Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第一章 ハジメマシテ、【犯罪者】

Episode 18

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--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画 デンス
■【リッパーA】ハロウ

大剣が唸る。
風を切り、そしてCNVL自身を切るために勢いを持って迫る。
しかしながら、その一撃は決まらない。

身体を屈め大剣の進行上から逃れた彼女は、そのままの体勢で一歩前へと踏み出し手に持った出刃包丁を突きだそうとする。
が、それは叶わない。
赤い鬣のような髪をした男は、それを予想していたのか片手を大剣から離し、適度な大きさの盾を取り出しそれを防ぎつつ。
大剣をインベントリへと仕舞い、新たに直剣を取り出して上から振り下ろした。

だがそれも当たらない。
CNVLは盾に出刃包丁が防がれた瞬間、そのまま横へと跳び。
直後、彼女が居た位置を剣が通過していく。

「……冗談はさておき、コレどこで横やり入れればいいのかしらね」
「確かに見てると思いますけど。でも行ってくださいよ、アレに入れるのこの場じゃ貴女くらいでしょう?」
「そうは言ってもねぇ……下手なタイミングで入るとCNVLの調子崩しそうなのが怖いのよね」

私とマギは目の前で繰り広げられている戦いを見ながら話していた。
現状、CNVLと男はほぼ互角。
確かに私が攻め手に加われば、ある種拮抗している現状を何とかすることは出来るだろう。

しかしながら、それをするにはきちんと入るタイミングを見極めなければならない。
下手なタイミングで加わろうとしてしまえば、それこそ私の方にCNVLが気を取られて……というのもあり得る話だ。
ある種、大繩で中々タイミングが掴めず入れないようなものだろうか。

「んー、とりあえずバフもらえるかしら」
「何か思いついたんですか?はい、これ」
「ありがとう。いやまぁ何も思いついてはないんだけど、次CNVLが一旦距離を取った瞬間に入っていくわ」
「成程。僕らはどうします?欲しい支援とかあったら機を見て入れますが」
『私も射撃自体は出来ると思うよ('◇')』

マギから強化用の錠剤を貰い、手に持つナイフの調子を確かめながら話をする。

「マギは回復。一発まともに喰らったら終わりそうだけど、それでもかすり傷かなにかで傷を負いそうだから。メアリーは射撃はしなくていいわ。代わりに掲示板でアレの情報を細かく書いておいて。今ここに来ようとしている人らに情報伝わってた方がいいでしょう」
「『了解』」
「じゃ、行くわ」

前を向けば、丁度CNVLが後ろに跳躍し距離を取った所だった。
その場から飛び出しナイフを構える。

2人とも私の存在に気付いたのか、両者とも笑みを浮かべた。
……うわ、どっちも戦闘狂タイプね。やだわぁ。
CNVLはそのまま私に合わせるように。男は少し下がりながらも、持っていた直剣を仕舞い、双剣を取り出した。

恐らくは多人数に対応できるようにするためだろうか。ゲームとかではある程度使われている双剣という武器は、実際に使おうと考えると扱いが難しいものだ。
それを選択肢として取り出せる時点で、この男の技量が高い事を察することが出来る。

私はそのままの勢いで男に迫る。
そんな私に続くようにしてCNVLも後ろから出刃包丁を構えつつ走っていく。
近づいて。そして横を通り過ぎるようにして切りつけようとして、双剣の片方によって防がれる。

その瞬間、身体を横に捻り回転するようにして2撃目を加えると同時に、CNVLの突きが男へと迫り。男は初めて顔を歪めた。
苦悶の表情ではなく、満面の笑みに。

「【信奉者のラミレス・信仰ソウル】」

私とCNVLの刃が男に当たる瞬間。彼はそう呟いた。
瞬間、男の身体が黒いオーラに包まれる。
悪魔の力を用い、ステータスを変化させるスキルに富んでいる【ラミレス】。
『~ソウル』と聞こえた事から一番初期から所有しているスキルだろう。
彼の眼は燃えるように赤く染まり、よく見れば角のようなものまで生えている。

私達の刃は。そのまま身体に当たったかと思えば、男の身体から溢れた黒いオーラによって防がれてしまっている。
それどころか、勢いすらも吸われてしまったかのようにその場に止まってしまった。
……防御系の系統の【ラミレス】!

恐らくは接近戦をするからこそ、防御系統を選んだのだろう。
問題は私は兎も角、ランクアップして性能スペックが高くなっているはずのCNVLの攻撃すらも止められている点だろう。
男は、その笑った顔のまま。双剣を構えていた。

「動きが止まってんぞ?」
「「ッ!!」」

咄嗟にその場から後ろへと跳んだものの。
私の片腕が、CNVLの肩が切られ血が舞う。
HPは今ので大体2割ほど減ってしまったようだった。

幸いナイフを持っていなかった方の腕のため、多少動き辛い程度……と思いながら切られた方の腕を見てみれば。
男を包み込んでいる黒いオーラが怪我の部分に纏わりついていた。
動かそうとして、しかし動かない。何かと思いログを見てみれば、『状態異常【呪い】が発生しました』という文章を見つけることが出来た。

何かしらのスキルを使っているのだろう。
オーラを纏っている状態で攻撃を当てれば、状態異常を発生させる類か。
面倒なことになったと舌打ちが自然と出てしまった。
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