあ行ってきまー」

ということで、此処からは自由行動となった。
私自身も掲示板やらで集めたい情報もあったため、丁度いいだろう。

「あ、私今からちょっとフレンドコールかけるから気にしないで」
『了解('ω')ノ』

一度メアリーに断った後、掲示板をさらっと確認した後にスキニットへと通話をかける。
流石に彼もこの時間には寝ていないだろう。
向こうも向こうで暇だったのか、ワンコール目で通話が繋がった。

『ん、リーダーか』
「リーダーじゃないわ。ハロウよ。今少しいいかしら?」
『大丈夫だが……何の用だ?これからの行動指針とかの連絡なら掲示板でもいいだろう』
「あー、いや。そういうのじゃなくて。貴方同盟の誓約書が受理された時に何か驚いた顔してたじゃない?何か問題でもあったのかと思って」

単純にあの時気になったことを聞きたかったのだ。
恐らくは他のプレイヤーたちに見えないメッセージか何かで通知が来たと思うのだが……無理に聞き出そうとも思ってないため、断られたら潔く諦める次第だ。

『……成程。まぁ一応は掲示板にでも載せようかと思ってたんだが……リーダーならいいか』
「ハロウよ」
『あの時、システムメッセージが来てな』
「無視なのね。……えぇ、それで?」
『条件を達成したらしくてな。【立会人】とかいう上位職にランクアップできるようになった』
「【立会人】……条件はあの時立ち会った事かしら」
『察しがいいな、その通りだ。一応【犯罪者】の触りのような説明も載っているんだが……条件さえ満たせばどの【犯罪者】からでもランクアップできる職のようだな』

【立会人】。
周りにランクアップした人物は今の所CNVLしか確認できなかったため、どういう性能をしているのか気になることには気になるが、とりあえずそれはいい。
問題は別にある。

「それ掲示板に条件まで載せるの……?」
『……やっぱり不味いか?』
「変な誓約乱立しそうな気がするのよね。いやでも個人間ならあんまり被害はないか……?」
『一応パーティメンバーとも話し合ったんだがな。あまりサービス開始から時間が経ってないし、そもそもこの条件ならばすぐに見つかるだろうってことで載せる事になったんだが』
「あぁ、なら私から言う事はないわ。なんか邪魔しちゃったみたいで申し訳ないわね」

既に相談した上での話ならば、私から言う事は何もないだろう。
本人たちもきちんとその考えに至り、そのリスクも考えた上で公開すると言っているのなら外野の私がとやかく言うようなことではない。

『いいのか?』
「いいわよ。話し合った上での結論なんでしょう?外野がやめろって言える話ではないわ」
『ふむ……じゃあ後で掲示板に載せておくことにしよう』
「突然ごめんなさいねー。聞きたかったことはこれだけだから切るわよー」
『おう。じゃあまたな』

そのまま通話を切る。
近くにいるメアリーの方を見れば、既に寝息を立てていた。
……毛布代わりに【人革】を被ってるのはどうなんでしょうね。
そんなこんなで、情報収集もしつつ。
イベント1日目の夜は更けていった。



--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画 デンス

翌日。
セーフティエリアから出た私達を待っていたのは、ムービーゾンビではなく。
ソルジャーゾンビが整列し、行進している姿だった。

「これ、は……」
『見つけたッ!あれ!一番後ろ!』

メアリーの指差した方向。
そこにはいつぞや見た角の生えた赤いゾンビ……コマンダーゾンビが数体並んで歩いていた。
瞬間、こちらに気付いたのかコマンダー達が声にならない叫び声をあげる。
ソルジャーゾンビ達を呼び寄せる声が重なり、酷い不協和音が辺り一帯を包み込みつつ。近くで行進していたゾンビ達はそのままこちらへと迫ってきていた。

隣にいるCNVLは目を輝かせているものの。
確実に今この現状は、地獄だった。
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